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『六韜三略』(りくとうさんりゃく)

会社の先輩が、「心の一冊」として紹介してくださった本。
「『六韜三略』を読むと、古代中国の読み物(『三国志』とか)がすっごく面白くなります」ということで、興味をもちました。

私は下記の本を図書館で借りて読みました。


[新装版]全訳「武経七書」3六韜・三略
守屋 洋 (著), 守屋 淳 (著)(2014年9月発行)


「六韜(りくとう)」「三略(さんりゃく)」の由来

『六韜』の「韜」という字は、もともとは弓や剣を入れておく袋を指している。この場合、入れておくのは弓や剣ではなく、兵法の秘策ということになるかもしれない。そういう袋が、文韜、武韜、竜韜、虎韜、豹韜、犬韜の六巻からなっているので、『六韜』なのである。これが書名の由来であった。

一、『六韜』について―太公望ゆかりの兵法書

「虎の巻」の語源も『六韜』なんですね。


『三略』という兵法書は、上略、中略、下略の「三略」から成っており、それをそのまま書名としている。
昔から『六韜』と併称され、「六韜三略」と呼ばれてきた。また、二つ合わせて「韜略(とうりゃく)」と略称されることも多いのだが、この「韜略」ということばは、軍略を意味する普通名詞としても使われてきた。

二、『三略』について

「韜略(とうりゃく)」という言葉も、初めて知りました。たしかに、漢字変換で一発で出てくる。


『三国志』との関係

『三国志』の主役の一人が劉備、字は玄徳である。そのかれが死去するとき、息子劉禅にあてて遺書をしたためているが、そのなかに次の一節を見出すことができる。
「『漢書(かんじょ)』と『礼記(らいき)』は必ず読むがよい。さらに暇を見て、諸子百家、『六韜』、『商君書(しょうくんしょ)』などをひもといて、古人の知恵に学ぶことだ」

一、『六韜』について―リーダー必読書として

また、こんな話も記されている。
劉備と並んで『三国志』の主役の一人が呉の孫権である。その孫権の部下に呂蒙(りょもう)という将軍がいた。戦はめっぽう強かったが、学問教養には乏しかったといわれる。それを心配した孫権が、あるとき、呂蒙将軍を呼んでこう語っている。
「わしは若いころ、『詩経(しきょう)』、『書経(しょきょう)』、『礼記(らいき)』、『左伝(さでん)』を片はしから読んだものだ。政務をとるようになってからは、もっぱら史書と兵法書を読んだが、いずれも大いに得るところがあったと思っている。そなたも、なにはともあれ、兵法書では『孫子』と『六韜』、史書では『左伝』、『史記』、『漢書』などを読んでみるがよい」

一、『六韜』について―リーダー必読書として

私は、『三国志』の登場人物は、ゲーム「真・三國無双」シリーズ(2~4くらいまで)の印象がほとんどなのですが、呂蒙のおっさん、「勉強しろ」と説教されている。


印象に残った内容―『六韜』

君子はその志を得るを楽しみ、小人はその事を得るを楽しむ

(君子の楽しみは志を実現すること、小人の楽しみは物を手に入れること。)

文韜の巻—文師

私としては、「Why→How→What」の順で考えるのよ、という『思考のゴールデンサークル』の重要性を改めて感じる一文でした。


善を見て怠り、時至りて疑い、非を知りて処(お)る

(良いことだとわかっていても実行せず、好機がきても決断をためらい、悪いことだと知りながら改めようとしない。)

文韜の巻—明伝

なんか「うまくいっていないな」とか「進捗がよくない」と感じたときに、この3点で反省してみると良いのかもしれない。


賞を用うるには信を貴び、罰を用うるには必を貴ぶ

(賞というのは、約束通り必ず与えること、罰というのは、法に則って必ず科すこと。)

文韜の巻—賞罰

信賞必罰。どうしても『真・三國無双2』、諸葛亮の「真無双乱舞」を思い出してしまう。


猛獣まさにうたんとすれば、耳をたれて俯伏(ふふく)す。聖人まさに動かんとすれば、必ず愚色(ぐしょく)あり

(猛禽が一撃を加えようとするときは、まず低く飛んで翼をすぼめ、猛獣が襲いかかろうとするときは、まず耳を垂れて身を伏せるもの。聖人も行動を起こすときには、愚者のようなふりをして力を誇示しないものです。)

武韜の巻—発啓

漢文句法の「将(まさ)に◯◯せんとす」のやつですね。
意味としても、これは言われてみるとあらゆる場面で「たしかに」な気がする。


天地は自ら明らかにせず、故に能く長生す。聖人は自ら明らかにせず、故に能く名彰(あらわ)る

(天地は、万物を生育しても、その功績を鼻にかけません。だから、いつまでも存在し続けるのです。それと同じように、聖人も功績をひけらかしませんから、かえって人々から称えられるのです。)

武韜の巻—文啓

「天地」との比較なんですね。規模がすごい。


軍中の事は君命を聞かず、皆将より出づ

(軍内のことはすべて君命によらず、将軍の指揮権にゆだねられます。ですから、敵と対陣しても、戦うことだけに専念することができるのです。)

竜韜の巻—立将

『キングダム』王騎将軍のセリフ、「将軍の見る景色です」を連想しました。


将は必ず上は天道を知り、下は地理を知り、中は人事を知り、高きに登りて下望(かぼう)し、以って敵の変動を観る

(将たる者は、必ず天道を知り、地理を知り、人間を知らなければなりません。そこで高台に登って敵陣の動きを観察するのです。屯営を観察すれば、その情況を知ることができますし、兵士の動きを観察すれば、兵士の動向を知ることができます。)

虎韜の巻—塁虚

「人間を知る」ために、「観察」すること。


敵に当たり戦いに臨むに、必ず衝陣を置き、兵の処る所を便にし、然る後に車騎を以って分かちて烏雲(ううん)の陣を為(つく)る
所謂烏雲とは、烏のごと散じて雲のごと合し、変化窮まりなきものなり

((そもそも用兵の極意は、)敵と対陣したとき、必ず衝陣をつくって有利な地形に陣を構え、戦車、騎馬を展開して”烏雲の陣”をつくることにあります。これができてこそ絶妙な用兵と言えましょう。ちなみに、”烏雲”とは、烏のように散り、雲のように合し、変化して窮まりないことを言います。)

豹韜の巻―烏雲沢兵

烏雲沢兵(ううんたくへい)。「便にする」=「有利にする」という意味合いも、『六韜』のなかで何度か出てきますね。


歩は変動を知るを貴び、車は地形を知るを貴び、騎は別径(べっけい)奇道を知るを貴ぶ

(歩兵は敵の動きを察知したうえで戦うことが肝要です。これに対し、戦車は地形を掌握したうえで戦わなければなりません。また、騎馬は間道や抜け道を把握したうえで戦わなければなりません。)

犬韜の巻―戦車

「歩兵」「戦車」「騎馬」それぞれ、戦局を有利にするための戦い方。


印象に残った内容―『三略』

主将の法は、務めて英雄の心をとり、有功を賞禄し、志を衆に通ず

(将たる者は、しっかりと将兵の心を掌握し、功績のある者を顕彰して、自分の意志を全軍に貫徹しなければならない。)

上略

有名な『三略』の一説目。


柔能く剛を制し、弱能く強を制す

(柔であれば人から慕われるが、剛であれば人から憎まれる。弱であれば助けてもらえるが、強であれば眼の敵にされる。)

上略

「柔よく剛を制す」だけ聞いたことがありましたが、「弱よく強を制す」に続くんですね。
同時に、巨人時代の谷佳知選手の応援歌『じゅうよくごうをせいす、きたえーたわーざーでー』がどうしても脳内再生されます。


計策に非ずんば、以って嫌を決して疑を定むるなし。けっ奇に非ずんば、以って姦(かん)を破り寇(こう)を息(や)むるなし

(策略にたけていなければ難問を解決することはできないし、奇策をめぐらすことができなければ敵を破ることはできない。)

中略

「嫌を決して疑を定むる」「姦を破り寇を息むる」両方とも難しいですね。意味が想像できなかった。


有徳の君は楽(がく)を以って人を楽しましめ、無徳の君は楽を以って身を楽しましむ

(徳のある君主は音楽によって人民を楽しませるが、特のない君主は自分だけが楽しむ。→人民を楽しませれば、いつまでもその地位を保つことができるが、自分だけ楽しんでいるようでは、いずれその地位を失ってしまう。)

下略

イチ参加者としても、「みんなに楽しんでもらうための宴会」という気持ちを持っておくことが重要なのかな。


今後、さらに深掘るために

先輩いわく、『六韜』は太公望と文王のお話なので、マンガ『封神演義』を履修していると、場面がわかりやすいとのこと。

また書籍としては、下記の平田圭吾(訳)の本が、原文そのままな感じで訳してくれていて、オススメみたい。

合わせて、「武経七書」も合わせて少しずつよんでみよう、と思います。


今回、『六韜三略』を読んで、noteにまとめてみたことをきっかけに、初めて知ったこと、もっと知りたいことがグッと増えました。

さすがは「心の一冊」。感謝です!


以上(3,500文字)

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