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リトル・マーメイド(2023)感想〜アリエルなら、きっとこうする〜
※この記事は2023年6月10日に書かれたものに加筆修正を加えたものです。
皆さんグッドハーブニング!そうこです!(この挨拶に慣れてる方はかなりのツワモノ🤣)
今回は実写版リトル・マーメイドの感想をつらつら述べていこうかと思います。本当なら初日の朝イチで吹き替え版、仕事終わりのレイトショーで字幕版……の予定だったのですが、朝はとんでもない豪雨だったので吹き替え版は後日ということにしました。間髪置かずに観ちゃいたいんですけどね😭
今回のリトル・マーメイド、まあ〜世間で結構アレコレぎゃあぎゃあ騒がれてましたね😇いや現在進行系で、なのかな……?
とりあえず騒いでる連中はみんな映画館に行きな!文句はそれから言え!!! ……という感じですね、はい。
私としては、とてもとてもとて〜〜〜〜〜〜も!!!良かったです!!!!1989年版の「アリエル」と地続きになっていて、まさに「アリエルならこうするだろう、こう思うだろう、こう行動するだろう」が終始詰まった作品だったと思います。
そう、そこにいたのは私のよく知っているアリエルと「同じ」だったのです。
では細かく感想並べていきたいと思います。
まずはアリエルについて。
今回アリエル役を射止めたのはハリー・ベイリーちゃん。私は彼女についてよく知らなかったのですが、昨年のD23EXPO(ディズニー社が行う発表会)で「パート・オブ・ユア・ワールド」を披露したのを聴き、その歌いっぷりに圧倒されました。
皆さん、アリエルというキャラクターで一番大事な要素は何でしょうか? アースラが彼女に差し出すよう言ったものは何でしょうか?そう、「声」ですよね。素敵な歌声を持つハリーちゃんがアリエル役に選ばれたのは至極当然のように思えてなりません。
さて、アリエルというキャラクターの性格はどんなものでしょうか? 好奇心旺盛で怖いもの知らず。向学心が強くて何でも試そうとする。こう述べて首を横に振る人はいないでしょう。
私がアニメーション版のアリエルと実写版のアリエルが「同じ」と感じたのは、何よりもその部分が深掘りされていた点にあります。お馴染みの要素をうまく広げて、たくさんの「アリエルならきっとこうする」を作品内に散りばめてくれたのです。
序盤で言うならば、沈没船をフランダーと探検している時。瓦礫をどけたところに鏡があり、フランダーは目の前に映る何人もの自分に驚きビビります。けれどアリエルは「反射してるだけよ」と一言。しかしそこにサメが現れ、二人(一人と一匹?)は逃げることを余儀なくされます。そこでアリエルはサメをうまく誘導し、鏡に映った自分をサメに見せることで逃げる隙を作るのです。
また、陸に上がって間もなくのくだり。今回のアリエルは人間になってすぐに浜辺でエリックに会えるわけではありませんでした。漁師の網に引っかかり、引き上げてもらったのです。実写版から追加された新曲「何もかも初めて」は、声を失ったアリエルの「心の声」が「陸ってすごい! 楽しい!」と胸を踊らせている様子を歌い上げる曲です。今回のアリエルはここで初めて「火」に触れます。「火」も「熱い」も「燃える」も知らない彼女は、臆することなく触れますが、当然熱いし痛いわけで。
加えてエリックとデートをするシーンでは、見たことのないものが溢れる村の中をとにかくあちこち歩き回ります。「南国の花だよ」と言われて渡された花を食べてしまったり(たぶん海藻みたいなものだと思ったんでしょう)、カミスキーを使ってみたら周りの人にドン引きされたり、トライアンドエラーを繰り返しながら「陸の世界」を知っていくのです。
けれどアリエルは陸の世界を楽しんでいるばかりではありません。先程話題に上げた新曲「何もかも初めて」では、陸の世界に対する不安や失望も描かれています。壁に施された「釣られた魚」の絵、キツいブーツにコルセット……「これが私の夢なの?」と自問。トドメは「喋れないこと」。使用人たちがエリックを呼んできてくれるも、エリックは既に「アリエルの声」に夢中で、「助けてくれた子に似てるかもだけど、声が出ないんじゃ違う」と思われてしまいます。ここでアリエルは自分が払った代償の重さを知ることになるのです。
それでは次はエリックについて語っていきましょうか。
アニメーション版からちょっぴり王子らしからぬエリック。今回の彼はなんと「王家の養子」という設定になっていました! それ故でしょうか、彼は城の中にいても孤独を感じているようです。それを埋めるためにあちこちの海や島、異国を冒険して回っている……という印象でした。実のご両親は船の沈没で無くなったそうで、もしかすると小さい頃から船での生活には馴れていたのかもしれません。王子となってからは特別扱いされたり、城にいなければならなかったりと、窮屈な思いをしたことでしょう。
そう、面白いことに「周囲の無理解」によって孤独感を募らせているという点でアリエルと共通点が生まれていたのです!
共通点があれば親近感が湧き、一気に距離が縮まるというもの。部屋を抜け出して裸足(ここ大事)でこっそり城内を歩き回るアリエルは、自分の秘密の洞窟によく似たコレクション部屋に行き着きます。きっとアリエルはその部屋の主にシンパシーを感じたのでしょうね。部屋の主ことエリックはそこでアリエルと再会。決して自分のコレクションを嗤わず、素敵なものだと受け入れてくれている様子に惹かれたのでしょう。中でも「海の化石」とエリックが呼んだものを、アリエルが床に叩きつけて割ってしまうシーン! 何をするんだとエリックは驚きますが、無骨な化石の中には綺麗な宝石が!「なんでこれが入ってるとわかったんだい?」と、自分の知らないことを知っていたアリエルにより強い興味を持ったはずです。
次はセバスチャンについて。
初見で「いや、ただのカニ!!!!!!」と思いましたが慣れって怖い🤣動いているのを見ていたら知らない内に受け入れていました。今回の彼は宮廷音楽家ではなく執事長。なのにワガママ娘のお守り……と、アニメーション版同様不満タラタラ。それでもアリエルにくっついて回る内に、「海に帰れば一生惨めな思いをするよね」とアリエルの心境を理解するように。
で、セバスチャンといえばやっぱり「アンダー・ザ・シー」と「キス・ザ・ガール」ですよね!
アンダー・ザ・シーは、アニメーション版同様色鮮やかな楽しい海洋生物たちのダンスシーンで構成されていました。海の生き物たちが演奏するシーンが無かったのはちょっと残念でしたが、あれはやはりデフォルメされたアニメーションだから出来たシーンなんでしょうね。けれどその分個性的な海の生き物が曲に乗せて踊る姿は良いものでした。あの良さはもう、ね、観ないとわからないよ。
キス・ザ・ガールは歌詞がちょいと変更されたらしいですが、私はあんまりよくわかりませんでした。字幕での趣旨も、アニメーション版とほとんど変わってませんでしたしね……。そもそも「キスしないとやべぇ」っていう状況なのに、「キスして」っていう歌詞にいちゃもん付けてる連中がおかし(略) 失礼しました、セバスチャンの話してたのにね。自然音が作り出す曲、という雰囲気がより一層強まってて綺麗な曲に仕上がっておりました。アラン・メンケンとリン・マニュエル・ミランダの采配に感謝です。
ではお次はまさかの兄妹関係になっていたトリトンとアースラについて。
二人が兄妹ということはアニメーション版で没になった設定を拾い上げたもののように見えますね。父親との関係が抉れた姪っ子を唆す悪い叔母……うおおぉかなりリアルでは?となりました。
トリトンはなんということでしょう、奥様を人間に殺されていた模様です。そりゃ人間憎むわ……残された七人の娘を自分一人で育てなきゃってなるわ……。アリエルが陸に行きたがるのを阻止するのも、まあわからなくないですね。けどアリエルのコレクションを壊すシーンは未だに怖いし許せません。アニメーション版より尺が短くなったりそこまで怖くなくなったのは、正直救いでした。あのシーン本当怖くて悲しくて苦手なんです。
アリエルが見つからず途方に暮れ、「私が悪いのか……」と項垂れるのは玉座ではなく、娘たちも集まる家族のリビングルームと言える場所でした。姉さんたちもアリエルを探すためにあちこち泳ぎ回り、けれどトリトンは王なので宮殿から動けない……。何とも切ないですね。
そんな「人間は総じてクソ」という考えのトリトンも、アリエルが「エリックも一緒に戦ってくれた」と告げられて多少は人間への見方を見直した模様。海面に上がって陸を恋しがるアリエルに魔法をかけてくれたのがその証左です。
さて、叔母さんという設定になったアースラについても語っていきますよ! なにかしらをやらかして兄貴であるトリトンから宮殿を追われたアースラは、皆さんご存知な場所で生活しています。けれど何をやらかしたのかは字幕版ではわかりませんでした🤔
「食べるものが宮殿と違いすぎる、痩せる一方だよ」と言いますが「どの口が🤣」って感じですし、「トリトンの方が"タコ"だよ」と言葉遊びが達者。
アースラは言葉巧みに姪っ子であるアリエルを自分の道具にしてしまおうと画策します。実は今回はフロットサムとジェットサムが「「「喋らない」」」ので、あの二匹の役目も兼ねている感じでした。取引を渋り拒否したアリエルに対し「人間の世界の事は忘れるんだね」と言って気持ちを揺さぶったり、まあやり口が上手いんだ。
そして今回のご契約内容は「人魚の特権」を譲渡することでした。尾びれ、水中での呼吸、そして声。アリエルの声だけが特別というわけではなく、「人魚の声」が特別という設定らしいです。最序盤の船乗りたちも「人魚の娘たちの歌声は人間の男を虜にして殺す」と言ってましたしね。
登場人物最後の紹介はグリムズビー。
名前だけだと誰?って思う人は多そう。アニメーション版では船酔いして吐いたり、エリックの石像を披露してたあのおじさんです。今回彼は宰相という立場で、船で冒険をするエリックのお付きをしたりサポートをしたり色々します。
彼はクルエラにおける「ジョン」、実写版シンデレラにおける「大佐」のような立ち位置でした。主人公の反対側や敵対勢力にいる協力者、内通者のようなポジションです。
ヴァネッサに心を操られておかしくなったエリックに「どうしたんですか?」と問いかけたり、スカットルが起こした騒ぎでエリックが落とした指輪を蹴っ飛ばしたり、地味にいろんなところで活躍してくれます。アニメーション版から役割がかなり昇格したのは彼ではないでしょうか。
では次にエンディングシーンについて語っていきたいと思います。
アニメーション版のエンディングは言わずもがな、船の上で挙式を行うアリエルとエリック。そしてそこにやってくるトリトンとたくさんの人魚たち。アリエルの「愛してるわ、パパ」です。
今回船の上での挙式はありませんでした。けれど二人は新しい旅立ちに向かうのです。地図にない未知の海を探しに行く。それが今回のエンディングでした。
でもきっとアリエルならそうすると思います。そしてエリックもそれに賛成するだろうと思います。
好奇心旺盛なアリエルは、まだ見ぬ場所への冒険心を募らせて新しい世界へ。想像に難くないです。
二人の見送りはエリックの国の人々はもちろん、たくさんの人魚たちもいました。ただ祝いに来たわけではないのです。これまで陸に上がらなかった人魚たちがそれを受け入れ、アリエルは孤独感から解放されたのです。
トリトンは「声を上げられなくて辛かっただろう」と言います。もちろん、それはアースラが声を奪った件……についてだけではないのは、皆さんならおわかりですよね?
最後に、冒頭とラストシーンの繋がりについて語って終わりにしようと思います。
冒頭ではアンデルセン原作の「人魚姫」の引用がテロップでなされます。
「人魚は泪を流さない。だから余計に辛かった」……だったかな……。これは絶対大事な要素だ!!!と思っていたら、ラストシーンでアリエルが泪を流したんです。これは人間になったから泪を流せたともとれますし、人魚でも泪を流すのだ、ともとれますね。
原作童話の引用は実に素晴らしかったです。最高!
他にも話したいことたくさんなのですが、まだまだ何回も見返したいのでこのあたりにしておこうと思います。長文読んでくださり、ありがとうございました!