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BOSS OC-2を実戦形態へとモディファイ
主にエレキベースでのライブ使用を想定して、BOSSのオクターバーOC-2をいろいろと改造しました。主な変更点は
オクターブ音の音色可変スイッチの追加
2チャンネル化
リケース
トゥルーバイパス化
です。
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背景
オクターバーはベーシストが使う定番のエフェクトの一つになりました。通常の4弦ベースで出せない音域まで表現できるうえ、1オクターブ上のポジションで弾いてシンセベースのような音色を表現するためにも多用されます。私自身ライブや宅録でベースにオクターバーをかける機会が多く、さまざまな機種(BOSS OC-2/OC-3/OC-5、MXR bass octave deluxe、aguilar Octamizer、etc.)を使用してきました。その中で固まってきた理想のオクターバーの仕様が、OC-2を素体として上述の箇条書きの変更をするというものです。
とくに2チャンネル化はライブで曲中に設定を切り替えたいという必要性がありました。3Leaf Audioのオクターバーがドライ音を消すスイッチを搭載していますがtoneを個別に設定できません。また別の設定のオクターバーを2個用意する手もありますが、バイパス音の問題やシステムの簡略化のためにもこの際「スイッチ一押しでドライ音、オクターブ音それぞれの音量とオクターブ音の音色をすべて変更できる」という仕様を目指しました。
またここ数年チェックしているSam Gendelのペダルボードで、electro-harmonixのPitch Forkが2台入っていると思われるカスタムメイドのハーモナイザーが使われているのにDIY精神を刺激されたこともインスピレーションになっています。
Sam Gendelのボードにいつも入ってる自作ハーモナイザー、ノブやスイッチの配置からしてエレハモのPitch Forkを2台ぶち込んだものっぽいですね。大きいボードのときはそれをさらに2台使って4和音出すという。https://t.co/5lfj6kWwIl
— TJMods / Thermal Jungle (@tjmods_pedal) November 28, 2022
OC-2の回路構成
オリジナルのOC-2の回路を模式的に示しておきます。
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OCT1部分で原音の2倍周期(1オクターブ下)の信号を生成し、それをOCT2部分に通すことでさらに2倍周期(2オクターブ下)の信号を生成します。
入力バッファを通った信号はバイパス音とエフェクト音に分岐します。エフェクト音は原音、1オクターブ下、2オクターブ下をミックスした信号で構成され、on/offをバイパススイッチで切り替えています。
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入出力バッファの外側でトゥルーバイパスの信号を分岐するスイッチを追加。エフェクト音は2つのチャンネルに分岐させ、どちらも原音と1オクターブ下をミックスする回路に変更しています。
改造後の回路構成は上の図のようになります。できるだけ基板上のもともとの回路構成を活かしつつ、実践的な使用に向けた改造にしました。
工程
オクターブ音の音色可変スイッチ
OC-2で作られるオクターブ下の音はもともと倍音成分が多く、回路の最終段近くで1次と2次のローパスフィルターによって音色が整えられています。このフィルター特性を変化させることで、1. OC-2の標準的な音、2. より暗いサイン波に近い音、3. 倍音を多く含むシンセベースに近い音の3段階を用意しました。図2の回路中では二つのチャンネルのOCT1部分に位置するフィルターです。
2チャンネル化
OC-2には1オクターブ下の音を作る部分と2オクターブ下の音を作る部分がありますが、今回ベースでは2オクターブ下の音は使わないため、これを転用して1オクターブ下の音を作る二つ目のチャンネルを作ります。そのため今回のモディファイはOC-2の基板が一枚あればできます。もともとエフェクトon/off切り替えに使われていた電子スイッチの回路は二つのチャンネルを切り替えるために転用しています。プッシュスイッチはクリック付きのSPSTモーメンタリー式のものを使用しました。
トゥルーバイパス化
OC-2は古いBOSSのペダルですので、バイパス時の音はやや低域が削れてカリカリした音になります。私はこの音はあまり好みでなく、ボードの最前段で掛けっぱなしにするバッファーがあるので今回はトゥルーバイパス化しておきます。なおエフェクトonの際のドライ音は元のOC-2の入出力バッファを通っている状態ですが、オクターブ下が出ているのでこれは許容範囲。3PDTスイッチは桜屋電機店で購入した「alpha 3PDT HEAVY DUTY SILVER CONTACT FOOTSWITCH」を使っています。押し心地よく信頼性も高いです。
リケース
BOSSのコンパクトエフェクターのリケースはこちらなどで外見のイメージを参考にし、移し替えた先には1590XX (外寸145×121×39.5mm)サイズのアルミダイキャストケースを使用しました。Tayda Electronicsのもので、カスタムドリルサービスで穴あけ加工までしてもらったものを注文しました。小さくしようと思えば1590BB2サイズでも可能だったと思いますが、内部のパーツのクリアランスに余裕を持たせたかったので少し大きめの筐体です。
サウンドサンプル
BOSS OC-2実戦形態プレベでデモ pic.twitter.com/i65xfHJrMw
— TJMods / Thermal Jungle (@tjmods_pedal) December 22, 2024
プレベタイプのハイポジションにかけるとこんな感じです。ローポジションでは、4弦のA♭あたりまでうまく追従してくれます。原音からピッチを検出する部分のフィルター特性を工夫すればもう少しベース用にうまくチューンアップできそうな気がしているので今後アップデートする予定です。