ザスパ群馬の2024シーズン振り返り&2025シーズンに向けて
あっさりと決まってしまったJ3降格
11月10日をもって2024年のJ2が終了しました。私が応援している地元のクラブ、ザスパ群馬は3勝9分26敗の勝ち点18で最下位。得失点差はマイナス38。残留争いに絡むことなくあっさりと終戦してしまいました。非常に残念です。昨シーズンはJ2昇格後最高の勝ち点であり、一時は昇格PO圏を争うところまで行き、今シーズンは念願の専用練習場(ザスパーク)の会場、リブランディングによるチーム名変更、大槻体制3年目と期待が高まりました。
私自身も昨シーズン終了後に書いたnoteで「苦労するだろう」「まずは勝ち点50、16位以内を確実にクリアできるクラブに」と書きましたが、まさか残留争いに絡むことなく降格するとは正直思っていませんでした。たった一年よかっただけで思い違いをしてしまいました。
ザスパのJ3への降格は2018シーズン以来2度目。前回は2年でJ2に戻ることができましたが、現在のJ3はJFLとの入替(=Jリーグからの脱退)制度ができ、当時と比べてもリーグの平均レベルが上がっていることは間違いありません。
J2時代に何度もザスパと対戦してきた富山、北九州、鳥取、讃岐、岐阜はまだ昇格できていませんし、現時点でJ3の最下位にいるのは昨シーズンJ2にいた盛岡です。安易に「一回降格してイチからやり直せばいい」と言えるカテゴリーではなくなっています。
一方で3チームが降格するレギュレーションである以上、当たり前ですがどこかのクラブは必ず降格します。そこにザスパが入ってしまった。J3でやり直すしかありません。ファンの一人として24シーズンを振り返り、25シーズンの展望を冷静に行っていきたいという趣旨のnoteとなります。
上回れなかった戦術、上澄みがなかった補強
上述通り23シーズンは現行制度J2最高順位、最高勝ち点フィニッシュ、24シーズンは大槻体制3年目であり、岡本が山形に移籍した以外は主力がほぼ残留ということもあり、期待も高まりました。
一方で上記に添付した23シーズンの振り返りにも書いたように、昨シーズン後半は大槻流の立ち位置を大切にするビルドアップは対策も進み封じ込められ、9月以降は台風の影響で延期になった2試合を含めて12試合で2勝3分7敗。39節まで連敗がなかったものの、最後は3連敗でシーズンを終える形となりました。
大槻監督は基本的に24シーズンに向けてやり方を変えずに臨みましたが、研究が進み開幕直後から可変式ビルドアップは封じ込まれ、途中からは3バック(5バック)にして守備から入る形に変更しましたが、結果はついてきませんでした。
大槻監督解任後、武藤体制になってからも含まれますが、枠内シュート数は94、シュート決定率6.8、ゴール期待値31.3、チャンスクリエイト総数270はいずれも最下位。クロス総数は525で14位、ドリブル総数398で13位。一方でパス成功率77.9はリーグ7位、パス総本数は14936本で12位。「パスは繋ぐけど、相手を脅かすことはできていないし、ゴールも決まらない」ということがよくわかります。(数値はいずれもJリーグ公式HPより)
さらに残念だったのはビルドアップ以上にチームの根幹であった守備が崩壊していったことです。今シーズン途中に書いたnoteにも記載しましたが、開始直後の失点やセットプレーからの失点があまりにも多すぎた。
昨シーズンは44失点だったのものが今シーズンは62失点(19位タイ)、試合開始直後15分での失点が12(19位タイ)、セットプレーでの失点は20(最下位)。(時間帯失点まではJリーグデータサイト、セットプレー失点はフットボールラボより)。開始直後に失点し、追いかける展開が増えてしまう。現代フットボールにおいて最重要なセットプレーで全失点の3分の1。降格したので当たり前なのですが、厳しい数字が並んでいます。
組織での上澄みが見られないのであれば、個々の能力に期待するしかありません。シーズン前の補強はある程度狙いや課題をクリアしたいという意思が見られるものでした。
FWの得点力不足解消:高澤、佐川
バイタルでの受けからエリア内の侵入(昨夏に抜けた長倉のような):和田、齋藤
岡本が抜けた右SB:船橋
天笠、風間に次ぐボランチ:藤村
しかし、残念ながら誰一人として期待した活躍をすることはできなかったと言わざるを得ません。船橋、齋藤は長期離脱、藤村も開幕直後に離脱、和田や佐川も期待された結果が出せず、高澤もJ3時代の輝きは取り戻すことができませんでした。
補強というのはいわゆる「当たった」「外れた」というのがあるのは致し方ないことです。実際昨シーズンは中塩、酒井、エド、佐藤亮と獲得した選手たちが活躍しましたが、後述する夏の補強も含めて残念ながら今シーズンは補強は失敗だったと言わざるを得ないでしょう。
監督解任ブースト発動せず、夏の補強も実らず
結果が出なければフットボールクラブがやるべきことは二つ。監督を変えること、選手の補強。ザスパは二つとも行いました。4月の長崎戦後にはサポカンが開催され、松本強化部長より「大槻もやり方を変えてきている」「大槻以上の監督が市場にはいない」という一方で「GWの藤枝戦、清水戦は勝ち点を取らなければならない」と、この2試合の結果如何で判断するニュアンスの発言もありました。
この2試合を連敗で終えると大槻監督との契約を解除、後任には武藤ヘッドコーチが昇格。夏の移籍マーケットでは5人の選手を獲得(河田、樺山、小柳、仙波、瀬畠)と残留に向けて打つ手は打ったようにも思います。21年にも奥野監督解任→久藤ヘッドコーチ昇格、大武や細貝の獲得で残留を達成したクラブとしての経験もあったでしょう。しかし、残念ながら武藤監督就任後24試合で2勝。内容も結果も伴わず淡々とJ3降格への道をたどるシーズンとなってしまいました。
結果論になりますが、武藤監督の昇格は正解だったのだろうかと思わざるを得ません。初めてのトップチームの監督就任が残留圏へ導くミッションというのはあまりにも荷が重すぎたのかもしれません。一方で水戸や徳島はザスパ同様にクラブ内部からの昇格で監督交代し、残留を勝ち取っている現実もあります。
武藤監督は就任後、基本的には大槻体制のやり方を継続させつつ、5-4-1スタート、ブロックもより低く設定することで「失点しないこと」を最優先にプレーさせました。まずは失点を減らす、残留を狙うチームの定石ではあります。ただ見ている限りは「ブロック」というより「人が並んでいるだけ」でしたし、後ろを気にするあまりボールの奪いどころははっきりせず、奪っても前への距離があり運べず、ポゼッションで前進を図ってもその理論構築は研究しつくされた大槻体制のものであり、アップデートはありませんでした。
武藤監督の記者会見コメントでよく見た言葉に「トライする」「前を向く」「矢印を前に」があります。それらを試合のピッチ上で見ることは最終節までなかったのではないでしょうか。フットボールがエンターテインメントの一部であると考えると、2時間も退屈な作品を見させられている(我々はそれを覚悟してもスタジアムやテレビで見るのですが)感覚でした。
夏の補強で獲得した選手たちはそれぞれ特徴を出そう戦ってくれていたと思います。特に仙波は加入後から攻撃にはかかせないリンクマンとして中盤から前線にかけて走り回る姿が印象的でした。ただし、個々は頑張ってもそれがチーム全体のパワーに昇華されていったようには見えませんでした。
河田がいい例ですが、徳島や大宮時代のイメージはゴール前で思い切って振りぬく、いいところにいてゴールを決める姿です。しかし、ザスパでは残念ながらそういった良さを生きる戦いを志向していなかった。最終ラインはべた引きのブロック、その中で1トップで守備をしろ、いい形でボールは来ない、ポストプレーしろ、頑張って運べ、ゴール前でも仕事しろ。途中加入の選手にはあまりにも酷すぎる要求です。
佐藤亮、山中、エド、杉本、シーズン途中からは樺山とサイドから仕掛けられる選手が揃い、平松、高澤、佐川とJ2では屈指の高さを誇るFW陣もいた。それにもかかわらず、上述通りの攻撃関連のスタッツです。監督交代の意味はどこにあったのだろうと思ってしまいます。
2025シーズン、J3の戦いに向けて
一番最初に書いた通り、レギュレーション上3チームが降格する、そこに入ってしまった以上、来年のJ3での戦いに備えなければなりません。
本日、武藤監督、松本強化本部長の退任が発表され、佐藤正美強化担当の強化部長への就任、引退を発表した細貝の社長代行、GM就任(来年4月の取締役会をもって社長に就任)、赤堀社長の会長就任も合わせて発表されました。クラブが経営や資金面、チームがピッチ上と分けるならば、概ね全員が責任を取った形といえるでしょう。
シーズン終了後すぐの発表になったということは、細貝への意思確認、取締役会での根回しなどは事前に済んでいたということでしょう。Ⅹ上では「社長、強化部長ともに居残りに全力」というポストがありましたが、改めて匿名の方のSNS発信(特に会議、取締役会内容といった本来内部で留まるべき情報に触れるようなもの)の信ぴょう性は常に疑う必要があるし、それに乗じて発信することは相当慎重でなければならないと改めて実感しています。
武藤監督、松本強化本部長の退任はJ3降格という結果になってしまった以上致し方ありません。一方でお二方とも昨シーズンのクラブ史に残る結果に大きく貢献したことも事実です。どのような形であれ今後もサッカー界で活躍されることをお祈りしますし、ザスパへの貢献に感謝です。
そして驚きだったのは細貝の社長就任。GMや強化担当、コーチ、アンバサダーなど何らかの形で引退後もザスパに関わってくれたら嬉しいなと思っていましたが、まさかいきなり社長就任とは驚きました。
選手引退→いきなり社長就任は山口の渡部博文氏のケースがありますし、選手から社長は現Jリーグチェアマンの野々村芳和氏、福岡の結城耕造氏と徐々に増えてきているのも事実です。しかし、今回の細貝の社長就任はJ3降格というディスアドバンテージから始まります。クラブとレジェンドの関係は非常にセンシティブなところもあり、監督として使い捨てのようになってしまうケースもなくはありません。
そうならないようにクラブとして細貝社長を守ってほしいし、そのために赤堀さんが会長として残ることになったのだと理解します。最大のミッションであったザスパークの開業を果たし、リブランディングもまだ1年です。これを軌道に乗せる必要があります。残念ながら裁判にも発展してしまったアカデミーの問題も対応しなければなりません。加えてスポンサー、各自治体への挨拶や関係構築、来シーズンのシーズンチケットの販売促進やスポンサーマッチデーの設定など社長が最も動かなければならないのがシーズンオフなのではと推測します。
当面は赤堀会長が経営面を見ながら、細貝社長がクラブの顔として動くという体制になるのでしょう。GMを兼任していますが、佐藤正美が強化部長に就任したので社長業との兼任で難しいところをフォローするイメージでしょうか。スポルティーバに渡辺社長のインタビュー記事があったのでリンクを貼っておきます。
赤堀社長については、ザスパークの開業やリブランディングなどクラブとして非常に重要で、難しい判断をする時期に就任し、大変な苦労があったと推察します。(SNSを見ると長崎戦、熊本戦での赤堀社長の言動に納得がいっていない方がいらっしゃるようですが、私は2試合とも現地に行けなかったので見ていないものは評価できないという立場です)。J3降格という結果には責任がある一方で、赤堀会長ー細貝社長体制で挑むことになった来シーズンですから、細貝社長をサポートしていただきたいと思います。
残るは監督人事です。J3での経験を考えれば奈良を率いていたフリアン、相模原で昇格PO争いをしているところで解任され、一応ザスパOBでもある戸田解説員あたりがいいなと個人的には思っています。経験を考慮しなければ、大宮でコーチを務めている島田裕介が昨年S級を取得しているようなので、敷島のベンチに座るところが見たいなと思います。もう一人OBでいけば依田光正は町田、ガンバでコーチを歴任し、福島では半年ですが監督を経験、今シーズンは清水のJ1昇格にコーチとして貢献しています。こればかりはどうなるか分かりませんが、早急に決定してチーム作りを進めたいところです。
来シーズンは2度目のJ3での戦いです。注目度も下がることは必至でしょう。資金的にも分配金の減額など厳しい予算編成になるでしょう。それでもフットボールクラブがある意味を証明してほしいと思います。フットボールクラブがあることに意義があると思っているから前橋市は予算を付けているし(令和6年度は2,400万)、スポンサーもお金を出すし、ファンは応援するわけです。その証明をザスパ群馬というクラブとして見せてほしい。心からそう思っています。
選手、スタッフ、ファン・サポーター、スポンサー、ザスパ群馬に関わる皆様、今シーズンは残念な結果になりましたが、お疲れ様でした!また来シーズン一喜一憂しましょ