一見無害な児童書『はじめてのローマ字の本』の正体
更新の間隔があいてしまって、本当に申し訳ございません。
自分でも、今月はひどすぎると思います。
2月は形の上では「ちゆ12歳」のサイトを2回更新、noteを4回更新したのですが、先月の記事の再構成も含まれており、内容が薄かったです。
とにかく、noteの有料更新は2回しかしていないので、24・25・26・27・28日の5日間で8回更新します。(この記事を含めて)
今日のところは、2013年8月の『二次元ドリームマガジン』vol.72に書いた文章の再掲載をさせていただきます。
大正ごろの話
1918年(大正7年)に出版された『通俗心理奇問正答』という本に、次のようにあります。
「漢字やかなをこのようにして著書や新聞雑誌に用いるのも、この後何年くらいでしょうか。つまりはローマ字になるでしょうし、また、ならねばならぬと思います。これはただ時間の問題です」
と、大正ごろだと、ひらがなや漢字は捨てて、日本語はローマ字に統一すべきと論じる知識人は多かったです。
そんな感じで、1909年に設立されたのが「日本のローマ字社」でした。
それは、「世界のすべての人はローマ字のつづり方を習わねばならぬ運命に在る」などと主張して、
『ローマ字少年』という雑誌(本文がすべてローマ字で書かれた少年誌)を発行するなど、ローマ字による統一を目指しました。
すべてローマ字で書かれた子供向けの本(大正5年)
『はじめてのローマ字の本』
もちろん、実際にローマ字がひらがなに取って代わることはありませんでした。
しかし、それから100年が過ぎた現在でも、まだ「日本のローマ字社」は存在しています。
というわけで、これは「日本のローマ字社」が2003年に出版した、児童向けの本です。
見たところ、ごく普通の子ども向け学習書という雰囲気で、近所の図書館の児童室に溶け込んでいました。
しかし、ページを開くと、ローマ字では「ち」は「TI」と書いて、「ゆ」は「YU」と書く……といった説明に混ざって、微妙に奇妙なことを吹き込もうとしてきます。
「身のまわりのことをローマ字で書いてごらん。日記をローマ字で書いたり、どんなことでもいいよ」
「わたしたち、日本のローマ字社の人たちは、毎日ローマ字を使っています。漢字をまったく使わなくても不便を感じません」
と、単なる「ローマ字のルールの説明」に留まらず、読者の子どもたちに漢字はいらないと語りかけてきます。
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