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「妹ブーム」研究・その11(『シスター・プリンセス』)

こちらの続きです。

かくて『シスプリ』登場す

そんなこんなで、これまでの無駄に長い話を振り返ると……。

エロゲの妹といえば、90年代前半だと、
「オムニバスの中のシチュエーションのひとつとしての近親相姦もの」
「館モノのダークな世界観の中での、妹との近親相姦」
などが主でした。

そこで、1995年に『同級生2』が登場。
90年代後半には、「学園恋愛モノの攻略対象のひとりである義妹」とイチャイチャできるゲームが激増しました。

そして、1998年には「妹に特化したゲーム」も出てくるようになりました。
ひとつのゲームで複数のキャラから「兄」と慕われることも増えます。

■例
・『永遠の都』(98年10月):「おにいちゃん」「おにぃちゃん」「お兄 さん」(義妹・幼女・妹の友達)
・『モチーフ』(98年11月):「おにいちゃん」「おにいちゃん」「おに いちゃん」「兄貴」(実妹ほか)
・『少女』(98年12月):「お義兄ちゃん」「お兄ちゃん」「おにぃちゃん」(義妹・妹の友達・幼女)

こうして、「妹もの」の強い流れができていたのでした。

そして、『電撃G'sマガジン』の1999年3月号(1月29日発売)から、『シスター・プリンセス』の連載がスタートします。

9人の

9人の妹たちが一気に登場して、
「お兄ちゃん」「お兄ちゃま」「お兄様」「あにぃ」「おにいたま」「兄上様」「アニキ」「あに兄」「兄くん」
などと呼んでくるインパクトは圧巻でした。

「G'sマガジンの読者参加ページ」のフォーマットで、流行の「妹」をテーマに企画したら大量の妹が並ぶことになったのだと思うのですが、『セラフィムコール』や『お嬢様特急』と比べても異様な設定になり、バズりました。

いちおう、企画時期は『おにいちゃんといっしょ』と同じころ。

おにいちゃんといっs

↑ 当初は1999年2月発売予定。妹(候補)は4人で、「お兄ちゃん」「お兄ちゃん」「お兄様」「にいちゃ」。ツンデレ妹がいるのが特徴。

なので、『シスプリ』は無から突然生えてきたわけではありません。

90年代後半、これまでに紹介してきたような数々の良作やら駄作やらがあって、妹の需要が高まり、「妹に特化した作品が成立する時流」みたいなのはあったのでした。

ただ、鳴沢唯・みさき・乃絵美など成功した妹キャラはいたのですが、「妹に特化した作品」に大きな成功例はなかったところになんか現れた突然変異のモンスターが『シスプリ』でした。

現在の公式で、『シスプリ』を「妹萌え作品の元祖ともいうべき伝説的タイトル」と称しているのも、分からなくはないです。

「妹萌え作品」の定義によるのですけど……。
日本の二次元の「妹萌え作品」を広義に解釈するなら、シスプリ以前の『みゆき』『くりいむレモン』『同級生2』を差し置くことはできません。

ただ、妹萌えに特化した作品で、00年代前半からの二次元妹の文脈に直接大きな影響を与えた……みたいなニュアンスで、『シスプリ』を「妹萌え作品の元祖ともいうべき」と表現するのなら分からなくもないです。

※『シスプリ』が始まる2か月ほど前に、妹が3人やって来る『モチーフ』とか、頭がふぁーふぁーな妹と暮らす『まゆ』が発売されていたりするのですが、『シスプリ』の影響力は格が違いました。


シスプリの話

『シスプリ』については、少し動画にしたことがあります。

これと重複するのですが、『電撃G'sマガジン』誌上の『シスプリ』について、少しだけ書いてみますと……。


鈴凜のこと

『シスプリ』の一番最初の人気投票では、「アニキ! 私に1票お願いっ!」というコメントだった鈴凜が最下位。
投票総数1232票のうち、鈴凜への投票は18票でした。

画像3

この1か月後には、1人で250枚のハガキを出したアニキの出現で一瞬だけ浮上するのですけど、その後は低迷。
たまに8位になっただけで「万年最下位から奇跡の脱出!」と書かれるようなキャラになってしまいました。

万年再開

最下位が似合う妹

鈴凛は、最下位が似合う妹ではありません(過激派)。


白雪のこと

私の妹である白雪は、はじめて会ったとき、私のことを「あに兄」と呼んでいました。

あに兄

しかし、最初の投票で1232票中34票の8位になった白雪は、なにか思うところがあったのか、呼び方を「にいさま」に変えてしまったのでした。

にいさま

これが『シスプリ』で唯一の「兄呼称変更」となります。
いったいどういう判断で「『あに兄を『にいさまに変えましょう」みたいな話になったのか、謎です。

よく見ると髪型も変わっていて、別人説もあります。


千影のこと

最初の投票で1位だったのは、千影でした。

ちかげ

千影の発言をいくつか並べてみると……。

「あ、兄くん……。ん、顔に死相が出てるじゃないか……。ふむ、私も初めて見たよ……美しいな」

「庭で撮った写真のことなんだけど……。……あの枇杷の木、やっぱり昔に何か首吊りでもあったようだな……ほら。……木の下に立ってる兄くんの真上に……見えるだろう? これは……落ち武者かな?

「兄くんは、ピテカントロプスエレクトスという生物に興味はあるかい? ……以前から兄くんは似てると思ってたんだが……。兄くんの輪郭、歯並び、……こうして写真を見ていると実にそっくりだよ。ああ、兄くんは人類の貴重な標本だよ。早く会いたいな……

と、現在の感覚で見ると中二病キャラの言動で、数年後に枕に顔をうずめてバタバタしている千影が妄想されます。
しかし当時、中二キャラみたいな概念は、まだあまり共有されていませんでした。

伊集院光さんのラジオで「かかったかな? と思ったら中二病」のコーナーが放送されていたのですが、それは「洋楽を聞き始める」「コーヒーに砂糖を入れることが恥ずかしく思えたりする」といった感じで、邪気眼的な「中二病キャラ」の概念が広まるのは00年代半ばです。

なので、1999年当時、千影はミステリアスでクールで知的なお姉さんと言われていたのでした。

クールで

とはいえ、「不思議ちゃん」なイメージも強かったとは思います。
あと、当時は無表情・無感情な「綾波系」が人気で、そういう文脈で見られていた気がします。

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