某宗教が布教目的でYouTubeに投稿した動画『ケモノガタリ』について
この記事の本編は無料で、普通に本編最後までお読みいただけます。
(無料部分のあとに、定期購読してくださっている方に向けた「オマケ」が少しありますが、そこは余談です。無料の部分だけ、飽きるあたりまでお読みいただけると嬉しいです)
2020年7月20日、YouTubeに『ケモノガタリ』という動画が投稿されました。
基本的な内容は、次のような感じです。
その「3人の大学生」というのが、こちらのケモノたち。
彼らが居酒屋で飲みながら、よさげなノリと雰囲気で、ちょっとマジメに哲学的なトークをする……みたいな感じです。
「優等生で頭の良いシカ(望月)」
「意識高い系でリア獣のライオン(山下)」
「マイペースなオタクのヒツジ(田中)」
という3人(3頭?)が主役。
オープニングでは、センスよさげな音楽に合わせて、3人がオシャレっぽく踊っています。
私はセンスとかオシャレとかポップとか全然わからなくて、感性がズレているかもですけど、曲も映像も、けっこうイイ感じだと思います。
ストーリーも、軽いパズルから始まって、哲学っぽい会話へ。
小難しい話題のわりには、それほど気構えず、サクサク視聴できるように作られています。
そうして、「人は何のために生きるのか?」「生きる意味とは?」みたいな話を、あーでもないこーでもないと話し合っていきます。
それで、8月14日。
あるケモナーの絵師さん(フォロワー3万人)が、この動画を気に入って、ファンアートを描いてツイートしました。
プロフィールによると「ライオンと猛禽類が特に好き」とのことで、山下推しみたいです。
イキイキしていて、素敵なイラストだと感じました。
それをきっかけに、ケモナー界隈で『ケモノガタリ』が広まり始めます。
山下、人気ですね。
そうして、8月16日の夜。
ということで、ここから、『ケモノガタリ』は「浄土真宗 親鸞会」の布教動画だという注意喚起が広まりました。
それを受けて、絵師さんも問題のツイートを削除。
これが8月14日~16日に一瞬だけ起こって即座に収束した、ケモノガタリ騒動でした。
『ケモノガタリ』のLINEに登録してみました
さて、YouTubeに投稿されている『ケモノガタリ』は、第1話の本編と、第2話以降の予告編だけです。
しかし、動画説明文のリンクをクリックして、『ケモノガタリ』の公式サイトに行ってみると……。
なんという不穏なオーラでしょう。
ここから『ケモノガタリ』を友だち登録すると、第2話以降の本編を視聴できるそうです。
てことで、さっそく友だち登録しました。
すると……。
山下キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
友だち登録して早々、「何のために生きてると思う?」と聞いてくる山下。
てきとうに返事をすると、さらに突っ込んできます。
山下、ちょっとがっつきすぎだと思います。
ともかく、LINE登録者には、あとでamazonギフト券1万円がもらえるチャンスもあるそうで……。(つなぎとめでしょうか?)
またきてね! ∩(>ヮ<)q
勧誘の流れとか
そんな感じで、『ケモノガタリ』の前半は、「生きる意味とは、こうだと思います」という、よくある一般的な回答を潰していくフェーズとなります。
第2話:「人は生きるために生きる」は違う
第3話:「人は成長のために生きる」は違う
第4話:「人は夢を叶えるために生きる」は違う
第5話:「人は社会貢献のために生きる」は違う
第6話:「人に生きる意味などない」は保留
第7話:「人は愛のために生きる」は違う
第8話:「死」とは
……といった感じ。
「生きる意味が分からないとマズイ気がするけど、それが何なのか、どこにも答えがないよね」
みたいな方向に話を持っていくのが、親鸞会の勧誘の基本的な流れです。
この段階では、マジメで文化的な哲学系の団体みたいな雰囲気を装えるので、あまり宗教色を出しません。
勉強セミナーとか、大学の文化系サークルの会合みたいな体裁で、「生きる意味は世間一般にはない」という話を、壊れたレコードのように繰り返し再生します。
それで、そういう話を真剣にできて、マジメに何度もセミナーに参加するような人がカモです。
「私たちの話を聞き続ければ、生きる意味は分かる」などと主張して、会合への参加回数を増やしていきます。
それでまあ、「多数者の影響力」とか「社会的隔離」とか、色々あるのですが、親鸞会員たちに囲まれて過ごす時間が長いほど、彼らの話を受け入れやすくなるという感じみたいです。
(個人的には、親鸞会の勧誘ノウハウの解説としては、この本の内容がしっくりくると思っています)
そうして、
「生きる意味を教えたのが、仏教である」
「仏教にも色々あるけど、正しいのは親鸞の教えである」
「親鸞の教えを、正しく伝えているのは親鸞会だけである」
「生きる意味は、悟ることである」
「親鸞会の説法をずっと聞き続ければ、そのうち悟る」
……みたいな話を、一度にいうとドン引きされるので、少しずつ注入していきます。
※親鸞会では「悟る」という言い方はあまりしなくて、「信心決定」とか「後生の一大事の解決」とか、なんかそういう専門用語を使います。
と、『ケモノガタリ』は、YouTubeの動画をきっかけにして、「生きる意味」に興味を持った視聴者をこのルートに乗せるのが目的だと思われます。
(LINE登録から段階を踏んで、そのうち「勉強会のご案内」みたいな名目で、その実態は親鸞会のセミナーの誘い……てのが来たりすると思います)
なお、親鸞会の勧誘では、「なぜ生きるか」「人生の目的」というキーワードが頻出します。
このワードが付き合いの浅い人からバンバン飛んでくるとき、おそらくヤツは親鸞会です。
『歎異抄』
『ケモノガタリ』も表向きは、マジメでユーモアもある文化的な活動みたいな雰囲気を出そうとしています。
「ぼくらがケモノガタリをつくった理由」曰く、
ケモノガタリをつくった一番の理由は、これまでになかったアプローチで若年の方が哲学的な思考にふれる機会をもっと増やし、関連する古典書籍を手にとってもらうためです。
(中略)
ケモノガタリは、どう見ても動物にしか見えない3人の大学生とナゾの男性とのユニークな交流(トレンド性のある展開)を通して、「なぜ生きるか」という哲学的な思考が深まっていく流れを構成しています。
そして、そのヒントが記されてる日本の古典、具体的には歎異抄や平家物語などを紹介し、古典の読書機会を創れればと考えています。
と、「考えるヒントになる古典のひとつですよ」みたいな素振りで、さりげなく浄土真宗の本を出してくるのは、親鸞会にありがちです。
『歎異抄』は、親鸞の直弟子が書いたと言われている、「親鸞の教えはこうだった」みたいな仏教書。
親鸞会としては、『歎異抄』から、「なぜ生きるか? それは、親鸞会で説法を聞くためだったのだ」という話につなげられます。
親鸞会の教祖様も、こういう本を出しています。
この高森顕徹さんという人が、親鸞会のトップです。
そして、高森顕徹さんや、ほかの親鸞会関係者の本を出しているのが、「1万年堂出版」となります。
Wikipediaの「1万年堂出版」の項目では、「浄土真宗親鸞会の関連企業」と記述されています。
「幸福の科学出版」が幸福の科学の本を出しているように、「1万年堂出版」は親鸞会の本を出しているところ、という認識で困らないでしょう。
さて、「ぼくらがケモノガタリをつくった理由」の話に戻ると、
そのヒントが記されてる日本の古典、具体的には歎異抄や平家物語などを紹介し、古典の読書機会を創れればと考えています。
……というコレ、もちろん本命は『歎異抄』です。
『平家物語』は、冒頭の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」を、「無常だからこそ、生きる意味が大事」といった話のダシに少し使う程度です。
仏教書以外を混ぜることで、宗教色を薄めて、古典から学ぶ文化的な活動だという雰囲気を出しているのですね。
そして、「ぼくらがケモノガタリをつくった理由」は、こう続きます。
現在公開しているウェブ動画の反響次第では、1万年堂出版さんと共同でさまざまなコンテンツビジネス(ムック、書籍、グッズ、イベント、有料動画配信など)を展開していければと考えています!
てことで、『ケモノガタリ』には、1万年堂出版が関わっています。
それは、公式サイトにも明記されている通りで……。
まあ、これが書いてなくても、内容を見れば、隠しきれない親鸞会のオーラは出ています。
なお、コンテンツとして当てたいという話も、嘘ではないと思います。
(ムック、書籍、グッズ、イベント、有料動画配信など、さまざまな側面から親鸞会の勧誘へのきっかけ作りができるようになるので)
親鸞会のネット勧誘
また、YouTubeには、ほかにも親鸞会の勧誘動画があります。
たとえば、2020年1月に始まった「L大公式」というチャンネル。
「大学では学べない『生きる』を学ぶ学校」という触れ込み。
マジメで文化的な授業という体裁で、あまり宗教っぽく見えないようにして、うっすらと親鸞会的な教えを紹介しています。
『鬼滅の刃』の流行に便乗して、「古典に触れましょう」という体で、阿弥陀経(浄土真宗で重要な経典のひとつ)につなげるL大でした。
こちらも、動画説明文を見ると……。
★下記のURLからL大の【LINE公式アカウント】を友だち追加するとL大への入学完了です。
【LINE公式アカウント】
https://life.hare-media.com/lp/lptwit...
登録すると、
①YouTubeには未公開の、動画30本以上が視聴可能に
②限定のライブ配信勉強会に参加できる
③スピーカーの講師と、オンラインで個別に話が聞ける
④オフラインの各地でのオフ会の案内、参加
ができるようになります!
と、動画を見て「生きる」を考えたいと思ったマジメなカモを相手に、親鸞会の講師が話をしたり、親鸞会のセミナーを案内したり……。
「L大」も『ケモノガタリ』も、その辺は似たような感じで、ネットから親鸞会の勧誘ルートに乗せようとしているみたいです。
以上がこの記事の本編、『ケモノガタリ』のお話でした。
この先は「オマケ」で、いちおう関連のある話題ですが、お読みいただくほどでもありません。
オマケ:親鸞会とインターネット
それにしても、『ケモノガタリ』を見て思うのは、
「親鸞会も、マトモなコンテンツでネット勧誘できるようになったなあ」
という感慨です。
というのも、これまでの親鸞会は、あまりネットが得意ではなかったからです。
そこで、以下のオマケでは、「親鸞会とインターネット」というテーマで、少しだけ、昔のことを思い出してみます。
総合的なまとめではなく、断片的な思い出話となります。
90年代の親鸞会関連ホームページの思い出と、
00年代前半の親鸞会の素人感あふれるネット布教の思い出です。
くらぶWEST
さて、私が保存している中だと、親鸞会の会員さんのホームページでは、このあたりが古いです。
これは、1997年9月からのホームページ。(ネットアーカイブ)
「くらぶWESTのホームページへようこそ!!」というフォントの丸ゴシック指定などに時代を感じます。
更新日は「H11.09.09」
開設日は「Sept.10th'97」
元号と西暦すら統一しないのは、何のこだわりなのでしょうか?
ともあれ、「文化講座・勉強会のご案内」というのをクリックすると……。
仏教の講師の方をお招きして、「歎異抄」や「教行信証」といった親鸞聖人の著書など多方面の話題から、人生というものの本質に迫ります。
楽しくてためになる話が好評の講座です。
「仏教の講師」というのは、浄土真宗親鸞会で「講師」という立場の人たちのことです。
(大学で仏教を学んだ先生とか、そういう専門家ではありません)
と、楽しくてためになる「文化講座」「勉強会」といった名目で、宗教の勧誘セミナーを開催している感じです。
いちおう、「仏教の教えから人生を学んでいる」と明らかにしているだけマシですが……。
この方たちの「仏教」は、多方面な教養の中のひとつとかじゃなくて、ガッツリと本気の宗教なのですよね。
マンガで学ぶ仏教
そして、このホームページのウリは、「マンガで学ぶ仏教」です。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?