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電車が遅延したのは俺を生かすため
その日は、元日の昼前、だいたい10時か11時ぐらいの電車に乗っていたんだ、、
わかっていた…わかっていたんだ……
最近は年末クリスマスあたりからずっと遊び続けで、楽しいことばかりだったからどこかで大きな落ち込みが来るとは思っていたんだ。
初詣の約束に向かうために乗り込んだ一番後ろの車両は、誰もいない僕だけの特等席。
年明けに相応しい曲はあるかと考えながらBluetoothイヤホンをカバンから取り出そうとしている時だった。
キイイイイイイイ!!!!!!
…
ガタンッガタッ…
はっ…!
べちゃっ
トットットットッ
「えー急ブレーキを致しました。ご了承下さい。これから線路の点検に移ります。ご乗車中のお客様には大変お急ぎのところ申し訳ありませんが、しばらくお待ちください。えーただいま急ブレーキを……」
電車のアナウンスが先かブレーキ音が先かは分からなかった。
何が起こったかって?
これだけさ、たったこれだけ。
カバンを漁っていた俺は咄嗟に窓を見た。
窓を、見てしまったんだ。
俺が窓を視認するや否や何か赤黒いものが二つびちゃびちゃっと窓に張り付いた。
人の頭と腕だった。
これがゾーンというものだろうかと考えながら、その一瞬のうちにそれはもうじっくりとそのヒトだったものを観察していた。
切断面からは血が滴ろうとしており、少し焦げているような黒さがあった。
腕はキレイに切れた訳ではないようで、皮か肉かわからないが、ともかくそれが骨と一緒にぶらんとぶら下がっていた。
顔面はこちらを向いており鼻は豚のように窓ガラスに吸着し、歯茎があらわになった口から目を逸らすとその瞳、、いや眼球の1つが私のことを睨んでいた。
腕は風に煽られたのか何かの反射か、指先だけがトントンとガラスを叩いていた。
……
それでどうなったかって?
ただそれだけさ。
もちろん実際にはほんの一瞬の出来事。
ソイツと目があったことを脳みそが認識するより先にソイツは窓を転がり列車の後ろへ飛ばされていった。
だが俺には感じたんだ。
その口からは聞こえない断末魔が聞こえるようで、
その眼球には無限の地獄が映っているようだった。
正直なことを話そう。
俺は死ぬのが怖い。
電車にバラバラにされて死ぬ直前に見る景色が誰かの乗客の顔だってんなら俺はそんなのは遠慮しとくぜ。
「あるところにいたある自殺志願者は、他の自殺志願者のあまりのグロテスクさに怯え、生を握りしめましたとさ」
ってなんて滑稽な話だ。
笑えねえ、笑えねえなあ!
でも、、もうダメだ。
俺は死ぬのが怖くなっちまった。
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