
〇殺したくてたまらないんだ
君には分からないだろうな、僕の気持ちは。
殺したくてしょうがないヤツがいる僕の気持ちは。
そいつを殺せば今までの過ちは全て清算されるんだ。
ほどけなくなったしがらみや取り返しのつかない後悔、大切な人に対する懺悔とか。
そいつを殺せば今すぐにでも楽になれるんだ。
眠れない夜だとか、逃げても逃げても追ってくる日々、いつ終わるともしれない苦しみから全部。
そいつを殺す事が夢なんだ。
誰も見向きもしないそいつと誰にも振り向かれもしない僕がニュースに出るんだぜ。一世一代の大舞台で、言いたいこと全部ぶちまけてやる。
そいつを殺す妄想が楽しいんだ。
そいつを大切にしてた奴ら、そいつを罵った奴らの悲哀にまみれた顔を想像しただけでゾクゾクしてくるんだ。
そいつを早く殺さないといけないんだ。
また新たな間違いを起こしてしまう前に、後悔をこれ以上増やさないために。
そいつを早く殺さないといけないんだ。
殺す事に躊躇いが出てくる前に、そいつ自身に執着が湧いてしまう前に。
そいつを殺すのに失敗した。
僕は、むしろそいつに殺される勢いでベッドに押し倒された。3ヶ月間、ずっと。
そいつを殺すのに失敗した。
僕は3ヶ月たった後も幽閉された、この先誰も開けることを許さないだろう。僕は換気口からようやく顔が出せる程度で、外の様子を覗いている。僕はまだ伺っている、そいつを殺す機会を。
君には分からないだろうな、僕の気持ちは。
命に代えて殺したいヤツがいる僕の気持ちは。
いいなと思ったら応援しよう!
