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段々と日は長くなってきて今は、白夜の中に一人きりでいる

お久しぶりです、元気ですか。
人が手紙を書きたいと思うのは大抵、嬉しかった時か相手を心配するときなんだと、あなたのお陰でわかりましたよ。
お陰で趣味で貯めてた雑貨屋の便箋も嬉しげです。

あなたが顔を見せなくなってから、だとか
あなたの手紙が届かなくなってからとか、
そんな時代から進んで僕らの手元にはいつでも確証のない存在があるのに、そんな今になってもあなたが連絡をくれないのは、悲しくて、心配で、憤りがあります。そのあとに少しの後悔が。

話したいことがいっぱいあったんです。その殆どは秒針に押し流されてしまいました。
僕は商売を始めます。
このままでは生きていけないから、周りの助けを借りて、少しづつ地面から這い出ています。それはまるでゾンビみたい。
それはまるでゾンビみたい、と思っても、それにふふふと笑ってくれる唯一のあなたはいないんです。

僕はあなたと出会ってから人生が変わった、というより始まった気がします。
というより、人間の世界に連れ出してもらったのかもしれません。
快活さを宿すあなたの手にひかれて、色んな世界を知って、
せめて、僕もなにかと思って、僕が再び暗い世界に輪廻する時のために、
僕の思想を書き遺すことにしました。

あなたの夢をみました。
詳細はもう思い出せないですが、どうせ楽しかったのでしょう。
でなければ僕の今日がこんなにも薄曇っているはずがありません。
これは一方的な思いなのかもしれないと時たま思いますが、別にそれは悪いことでもあるまい、とも思います。
何かしてしまったのならもう取り返しはつかないのかもしれませんし、何かあったのなら、僕はあてにされる人ではなかったことです。
でもきっとあなたは強く生きているんだろ、そんな信頼があります。
あなたに憧れていました。

僕はこれからも書き遺していきます。
今生の別れの方が随分詩的ですが、きっとそういうものではないでしょう。どこかで縁があることを願っています。
「明日こそ死んでやる」の果てに「今日だけは生きる他ない」となっているので、きっとこれからもそうなのでしょう。

段々と生活はマシになってきて、同時に頭の中の影絵は照らされて消えていきます。そのうち書き遺すことも出来なくなって、その必要もなくなって、その暁にはあなたと話せる資格もなくなるのでしょう。
暗い話を遮るつもりはありません、あなたとだけこういう話ができるのです。

ただあなたと話したかっただけなのです。それだけ。
それが溢れてしまってこんなにも惨事になっています。
元気ならいいんです。元気じゃなくても誰かを頼れていればいいんです。
ひとときでもあなたと同じ街を歩けたこと、嬉しく思います。
もしいつか縁があればまた深夜のドライブでも、もしくはもつ鍋でも食べにいきましょう。
僕は強かに誰よりも生きます。

2025.1.8

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リズムの書き遺し
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