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白血病感染抄 Vol.7 CNSとテイコプラニン

白血病感染抄 Vol.7

「バンコマイシンかテイコプラニンか、それが問題だ。」

感染症内科医はテイコプラニンよりバンコマイシンを好む方が多いですが、実臨床では腎障害を気にしてバンコマイシンよりテイコプラニンを選択されることも多いのではないかと思います。

今回はテイコプラニンを使う上で、知っておくとよい論文かと思い、この症例報告をチョイスしました。

Kucerという抗菌薬の成書のTeicoplaninの項でも引用されている1997年の論文です。

◼️Teicoplanin resistance in Staphylococcus haemolyticus, developing during treatment.

J Antimicrob Chemother. 1997 Mar;39(3):438-9. 
PMID: 9096201.

症例は非ホジキンリンパ腫の34歳女性です。Hickmanカテーテルが挿入されています。

好中球減少期にStaphylococcus haemolyticusによるカテーテル関連血流感染症を起こし、カテーテルの抜去はせずに、バンコマイシンで治療が開始されます。しかし、アレルギー症状がでたために、すぐにテイコプラニンに変更されます。
このS.haemolyticusのTEIC MICは4 mg/Lでした。

テイコプラニンを一週間投与後、再度血液培養を採取すると、再度S.haemolyticusが陽性となりました。このS.haemolyticusのTEIC MICは>128 mg/Lに上昇しており、テイコプラニン耐性となっていました。

このようにCNSではテイコプラニンが耐性となることがあります。一方でバンコマイシンでは耐性になりにくいことが知られています。

下のTableでもCNSのMICはバンコマイシンは全て4以下ですが、テイコプラニンでは8以上の株を認めます。

Clin Microbiol Infect. 2008 Feb;14(2):116-23.より引用 一部改変

持続菌血症の時、細菌検査室は感受性結果を出さないことが多いと思います。CNSに対してテイコプラニンで治療されているときに持続菌血症が続くときは、感受性結果を見直すことを検討しましょう。

今回のCase reportは、S.haemolyticusの耐性化がポイントですが、治療のポイントはもうひとつあると思います。ソースコントロールです。
S.haemolyticusによるカテーテル関連血流感染症(CRBSI)ですので、菌のついているカテーテルを抜去することが重要です。それだけで持続菌血症が解除されることが多いです。

今後も症例から学べ、今後の感染症対応に役立つようなケースを白血病感染抄で扱っていきたいと思います。

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