天空力士伝 どすこい翔太!
「おーい!翔太ァ!!」「はっ、はいーっ!!」
闘天鳳部屋の朝は早い。未だ機動まわしを付けることを許されていない新弟子たちの朝の仕事は、激しい稽古に疲れた兄弟子たちの為のチャンコの支度である。
チャンコとは、ChunkAll…つまり全てをぶつ切りにぶった切った塊…を語源とする、航空力士たちの聖なるエネルギー源だ。鶏肉は飛べない鳥の肉なので、ゲンを担いでチャンコには使わない。出汁は勝つからカツオで取る。白菜にネギ、そして大量の豚バラ。豚バラの脂分は、上空での寒さに耐える身体を保つ為の貴重な脂肪層となる。そして大きな中華鍋で炒めるのは、闘天鳳部屋秘伝のにんにく味噌。たっぷり入ったにんにくと唐辛子が、身体を温めスタミナをつける。こうしていずれは美味しいチャンコ屋に…
「違う…!俺は、父さんみたいな立派な航空力士に…!」
見上げるは朝焼けの空。飛び立って帰らなかった父の背中を思い出す。
「翔太ァー!!!」「はーい!!!」
天川原 翔太…後の天空大横綱 大天空翔太。
今はまだ、翼を持たぬ雛鳥である。