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ヒップホップ禁止令からみる子どもの声を聞く行事運営

まさか一日に2度更新する日がくるとは。

昼頃、ヒップホップ禁止令をきっかけとして、マスメディアの報道で大変な目に遭う学校、しかもそのとき文科省は世論の方を向いているという構図を語ったわけなんですが、このnoteでヒップホップ禁止令で検索するとこうした意見はめちゃんこ異端なんですね。

何って、ほとんどが学校批判でした。

ヒップホップ禁止令を出した学校許すまじという批判です。何なら教育業界の人も一緒になって学校批判をしているようですが、その立場でこんなこというのかよーという印象でした。正直、頭を抱えてしまった。

まったく理解できないので、教育現場の人間としてもう一度反論しておこうかな。というわけです。

ヒップホップ禁止令は学校のせい?

まずヒップホップ禁止令の一件では、どうやら学校を悪者にするという文脈に多くの人が沿っているようです。その論旨は大きく2つ。

1つは学校による文化的差別。学校はヒップホップが悪い文化だから排除しようとしている、みたいな議論です。特にヒップホップ好きからその声が大きい。

もう1つは生徒の声をきかない学校許すまじという議論です。結果的に生徒が望む活動ができなかったから、生徒の声をきかないで勝手にヒップホップダンスを禁止したのだと決めつけているんですね。

ともに間違いだと思うので、順に反論していきましょう。

文化的な差別はしていない(と思うよ)

1つ目の、学校はヒップホップが悪い文化だから排除しようとしているみたいな議論から。

まずこんな視点ないと思います。

むしろヒップホップに精通している方なら先刻承知だと思いますが、学校がヒップホップを悪者と決めつけるほど、ヒップホップ文化は日本で影響力もってません。一時のヤンキー文化(暴走族)ほどには普及していません。目の敵にするほどのところまでいっていない。幸か不幸か。

私も20年以上ヒップホップ好きだし、現場(ライブのこと)に足を運んだりしてきたし、音楽もやっててトラック作ったりもしてきたので、それなりに語る資格はあると思うんですが、この手の的外れな批判は本当にやめたほうがいいと思います。

くどいようですが、なぜ禁止しようとしたのか、その細かい事情が記事程度ではわからないからです。勝手に脳内で作ったストーリーを現実にあてはめようとしているだけで、思い込みに近い状態で発言するのはやめたほうがいい。

たとえば私も文化祭のチーフを長年やってますので、どういうステージを許可するとかしないとか判断していますが、その判断基準は文化的な差別とかじゃないですよ。ただのリスク判断です。

「ステージでバク転したいんですけど」といわれたら、失敗して怪我されたら困るからやめろといいます。そういう話です。「文化祭でお化け屋敷やりたいんですけど」といわれたら、暗くするとトラブルが起こりがちだから気をつけろといいます。そういう話です。

ちなみに私は、お化け屋敷がずっと禁止されていた学校でお化け屋敷を解禁してきた実績があります。それも2つの高校で。ですが、それを禁止する学校の方針が間違っている(生徒の自由を認めないとは何事だあ!)とはまったく思いません。リスク管理上、妥当な判断だと思います。

私は厳密にいうとお化け屋敷を解禁したのではなくて、リスク管理が十分という証明が企画段階でできれば許可しているだけです。普通の発想ですよね。

前回の記事で書いたように、この手の調整は当事者間で話し合って決めればいいことです。まったくもって国会で話し合うことじゃない。

外野がごちゃごちゃいうと現場(ここでは渦中の中学校のこと)が困るだけです。

少なくとも、この学校長がヒップホップだから禁止(他のジャンルならいいけどヒップホップだけは絶対ダメ!)といっているのだとは思えません。もしそうだと思うなら被害妄想入ってますよ。

ダンス部の子たちがやりたかった種類のダンスが何らかの事情でできなくなっただけのことで、ヒップホップはダメだけど創作ダンスならいいとかそういう文化的風土からの判断とは思えない。(前回書いた通り、そう誤読させるキャッチーな記事であったことは認めますが。)

生徒の声をきいた上で判断している(と思うよ)

もう一つの生徒の声を聞かずに行事運営するんじゃねえという批判から。これも的外れで、これについては麹町中学校が公式に反論していますね。

現在、ダンス部の活動については、報道とは異なり、専門の指導者のもとヒップホップダンスを含め週2回の活動を実施しております(……)小集団での活動から、ダンス部として全員が主役となれる団体演技への挑戦をめざし、中学校体育連盟主催の公式大会を目指す方向性としました。大会における自由演技については、専門の指導者、顧問が生徒と意見を交わしながら創造していきます。(ヒップホップ系の動きを取り入れることもできますし、その他のスキルを生かすこともできます)(……)3年生部員から、最後までヒップホップダンスを練習したいとの希望がありましたので、その練習については、適任の指導者を探すとともに、練習を継続して実施しています。また、発表の機会を、引退前に集大成として設定することとしています。

https://news.goo.ne.jp/article/nikkansports/region/f-so-tp0-240613-202406130001015.html

なんか問題ありますかね。

結局、学校はいろんな事情を勘案して決めましたってことですよね。これについて生徒の声を聞いてないと決めつけるのはなぜなんでしょう。

工藤元校長の功罪かもしれません。彼だって行事運営について「全部生徒に投げればうまくいく」とまでは言っていないでしょう。基本は生徒に任せながら教員はサポートする方に回りましょうと提案しているだけで。

サポートする中で、「君たちはそれやりたいって言ってるけどやめろ」っていうことくらいあるでしょう。もし生徒の声をきいて行事運営したらすべてうまくいくと本気で考えているのだとしたら、その人は学校現場を知らなすぎる。

まあ私が記事を読んだ限りでは、そこまで強権的な校長ではなくて、ごく普通の判断だったんじゃないかなと推測しますけどね。それも推測にすぎませんが。

なんにせよ、この手の批判がどうして湧いてくるのか理解できません。

イベントの開催に際して、主催者側が判断をしたことで、納得いかないといって出演者から文句をいわれることはあるでしょう。それこそ現場(ヒップホップのライブのこと)でもあることでしょう。でも基本は当事者間で解決すべきことで、この件に関していえば、外野が文句をいっている側にのっかりすぎだろうと思いますね。

念のため強調しておきますが、行事運営に際して生徒主体にしていこうという方針そのものには賛成しています。実践もしています。

でも過激派みたいなのは生まれないでほしいなあと本気で思います。その過激派の声が大きくなったところで、きっと誰も得しないでしょうから。

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