334. Tavaszi szél (Moldvai népdal)
Moldva モルドヴァ
今回から取り上げるモルドヴァは、モルドヴァ共和国とは別の地域のことです。ルーマニア東北部、東カルパチア山脈の東の一帯にはモルドヴァのチャンゴーと呼ばれる人々が住んでいます。Gyimes ジメシュの回でも触れましたが、チャーンゴーというのはルーマニアに住むハンガリー語を話す少数民族のことで、ハンガリー人の中でも最も古いと言われている民族です。その起源はハンガリー建国前までさかのぼるとも言われており、名前の語源は「さまよう」「放浪する」に由来するという説が最も有力であるとされています。下の黄色の部分がモルドヴァ地域で、その東に隣接しているのがモルドヴァ共和国です(From Wikimedia Commons, the free media repository)。
悲劇的な歴史
彼らは長い歴史の中、政治的に翻弄されその犠牲者となってきました。独自の文化と言語を古くから持っていたにもかかわらず、ルーマニアの圧政によりハンガリー語が禁じられ、北に位置するブコヴィナなどではすでにハンガリー語を話すチャーンゴーはいないとまで言われているほどです。弾圧はハンガリー語禁止だけにとどまらず、書物や貴重な文書が焼却され、彼らの村に入ることさえ禁じられ、彼らもエルデーイのハンガリー人と接触することも許されず、陸の孤島というよりまるでその地域が消滅したような扱いを受けていました。
鉄のカーテンを打ち破ったクィーン
今回の歌はハンガリーでも有名な歌で日本語訳の楽譜もありますが、その楽譜に書かれているメロディーとは少し違っていますので、ご存知の方はその違いも楽しんでいただけると幸いです。この歌は1986年ロックバンドのクィーンがブダペシュトで行ったライブの中、サプライズで歌われました。会場を埋め尽くした8万人のファンに感謝を込めて「Queenから君たちに特別な歌を贈ろう」と言って原語で歌ったのです。歌詞を渡されたのは当日の午後だったそうで、カンペを見ながら歌ったヴォーカルのフレディー・マーキュリーの姿に、会場は大きな感動に包まれたと言います。1986年といえばまだソ連影響下で共産圏だった時代。そこで自由の象徴であるイギリスのロックバンドがライブを行うとのことは異例のこと。そのライブの中でこの曲を選び、歌ったことは、感動と共に大きな意味さえ感じずにはいられません。ライブの様子を収録されたDVDも発売されています。
Tavaszi szél
Tavaszi szél vizet áraszt, virágom, virágom
Tavaszi szél vizet áraszt, virágom, virágom.
春の風は水を溢れさせる。私の花よ、恋人よ
春の風は水を溢れさせる。私の花よ、恋人よ
発音動画。パスワードは abc です。
https://vimeo.com/511831978
歌です。パスワードは同じく abc。
https://vimeo.com/511832305
歌:ÍGY TEDD RÁ! - "Lenvirág" より
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?