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【2025年最新】半導体製造装置メーカー動向:世界シェア・最新技術と日本市場

半導体製造装置メーカーの近年の動向について調査しました!

調査日:2025/02/23

導入

半導体製造装置業界は、半導体チップの需要拡大を支える要として極めて重要な産業分野である。特に近年はAIや自動車分野の成長に伴い、先端半導体への需要が急増し、それに応じて製造装置メーカーへの注目も高まっている。日本市場においても、国内大手の東京エレクトロンをはじめとする装置メーカーの動向や世界シェア、技術革新が大きく報じられており、業界関係者や就職希望者からも関心が寄せられている。

半導体製造装置業界の全体像

まず、世界の半導体製造装置市場規模と世界シェアについて概観する。2021年は半導体不足を背景に設備投資が活発化し、市場は大きく拡大した。2022年には世界の半導体製造装置販売額が約1,076億ドルに達し、前年(約1,026億ドル)から5%成長して過去最高を更新した。主要顧客である半導体メーカー各社が生産能力増強に動いた結果であり、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)や自動車向けなどの需要拡大が牽引役となった。地域別では、中国が3年連続で最大市場となり(2022年: 約283億ドル)、次いで台湾(約268億ドル)、韓国(約215億ドル)とアジア勢が上位を占めている。一方で北米(米国)や欧州への装置販売も急増しており、2022年は欧州が前年比+93%と突出した伸びを示し、米国も+38%増となった。この背景には各国政府が自国の半導体生産能力拡充に投資を進めたことも影響している。 2023年には半導体景気の踊り場に差し掛かり、一部のメモリ分野を中心に投資が減速している。一方で、ある予測によれば2023年の半導体製造装置市場規模は約1,000億ドルと2022年から6.1%減少する見込みだが、2024年以降は再び成長軌道に戻り、2025年には1,240億ドル規模と再度過去最大を更新するとの見方が示されている。つまり短期的なサイクルの波はあるものの、中長期的には半導体需要の伸びに支えられて装置市場も拡大が続く見通しである。実際、2023年後半からはAIブームによる先端ロジックやパッケージングへの新規投資計画が相次ぎ、市場回復の兆しが見られる。

主要メーカーの動向

国内メーカーの動向:東京エレクトロンなど

半導体製造装置分野では、日本企業も大きな存在感を示している。代表的な国内メーカーである東京エレクトロン(TEL)は、装置売上高ランキングで常に上位に位置し、2022年には売上高で世界4位にランクインした。TELはフォトレジスト塗布・現像装置やエッチング装置など幅広い製品ラインナップを持ち、国内外の最先端工場で採用されている。同社の売上の約8割強は海外市場から上がっており、特にアジアの顧客比率が高まっている。 2021〜2022年にかけて半導体メーカー各社の積極的な設備投資を追い風に、東京エレクトロンは2023年3月期に過去最高となる2.2兆円超の売上高を記録したが、その後メモリ向け需要減速の影響で2024年3月期は17%の減収となった。しかし同社は研究開発投資を拡大しており、次世代の2nmプロセスや3D構造デバイス向け装置開発にも注力している。 日本勢では他にも、半導体テスト装置で世界最大手のアドバンテスト、洗浄装置に強みを持つSCREENホールディングス、成膜装置のKOKUSAI ELECTRIC(旧日立国際電気)などがグローバル市場で存在感を示している。特にKOKUSAI ELECTRICは2023年に東京証券取引所へ新規上場し、ウエハーを一括処理できるバッチ式成膜技術で世界トップクラスのシェアを持つ企業として注目を集めた。同社は米国アプライドマテリアルズから買収提案を受けた経緯もあり、その技術力の高さがうかがえる。これら国内メーカーは、日本政府の後押しも受けながら、海外顧客向けのサービス体制強化や他企業との提携を進めている。

海外メーカーの動向:ASML、Applied Materials、Lam Research

海外勢では、オランダのASMLと米国のApplied Materials、Lam Researchが特に重要なプレイヤーである。Applied Materials(アプライドマテリアルズ)は装置売上高で世界首位の企業で、成膜・エッチング・成型など幅広いプロセス装置を提供している。同社はシリコンバレーに業界最大級のクリーンルームを備えた新研究開発センターを開設し、顧客と共同で次世代プロセスを試作するラインを構築するという野心的な計画を進めている。 ASMLは半導体リソグラフィ(露光装置)の世界的独占企業であり、EUV露光装置の需要拡大に対応するため生産能力を増強中である。2022年〜2023年にかけて同社の業績は大きく伸び、2023年にはEUV装置を前年より13台多い53台出荷し、売上高は前年比30%増の約2,760億ユーロを記録して過去最高を更新した。2024年には次世代の高NA(開口数)EUV露光装置の出荷開始も予定されており、最先端プロセスの微細化を支えるキーサプライヤーとして今後も成長が見込まれている。 Lam Research(ラムリサーチ)は主にエッチング(微細加工)装置で強みを持ち、特に先端ロジックや3D NANDフラッシュメモリ向けのドライエッチング装置で大きな市場シェアを獲得している。同社も近年の半導体需要拡大に伴い売上高を伸ばし、世界ランキングで常にトップ3内に位置している。 これら主要企業以外にも、米国のKLA(計測・検査装置)、Teradyne(テスト装置)、オランダのASM International(成膜装置)などが上位10社に名を連ねる。2022年の売上トップ10社の構成比を見ると、米国企業4社・日本企業4社・欧州(オランダ)企業2社となっている。ただし上位企業の売上高合計の国別シェアでは米国勢が約43%を占め、オランダ勢(ASML等)が約37%、日本勢は約19%にとどまる。また半導体製造装置市場全体で見ても、2022年時点で本社所在地ベースのシェアは米国約50%、日本約23%、欧州約21%であり、日本勢は2010年代後半以降シェアを落としている。このように、グローバルでは米国・欧州企業が強みを持つ分野が多く、日本メーカーは選択と集中によって競争力の高い装置領域を維持・拡大する戦略が求められる。

最新技術トレンド

半導体製造装置業界では、技術革新のスピードが非常に速く、先端プロセス技術に対応するための新装置開発が盛んである。代表例がEUVリソグラフィ(極端紫外線リソグラフィ)技術であり、7nm以降の微細化に不可欠な露光手法として確立している。ASMLのEUV露光装置は、台湾TSMCや韓国Samsungによる5nm/3nm世代の量産に投入され、他社が参入困難な独占的市場となっている。さらに次世代技術として、ASMLは開口数を拡大した高NA EUV装置を2024年から研究機関や先行顧客向けに提供開始する予定であり、2nm以下のプロセス実現に向けた取り組みが進められている。 前工程では他にも、ゲートオールアラウンド(GAA)トランジスタなど新しいトランジスタ構造への移行に伴い、原子層堆積(ALD)装置や高アスペクト比エッチング装置の重要性が増している。Lam ResearchやTEL、ASMなどは、ナノシート構造を形成するためのエッチング・成膜プロセスを精密に制御できる装置開発に注力している。メモリ分野でも、3D NANDフラッシュの層数増大(200層超)に対応するため、高速かつ均一な加工を可能にする新型エッチング装置や成膜装置が求められている。 一方、後工程(組立・パッケージング)でも技術トレンドが加速している。高度なチップレット実装や3次元積層を実現する先端パッケージ技術が注目され、Applied Materialsや東京エレクトロンは高密度実装向けの新装置開発やプロセスソリューション提案を強化している。特にAIプロセッサ向けの高性能パッケージ需要の増加により、従来以上に前工程と後工程の垣根を越えたトータルな装置技術の革新が求められている。

日本国内の市場動向・課題

日本国内に目を向けると、半導体製造装置メーカー各社は政府の支援策も追い風に、研究開発や生産能力の増強を図っている。経済産業省は「半導体・デジタル産業戦略」に基づき、先端半導体製造基盤の国内構築に向けた支援を行っており、装置分野でも人材育成や企業間連携プロジェクトが推進されている。例えば、次世代2nm世代の量産技術開発を目的に設立されたRapidusには、東京エレクトロンを含む国内製造装置メーカーも協力しており、最先端ロジック半導体製造ラインの国産化に向けた取り組みが進められている。 また、日本メーカーは海外展開の面でも積極的である。東京エレクトロンをはじめ、日本勢の売上の大半は海外顧客によるものであり、中国・台湾・北米・欧州の大手半導体企業の製造ラインに装置を納入している。一方で、近年は地政学リスクにも直面している。米国の対中輸出規制強化を受け、日本政府も先端半導体製造装置の輸出管理を強化する措置を2023年に導入し、中国向けの一部装置販売に制限がかかった。この影響により、中国市場で存在感のある東京エレクトロンやSCREENなど日本企業にも不透明感が生じている。 さらに、日本企業のシェア低下傾向も課題である。世界市場全体の中で日本メーカーの占める割合は、ピーク時の1990年頃には約5割に達していたが、2020年代には2割程度まで低下している。要因として、成長著しい分野(EUV装置や先端メモリ向け装置など)で欧米勢にリードを許したことや、装置開発に必要な巨額の投資・人材確保で後手に回ったことが挙げられる。このため国としても危機感を強めており、国内装置メーカーの研究開発補助や、大学・研究機関との連携による技術革新支援などを通じて競争力維持を図っている。

投資動向と業界の採用状況

半導体製造装置メーカー各社の投資動向にも注目が必要である。市場好調時には各企業とも生産設備や研究開発への積極投資を行い、新製品開発や増産体制の整備を進める。実際、ある欧州企業は需要に応じて国内の生産拠点を拡張し、東京エレクトロンも日本各地で新工場建設やクリーンルームの増強を行ってきた。大手米国企業も大規模なR&Dセンター開設や将来需要に備えた設備投資を強化している。 一方、業界全体の設備投資額は半導体メーカーの動向に左右されるため、2023年は一時的に調整局面となったが、中長期では次の需要拡大に向けた投資計画が維持されている。 人材面では、高度な専門知識を持つエンジニアの確保が成長の鍵となる。各社とも採用を強化しており、新卒・中途問わず幅広い分野の技術者を募集している。装置メーカー各社は収益性が高いため給与水準も製造業平均を大きく上回る。例えば東京エレクトロンの平均年間給与は1,200万円台後半に達しており、この水準は国内製造業の中でもトップクラスである。30歳代でも年収700〜800万円台に達する社員が多いとされ、グローバル展開を行う企業が多いため英語力や海外経験を持つ人材も重宝されている。半導体技術者の人材不足が叫ばれる中、社内教育や大学との連携による人材育成にも注力し、競争力維持のために人材確保を進めている。

今後の展望

半導体製造装置業界は、今後も技術革新と市場拡大が続くと考えられる。AI、IoT、自動運転など新たな応用分野が半導体需要を押し上げ、先端ロジックからパワー半導体・センサーまで幅広い分野で製造装置の需要が増大していく見通しである。特にAI関連では最新GPUやAIチップ向けの生産能力拡張が各国で進んでおり、前工程・後工程を問わず装置メーカーにとって大きなビジネスチャンスとなる。 技術面ではEUVの次を見据えたリソグラフィ技術や、さらなる微細加工を可能にするプロセス制御技術のほか、生産効率を飛躍的に高めるスマートマニュファクチャリング(製造現場でのAI活用やデータ分析)の導入が加速すると予想される。こうした変化に対応するため、装置メーカー各社は研究開発への投資と顧客との協働を一層深めていく必要がある。 市場予測によれば2024〜2025年にかけて装置需要が回復・拡大するとされており、中長期的な成長トレンドは不変とみられる。ただし半導体市場特有の景気変動サイクルには留意が必要であり、メーカー各社には需要変動に柔軟に対応できる経営戦略が求められる。今後も装置メーカーの動向は要注目であり、業界関係者は技術ロードマップと市場動向の両面を注視してチャンスを逃さないことが重要である。

まとめ・結論

半導体製造装置メーカーの過去3年間の動向を振り返ると、2022年に市場規模が過去最大を記録し、その後は一時的な調整を経て再び成長が見込まれる状況である。東京エレクトロンやASML、Applied Materials、Lam Researchといった主要企業はいずれも自社の強みを活かし、新技術開発や設備投資、人材確保に注力してきた。世界シェアの面では日本勢の相対的低下が課題とされる一方、特定分野での高い競争力や新興企業の台頭も見られる。EUVリソグラフィを筆頭とする先端技術が装置開発を牽引し、AIや自動車分野での半導体需要拡大が市場の追い風となっている。 今後もこの業界は半導体産業の発展に欠かせない存在であり、メーカー各社の戦略や技術革新に注目することが重要である。需要の波に左右されやすい半導体業界ではあるが、中長期的には成長余地が大きく、国内外の主要プレイヤーが引き続き積極的な投資と開発を進める見込みである。

参考文献

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