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賛否両論!『2分の1の魔法』賛否を解説ネタバレレビュー

コンニチワ!サブカルおじさんTISM!です。

 今日は8/21にようやく公開されたディズニー/ピクサー最新作『2分の1の魔法』をレビューします!見る予定という人も、もう見たという人もおそらく多いだろう作品ですので、映画の紹介はすっ飛ばして、見た人に向けてのネタバレレビューをします。まだ見てない人は気をつけてくださいね。

 いきなり結論を言うと、ピクサー最新作ということで僕の期待しすぎもあるのですが、その期待に届く作品ではありませんでした。とはいえテーマに沿った落とし所や、細かな伏線回収、髪の毛の表現や魔法描写など、しっかり平均点以上には面白く仕上げるところはさすがピクサー。決して駄作ではありません。良かったところから書きますね。

フード描写は◎

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 冒頭、主人公の弟くん、イアンは朝食を食べようとしますが、なかなか食べられません。結果、学校の行きに買い食いする選択をして、家族と食事を共にすることはありませんでした。ここでは誕生日のために食事を作ってくれている母親ローリーや、イアンの内なる勇気を認めている兄バーリーに、心を開けていない、又は意思疎通がうまくいってない様子がよく描けています。

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そしてついにバーリーと共にスナック菓子を食べるのは、いよいよ冒険のゴールかと思えるクライマックス手前です。ここまで道のりの中でようやく兄弟の意思疎通、信頼関係ができたときなのです。ここはお見事。

細かな伏線回収

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ローリーが冒頭、ダイエットビデオに合わせて踏んでいるステップがクライマックスのドラゴン戦で活きてきます。『カメラを止めるな!』の「ポンッ」を思い出しました。こういう細かな伏線回収は無数にあって、さすがピクサーと唸らされます。

マクガフィンと元に戻る冒険ルート

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「不死鳥の石」というわかりやすいマクガフィンが登場します。それを手にする時イアンは、バーリーこそが自分の求めていた「父」なる存在であったことに気づきます。そして「不死鳥の石」は、大回りしたけれど実は身近にあったのだ、というイアンにとっての「父」なる存在と見事に重なる物語になっていて、とてもよくできた脚本だと思います。

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お次は良くなかったところを書きます。

魔法を使える能力

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なぜイアンは魔法が使えて、バーリーは使えないのでしょう?これでは持って生まれた秘めた能力のある主人公が、その能力に目覚める話に見えてしまいます。もちろんそのための努力は描かれますが、これでは特別な人物の特別なお話になってしまい、テーマである兄弟愛や家族愛が普遍的な話に見えません。せっかくRPG風にしたのならバーリーには他の能力がある、と描けたのではないでしょうか?

能力の退化だと思えるような描写もありますが、それならばイアンだけが特別であるという理由がありません。そもそもお父さんは、魔法が廃れた世界なのになぜ杖と石を持っていて、なぜ魔法を使ってこなかったのか。特に説明がありません。

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また、フェアリーやマンティコアの飛ぶ能力や、ケンタウロスの走る能力といった、種族特有の能力に目覚める様子が描かれます。エルフ特有の能力は魔法というわけでもなさそうだということは、あらゆる種族が混在する教室で魔法の授業をしているエピローグからも明らかです。では主人公たるエルフ特有の能力は?と考えてしまいます。

学校生活の成功

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イアンは自信が無く、友達もいません。誕生パーティーに同級生を誘う時には、何度もリハーサルをして、ようやく声をかけられても自分の名前を知っていたというだけで嬉しくなる始末。そんなイアンが最後には自信をつけて学校生活も成功していくわけですが、理由が魔法になってしまっています。イアンの変化によって成功したのではなく、魔法が使えるという、持って生まれたとびきりスペシャルな能力による成功に見えてしまっています。エピローグの魔法の授業のせいです。別の描き方のほうがよかったのでは?

道順の決め方が運任せすぎる

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目的地までの道順を、高速道路がいいか獣道がいいかの選択をする場面が出てきますが、獣道を選ぶ理由が「冒険とはそういうもの」という理由になってない理由です。回り道をした事でゴールへのルートを見つけるわけですが、ただの結果オーライです。どう考えてもバーリーを見直すようなことではありません。「不死鳥の石」が隠された時代に高速道路はないのだ、としっかり説明すべきです。あの理由では「じゃあ車はいいの?都合のいい話ですね」とツッコミたくなってしまいます。

まとめ

長々と書きましたが、良いところに比べて、良くなかったところは物語の本質を揺るがしてしまうレベルのもので、決して重箱の隅とは言えない決定的な欠点です。

冒頭以降人魚が出てこないとか、全力少年がどうとか、近藤春菜がキツいとか、そんなことは些細なこと。ちょっと取り戻せないレベルの欠点だと僕には感じられました。よくできているところも沢山あっただけに残念です。

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12月公開予定の『ソウルフル・ワールド』は、かの大大大傑作『インサイド・ヘッド』の姉妹作品なのかなと思いますが、少し不安になってきました。

追記

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「下半身の父は音が聞こえない設定なのに音楽に合わせて踊るとは」なんて感想をチラホラ見ますが、音楽の振動が伝わって踊ったというのがわかるセリフがありますから、ギリギリセーフかなと思います。

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