エストニアへ単身留学 日本人が当時ほとんどいないエストニアで5年生活した
最近飲み屋で久々にエストニアにいた頃について長く話す機会があり、いろいろ思い出したので、簡単にまたまとめておきます。
過去記事
エストニアで過ごした4年を振り返って……
エストニアに行った動機
2016年から2021年の間、今でこそ世界中に「電子国家」として世界に名を馳せた「エストニア」という東欧の小国で、凍てつく寒さの中、私は一人で生活していました。
日本で大学を卒業後、どこかへ就職したいという気持ちは鮮少であり、当時テニスコーチをしていた私は、大学卒業後もそのままテニスコーチとして仕事ができればいいと思っていました。しかし、「テニスコーチになるために大学に行かせたわけでない」と親に反対されてしまいます。親としては公務員など、安定した職業と言われる職に就いて欲しかったようですが、好奇心旺盛な私にとっては、ゾッとしない仕事という感じがしていました。そこで、大学では物理学専攻で、研究室にも所属し、研究職にも興味が湧いていたため、大学院に進学するのも悪くないと、大学院進学を決意します。
立ちはだかったのは学費。私にはお金があまりなかったので、日本の大学の高い学費を支払うことができそうにもありませんでした。一方で、海外には学費が無料の大学があることをどこかで耳にしていたため、その情報を頼りに、ネットでリサーチをしたり、大使館に行って話を聞いたりと、情報収集を始めます。
その中で、たどり着いた国がエストニアでした。当時エストニアを知る日本人は、周囲に一人としていませんでした。私が留学した頃は、エストニア(タリン工科大学)は学費が無料。しかも美女が多いと聞く。これで行かない理由が無い男がどこにいると言うのでしょうか。そこから大学4年で卒業研究をする傍ら、当時TOEIC405点の私でしたが、英会話や海外大学への入学準備を独学で進め、見事合格し、エストニアへ渡りました。
エストニアでの生活
エストニアの首都タリンに位置するタリン工科大学でApplied Scienceで修士号を2018年に取得しました。応用物理学を専攻していましたが、修士研究として選んだのは経済物理学というジャンルの研究室で、複雑ネットワークを文学に応用し、小説の数値解析を行なっていました。著者の文章の傾向などを数学的に分析する、みたいなことです。
今でこそITが進んでいるイメージがエストニアは強いですが、当時の私はITに興味は全くありませんでした。テニスラケットの握り方は知っていても、女性の手の握りか……パソコンの使い方もよくわかってないレベルの知識です。とはいえ、タリン工科大学は、大学キャンパス内にスタートアップオフィスが点在し、Skypeのエストニアメインオフィスもキャンパス内にあります。授業は全ての学部で、Business&Entrepreneurshipが必修で、ITに関するイベントは毎日行われています。
そんな中で生活をしていると、プログラミングやAI、VRなどへ興味が強くなっていきます。授業や研究とは別にプログラミングやITについて独学し、Hackathonをはじめとしたさまざまなイベントに出場したり、投資家の前でピッチをしてきました。
大学内にスタートアップをはじめとした企業が点在しており、授業では成功したビジネスマンが教団を取ったり、投資家が大学のイベントに顔を出し審査をしたり、「リサーチ、スタートアップ、マーケット」がシームレスになっているのがエストニアの特徴だと思います。こうした世界で5年も生活していると、日本や世界に対する見方が徐々に変わっていったような気がします。
エストニアでの生活は、全く派手ではありません。
電子国家のイメージから私宛にも「授業で紙は使われてないのですよね?」「配達はロボットがしているんですか?」など、まるでSF映画に出てくる世界を想像されている方からのメッセージが多いです。
しかし、日本と比べてむしろ遊ぶところは少ないですし、街やインフラについては遅れている部分も多いです。大学の期末試験も紙を使いますし、配達は人が行なっています。ただ、eレジデンシーという国民IDカード(日本のマイナンバーはこれを参考にしている)が配布されているため、税の申請や不動産、中古車取引、学生証、口座開設、起業といったことを数分で行うことが可能なのです。どちらかというと、行政と生活、企業の連携がうまくいっている国という印象です。
私はCNET様にて連載を書いているので、こちらについて詳しいことは私の連載をご覧ください。=> https://japan.cnet.com/sp/estonia/
5年も住んでおり、エストニアを中心としたヨーロッパでの生活は、他の人が全くしないような体験をし続けていたため、ここでは書ききれないほどの話がまだまだあります。もし、どこかでお会いすることがありましたら、飲みながらでも話しましょう。
【自己紹介】
Steins Inc. 代表取締役 (http://steins.works/)
エストニアの国立大学タリン工科大学物理学修士修了。大学院では文学の数値解析の研究。VRでの教育やVR美術館、Web開発事業を行ってきた。
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