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その 素敵な私設図書館は・・・

私設図書館シャッツキステについて

東京は秋葉原にある、メイドが営む私設図書館シャッツキステ。

店名の『シャッツキステ』は、ドイツ語で『宝箱』という意味。公式サイトの言葉を借りれば、ここシャッツキステは、〔訪れた皆様に 『ドキドキするもの、ワクワクするもの』を提供することを目的とした私設図書館〕です。

この場所を唯一無二たらしめているのは、何と言っても〔クラシカルなメイド達が給仕する紅茶を飲みながら、 時に熱く、時に賑やかに『秋葉原カルチャー』を体験〕できることでしょう。『秋葉原カルチャー』とは、〔漫画やアニメ・ゲームをはじめ、ジャンルを問わず「一日中でもその趣味について語れること」〕を指します。つまり、自分の『好き』なことであるならば、何でもOKなのです!

私なりの解釈でシャッツキステという場所を再構築してあえて説明するならば、個性豊かなメイド達の趣味全開な蔵書やボードゲームを楽しめる場所であり、メイドお手製のお料理やお菓子でほっと一息つけるカフェでもある。そして何より上述のとおり、メイドと旅人(シャッツキステにおいて、お客さんの意)のたくさんの『好き』が集まり、交錯し、発信されてゆく場所です。

多くの旅人にとってそうであるように、私にとってもシャッツキステは、かけがえのない、唯一無二の大好きな場所です。

2020年11月15日(日)、私設図書館シャッツキステは、14年間の歴史に幕を下ろしました。2020年、世界中に混乱や恐怖、悲しみを撒き散らした、新型コロナウイルス。その影響は、とうとう私の大好きな場所にも及んでしまいました。閉館に関する詳しい経緯は、シャッツの総メイド長兼店主である、有井エリスさんが下記のとおり記しています。

まずはこの場にて、14年間という長きに渡りシャッツを運営して来られたエリスさんをはじめ、在籍された全てのメイドさんに対して、最上級の感謝を伝えたいと思います。素敵な居場所を提供してくださり、本当にありがとうございました。そして、本当にお疲れ様でした。

来訪記録

さて、ここからはこれまでにシャッツを訪れた記録を、たくさんの宝物のような想い出とともに記していきたいと思います。

【2017年11月11日(土)】

私が初めてシャッツキステの扉を開けた日。ほぼ、3年前ですね。この日は友人2人と訪れたのですが、そのうちの1人が元々この場所を知っていて、「クラシカルなメイドさん最高!」という認識を共有できるはず!と、全力でお勧めしてくれたのでした。入館すると、早速メイドさんがお出迎え。窓際のテーブル席にお通しされました。初めてのお店ということで、少しソワソワしながら席に着いたことを今でも覚えています。メイドさんからシャッツの利用方法の説明を受け、最初の紅茶が運ばれてきます。(ちなみにこの紅茶、お代わり自由なんです。しかも、自分でお代わりを告げるよりも先に、メイドさんが絶妙なタイミングで注ぎに来てくれます。無限列車ならぬ無限紅茶!シャッツに来たらずっと居たくなってしまう、魔法の一つです)この時は確か……クッキーを注文したのでした。紅茶はオーソドックスながらも飽きが来なく、とても飲みやすいお味。クッキーも手作り感溢れる優しい味で、無限紅茶とよく合います。窓際席の上方には本棚があり、その日は3人で世界のお菓子図鑑を眺めつつ過ごしたのを覚えています。シュトレンやザッハトルテ、他にも、残念ながらもう私の記憶領域には残っていないながらも、世界中のまだ見ぬお菓子達を眺めては、あれこれ会話が弾みます。そうこうしていると、中央の作業台―ここではしばしばメイドさんが、コースター等を作るためレース編みをしています―で、何やらメイドさん同士が楽しげなやり取りをしています。この日はイタズラ好きなシオンさんというメイドさんがいらっしゃったので、きっとシオンさんお得意のイタズラが発動していたのでしょう。私達3人とも、その光景を微笑ましく眺めておりました。やがて頃合いとなり、退店の運びに。紛うことなき宝物のような時間を過ごすことができ、すっかりこの場所が気に入ってしまった私は、会計の際にポイントカードの発行をお願いしました。ポイントカードには、メイドさんが毎回手書きで名前やメッセージ、イラスト等を添えてくれるのですが、このとき私のポイントカードに最初のイラストと名前を添えてくれたのが、シオンさんだったのでした。

【2018年1月6日(土)】

2度目の来訪はそれから約2か月後。今度は私が友人を誘う形で、シャッツキステの扉を開けたのでした。そのとき通された席は、先ほど記述した作業台を挟んで窓際席のちょうど反対側の壁側席。このお店、面積自体は広くはないのですが、如何せん様々な蔵書や雑貨や動物たち―『動物』については後述します―が所狭しと置かれているため、座る席によって店内の見え方ががらりと変わるのも趣があります。2度目の来訪ということももちろんありましたが、私が壁際族ということもあり、初回来館時よりも落ち着いていた記憶があります。(笑) 当記事冒頭でも記述しましたが、シャッツには沢山の蔵書のみならず、旅人が自由に遊べるようにボードゲームもいくつか置いてあります。このときは2人での来訪だったので、2人で遊べる『ガイスター』というボドゲをチョイス。良いオバケと悪いオバケの陣営に分かれて、先に相手側の領土に辿り着くか、相手のオバケを取りきると勝利!というゲームです。前回同様に無限紅茶を頂きながらゲームに興じたあの時間も、確かな宝物となって、私の胸の中の宝箱にしまってあります。

【2018年10月28日(日)】

3回目の来訪は……少し間が空いてしまいましたね。このときも私がお相手を誘う形で、シャッツキステの扉を開けました。この日は、秋葉原のゲーマーズで行われるイベントに参加するためこの地を訪れ、イベント終了後、大学時代から仲良くさせていただいている先輩と合流したのでした。その後、どこかゆっくりオタク話ができる場所に行こう、ということでシャッツを提案。先輩も興味を示してくれたため、早速足を運ぶことに。そうしてこれまでと同様に扉を開けようとしたところ、その日はシャッツキステが怪しげな研究所に姿を変え、そこで作られた製品発表会を行っているというではありませんか!そういえばこの日は、ハロウィン(10月31日)に一番近い日曜日。納得です。シャッツキステではこのように、時節のイベントはもちろん、メイドさんが企画したイベント、著名な作品や作家さんとのコラボを数多く行ってきたのも特徴の一つです。ちなみに当時のイベント紹介記事がこちら。

この日1日のためだけに、これほどまでに趣向を凝らした企画を考え、すさまじい熱量とともに実行に移してしまう。そんなところも私の大好きなシャッツの魅力の一つです。(この部分に惹かれるのは、私が大学生だった頃、たった数日のための準備に1年間を費やすような経験を幾度かしてきたからかもしれません。)それにしても、このイベントも懐かしいなぁ……。これまで2回の雰囲気と打って変わって怪しい研究所に成り果てたシャッツに若干戸惑いつつも(笑)、せっかく偶然巡り合えた年に一度のハロウィンイベント。楽しまないわけにはいきません!そうと決まればと、早速『SK研究所特製プレート』と『SK研究所特製ドリンク』を頂きました。ドリンクは3種のシロップから2種を選び、メイドもとい研究員さんが調合してくれるのですが、確かこのときは賢さと強さを選んだんでしたっけ。そういえばあれから風邪を引くことが減ったようなそうでもないような……? プレートは見た目こそめちゃくちゃに怪しいんですけど、お味はちゃーんとシャッツキステしていました(謎表現)。特に安全加工肉が美味しかったなぁ…何のお肉だったんだろうなぁ…。何はともあれ、研究所の雰囲気をとくと味わいつつ、オタク話に花も咲かせつつ、な素敵なひと時を過ごしたのでした。この想い出も、大事な大事な宝物。

【2020年10月30日(金)】

正直、今でも悔やんでいます。「どうしてもっと通わなかったのだろう」、「せめて閉館が決まってから、なぜもっと早く訪れなかったのだろう」と。そんな思いが、今も頭の中でぐるぐると駆け巡っています。そうした後悔が一気に心に押し寄せたきっかけの日であり、自分の中のシャッツキステという場所の存在の大切さに、改めて気づかされた日でもありました。シャッツキステが閉館のお知らせを発表したのは、仄かに夏の気配の香り始めた6月24日(水)のこと。私事で恐縮なのですが、この頃にちょうど病気休暇から職場復帰をし、「心機一転して頑張るぞ!」と息巻いていた時期でもあっただけに、尚の事ショックが大きかったように思います。閉館が発表された当日夜、そういえばこんなことを呟いていましたね。

唯一無二で居心地のいい、素敵な空間でした。あったかい想い出たちは今もこの胸の中に確かに。お店を閉じてしまうまでに、必ずまた訪れようと思います。 #シャッツキステの思い出

あの日の私へ。ちゃんと有言実行しましたよ。・・・さて、後悔ばかりを綴っていてもいけませんね。10月30日(金)に来訪したときの想い出を再び振り返るとしましょう。この日は元々通院のために有給休暇を取っていたのですが、当初の予定は午前中早々に済んでしまいました。「よし、これは行ける」と思ったときには既に足が動いているタイプであるところの私。いったん自宅に戻り簡単な朝食兼昼食を摂った後、あの日の自分との約束を果たすべく、既に足はシャッツへと向かっていたのでした。なお、当時の自分のツイートを読み返してみると、この日の数日前からシャッツに行く機会を虎視眈々と伺っていたようですね。もうここのところ感情がいつみても波乱万丈なので、たった数週間前の自分の思考を思い返すのもTwitter頼りです。(ちなみにこの頃シャッツキステは、3密を避ける意味で館内の座席数を通常の30席から6~10席へと減らし、さらに整理券を発行して入館案内を行う方式を取っていました。午前11時45分から、1日あたり約30枚の整理券の配布を行い、開館時刻の午後12時頃には整理券が全て捌けてしまうような状況でした。)さて、フットワークは軽いが酷くギリギリ癖のあるところの私。秋葉原駅に着いたのが11時37分。やばいです。ギリギリです。ここ最近でも1,2を争うほどの全力ダッシュをかまし、何とか整理券配布に間に合うことができました。(ちなみにちなみに。整理券を求めて並ばれる旅人の人数が、1日に案内できる人数を連日超えてしまっていたため、翌10月31日からは、通常の整理券に加えてはずれ券も混ぜての配布となったのでした。故に、列に並んで確実に整理券を確保できたのはこの日が最後だったのです。)なんだか勝手ながらも、この日はシャッツと不思議な縁で結ばれたのかな、そうだったら嬉しいな、なんて思ってしまいます。とにかく無事に整理券をゲットし、呼び出しがかかるまで久々に秋葉原を探索しました。そして、15時半頃でしょうか。入館案内の呼び出しが届いたため、緊張と懐かしさと、閉館発表後の来訪が遅くなってしまったことへの若干の後ろめたさとともに、約2年ぶりにシャッツキステの扉を開けたのでした。その日はメイドさんの人数も3人といつもより少なく、一度に案内する旅人の人数をさらに絞っていました。それ故、これまでに来館したときのような、わちゃっとした賑やかさは少々鳴りを潜めていたのですが、一人でこの場所の想い出ひとつひとつに浸りながら過ごすには、今思い返せばぴったりの状況だったのかもしれません。それでも、約2年ぶりに訪れたこの場所は、以前訪れたときと同じような独特な時間の流れや雰囲気があり、居心地の良さは何一つ変わってはいませんでした。この日いらっしゃったメイドさんは確か…ツバキさん、ヤナギさん、そしてツグミさん。入館すると、メイド0歳(正確には生後11か月…とのことです笑)のツグミさんが朗らかな笑顔で迎えてくれました。この日は主に夏組のツグミさん(洒落ではない)がホール?担当、冬組のツバキさんとヤナギさんがキッチン担当でした。夏組、冬組といった用語はここで初めて記載しましたが、ここもシャッツのユニークで面白いところ。メイドさんはそれぞれ春夏秋冬の組に分かれて属し、お給仕をするのです。より詳細な説明は以下の公式サイトのメイド紹介ページからどうぞ。

さてさて。今回ツグミさんに案内されたのは、前回や前々回の来館時と同じ壁際の、入り口寄りの座席でした。素敵なスタンドライトがお気に入り。

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この席からは、シャッツキステの店内全体がよく見えます。前方の座席で、メイドさんと楽しく語らう旅人、中央のテーブル席で、シャッツキステの歴史ファイル(確か店内に置いてあったもののはず)を捲りながら思い出に浸る旅人、最後の思い出にと、店内の写真を撮影する旅人。みな、思い思いの方法で、いつもどおりのシャッツキステを楽しみながらも、静かにお別れの挨拶をしているかのようでした。私も、これが最後になるかもしれないと思い、温かい紅茶をオーダーした後、せっかくだからと他にもお菓子やお料理を頼むことに。オーダーしたのは、『スープとハーブトーストのミニサラダ付プレート(豆乳コーンスープ)』とシズクさんお手製の『スコーン』。

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シャッツのお料理やお菓子はほぼ全てメイドさんによる手作りです。どれも優しいお味で、どこか家庭的で、本当に美味しいものばかりです。特に今回頼んだシズクさんの『スコーン』。こちらは〔お菓子作りの腕を磨いたメイドが、旬の果物や新鮮な素材を生かして〕作る逸品です。実は私、これまでスコーンというお菓子に対してあまり「美味しい」というイメージがなかったのですが、シャッツのスコーンを食べた瞬間、その認識がいい意味で180度変わってしまいました。スコーンの写真の奥に見えているのは『ラベンダミックスベリージャム』と『クロテッドクリーム』。ジャムを一口含んでみれば、ラベンダーの香りがすっと広がり、後からベリーの優しい甘酸っぱさで口の中が満たされます。クロテッドクリームも、単体で頂けるほどバターの香りが芳醇です。スコーン自体もバターを多めに使っているのか、そのまま頂いてもよし、ジャムやクリームを付けて頂くもよし。今思い返しても、贅沢なひと時でした。シズクさんのスコーンは、まさにシャッツの看板のようなお菓子だと勝手ながら思っています。お料理が先か、お話が先か、もはや記憶の定かではないところなのですが、とあるタイミングで、ツグミさんが「前回はいつ頃お越しになったのですか?」と、来館時に迎えてくれたときと同じ朗らかな笑顔で話しかけてくれました。この日店内で交わした会話はそれほど多くはなかったですが、とても心が満たされたことを覚えています。特に私が魔術学の本の話題を出した際、ツグミさんが嬉々としてその本を持ってきてくださったこと、嬉しそうにその本のおすすめポイントを語る姿、とても印象に残っています。・・・シャッツキステの大好きなところを挙げればキリがないのですが、旅人に声をかけるタイミングや声のかけ方について、メイドの皆さんはとても洗練されていらっしゃるな、ということを強く感じます。上述したように、店内には様々な旅人がいます。メイドさんとの趣味の会話を楽しみに来た方もいれば、紅茶を片手に己の作業をするために訪れた方、通常のカフェとして友人と語らうために訪れた方など。その日の当の私はというと、これまでの想い出に静かに浸りたい気持ちと、感謝の気持ちを伝えるためにメイドさんと話したい気持ちという、二律背反な思いを抱えて、あるいはある種の緊張感を持って店内で過ごしていました。そんなとき、助け舟を出すかのようにすっとお声がけしてくださったツグミさん。あの一言で緊張が解け、より心安らかにシャッツを楽しむことができました。このように、声をかけ過ぎるでもなく、それでいて旅人を独りにしないような雰囲気づくり。それが自然になされているところも、自分が思うシャッツキステの魅力の一つです。さて、今一度あの日の記憶を辿りましょう。お料理とお菓子を美味しくいただき、無限紅茶もたくさん頂いた頃には、来館してから2時間が経とうとしていました。そろそろ次の旅人さんのために席を空けようと、お会計へ向かいます。と、その前に。今日は主にキッチンにいた冬組のお二人とはお話しする機会がなかったのでした。ダメ元でツグミさんに「キッチンのお二人にも、最後にお礼をお伝えしたいのですが……」と尋ねると、快諾してくださったのでキッチンへ向かいご挨拶。キッチンも忙しい場所ですし、冬組のお二人とも少しきょとん、とされていて若干の申し訳なさが……笑 まぁ突然旅人がキッチンの方へやって来て話し始めたのですから当然の反応なのですが、自分なりの感謝の気持ちが少しでも伝えられていたなら、嬉しく思います。会計の際には、ツグミさんと魔術学の本について再び話したり、このシャッツという場所について言葉を交わしました。特に印象的なのは、ツグミさんがシャッツキステを「私にとって唯一無二の場所」と仰っていたこと。シャッツを表すこの表現が、私の中にも心地いい納得感をもってすっと沁み込んだのを覚えています。そしてこの日は、店内を改めて一瞥した後、シャッツを後にしたのでした。この日の想い出は、頂いたスコーンの味とともに、今も胸に刻まれています。

【11月2日(月)】

5度目の入館の日は、存外に早く訪れました。この日は、同居中の彼女とともにシャッツキステの扉を開けました。自宅にて私がシャッツの話をあまりにしていたため、気になって付いて来てくれたのでした。上述のとおり、この日の入館は、はずれ券入りの整理券方式でしたが、運よく当たりの整理券を引くことができ、14時頃に入館しました。(この日は平日だからか、お店の回転率が前回よりも高かったように感じました。)入館の際、お出迎えをしてくださったのは、春組のルナさん。上述したように、シャッツには十数名のメイドさんがいらっしゃいますが、なぜか私の中でルナさんについては、ある種の「非実在性」を感じていたため、そのお姿を拝見した際に、「わ、本当にいらっしゃったんだ!」と謎に感動したのを覚えています。(笑) さて、今度こそ最後になるかもしれないと思い、前回頼まなかったメニューを中心に頼むことに。この日頂いたのは、『パンプディング』、『ヴァルゴのひとみ』という名のブレンドハーブティー、そしてもちろんシズクさんお手製の『スコーン』。シズクさんのスコーンは言わずもがな、パンプディングも優しいお味で美味しく頂きました。そして今回初めて頼んだブレンドハーブティー。冬の足音も聞こえる時節柄だったので、免疫力を高める効果のあるハーブであるエキナセアを中心とした、『ヴァルゴのひとみ』をチョイスしました。このとき、注文をとってくださったのがルナさんだったのですが、ハーブティーの名前の由来を熱く、そして嬉々として語ってくださった姿を今でも覚えています。おっと、ここでシャッツキステにはメイドさん以外にも、愉快な仲間がいることを記しておかねばなりませんね。みんなのお姉さん的存在のサラさん。誰よりもシャッツ愛に溢れるカッタンさん。鍵の管理をしている大黒柱のムスタフィさん。シャッツのBGM(歌)担当ゴルゼスさん。そして、昼間はその翼を休め、夜になると店内を颯爽と飛び回るヴァルゴさん。ハーブティーの名前には、今回頼んだ『ヴァルゴのひとみ』のように、このシャッツの仲間たちの名前が入っているのです。(サラさんのブレンドだけないのがちょっと不思議。)実はこの仲間たちの中でも、ヴァルゴさんが最推しというルナさん。ハーブティーの名前の由来を教えてもらった後、ヴァルゴさんのもとへ案内してくれました。(昼間は下の写真のとおり、店内の片隅で翼を休めています。)ちなみに、ヴァルゴさんのお腹はふっかふかでした。


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一人で過ごす時間と、誰かと過ごす時間。過ぎ行く時間の早さは絶対的には同じはずなのに、この日の90分はあっという間に感じました。そろそろ退店の時間です。お会計に向かうと、対応してくださったのはシオンさん。シオンさんといえば、私が初めてシャッツキステを訪れた際、ポイントカードを発行してくださり、最初にお名前を記してくださったメイドさんです。結果を先に記してしまう形となりますが、私にとってこの日が最後の来訪となりました。シオンさんに始まり、シオンさんで終わった私のシャッツキステ。どこか、運命めいたものを感じずにはいられません。お会計の際、シオンさんとシャッツの思い出について話し交わす中で、ふと彼女がシオンさんに一言。「この人、今日誕生日なので、よかったらお祝いの言葉などいただけると嬉しいです」そう、この日は私の誕生日でもありました。するとシオンさん「そうなんですね!それはおめでとうございます!言ってくだされば、お菓子にメッセージを添えたりもできたんですが……」と言いながらポイントカードに追加でお祝いのメッセージを記してくださいました。もちろん、お祝いの言葉を頂けただけで嬉しかったのですが、そんなシステム?があったとは!今でもちょっぴり、後悔していることの一つです。(笑) そしてこの日は、何か形に残る物をと思い、マグカップと紅茶の茶葉を購入。そのマグカップと茶葉で入れた紅茶を頂きつつ、今まさにこの文章を綴っています。誕生日に大切な人と、大切な場所で過ごしたかけがえのない時間。この日の想い出も大切な宝物として胸にしまってあります。

【11月14日(土)】

この日は正確な来訪日ではないのですが、どうしても記しておきたく。前々回の来訪を機に、私の中でシャッツへの思いが格段に強まり、そして前回の来訪でその思いはさらに強固になったように思いました。閉館日の迫る中、もう一度、あと一度でいいからシャッツキステを訪れたい。そんな思いが、日に日に強まっていっていたのを覚えています。この頃には、『メイドの日誌(メイドさんが綴るシャッツのブログ)』で、メイドさんたちが日替わりでお別れの挨拶を綴るようになっており、どんな言葉に触れられるのかという楽しみな気持ちと、日誌を読むたびに抱えきれない寂しさや悲しみを感じながら日々を過ごしていました。閉館日の11月15日(日)は、最終日ということで事前抽選によって入館できる旅人が決まっていたため、11月14日(土)を私にとっての最後のシャッツにしよう、と決めていました。そして、11月14日当日のシャッツキステ。整理券配布直前には、約100人ほどの旅人が整理券を求めて集まっていました。残念ながら、引いたのははずれ券。その日は実質的に通常営業最終日ということもあり、はずれ券を引いた旅人にはステッカーが配布されるとのことで、別の列にて待機することになりました。ステッカーを配りに来てくださったのは、お手製のスコーンを作っているあのシズクさんでした。前日の『メイドの日誌』のご担当がちょうどシズクさんだったため、Twitterにてスコーンにまつわる感謝の思いは伝えていたのですが、改めて、シズクさんのスコーンについての思いを直接お伝えすることができました。「シズクさんのスコーンを食べたことで、スコーンに対する印象がいい意味で大きく変わり、大好きになったこと」、「そのことを、こうして直接伝えられたこと」。溢れそうになる何かを堪えながら、シズクさんにそれらを伝えることができました。その日、整理券を配布していたのは確かツグミさんだったのですが、ツグミさんの笑顔が旅人を元気づける太陽のようなそれであるならば、シズクさんの笑顔は、旅人を優しく包み込む温もりに満ちたそれであると思っています。私の話も優しい笑顔で聴いてくださり、「いつかこれ(マスク)を外して普通に会話ができるような日常が来るといいですよね」なんて会話を交わしました。そしてステッカーを受け取り、一つの区切りとして、私はいったんその場を後にしたのでした。入館が整理券方式になって以降、整理券を持っておらず入館を希望する人は、整理券組がすべて退館して閉館時刻までの間に順番に案内される仕組みとなっていました。その日のはずれ券組の人数を考えたときに入館は難しいとは思いましたが、これが本当に最後の機会であることもまた同時に理解していたため、17時ごろから館外の列に並ぶことにしました。最終的に、私の前後に約10組ずつの方が並んでいたでしょうか。列に並んでから1時間半ほどが経過した頃、メイドさんがいらっしゃって申し訳なさそうな表情で告げます。「今列に並ばれている方をご案内することは、ほぼ難しい状況です。大変申し訳ありませんが、ご了承のほどお願いいたします。なお、物販であれば店内に入っていただき購入いただくことが可能です」おそらく店内もてんてこ舞いなのでしょう。その表情には、外で待ってもらっていることへの申し訳なさに加え、疲労の色がありありと見て取れました。正直悩みました。が、ここで更に待つことは、誰にとっての幸せにもならないと思い、物販を購入し帰路に就くことに決めました。正規の入館は叶いませんでしたが、またシャッツキステの館内に入れること、そしてあの雰囲気を感じられることが、あのときの自分には何より喜ばしく感じられました。購入したのは、今まで買っていなかったクリアボトルとアクリルスタンド。クリアボトルはきっと夏に冷たい麦茶などを入れて頂けば映えること間違いなし。アクリルスタンドは、今も机上にて「紅茶のおかわりはいかがですか?」と言わんばかりの表情で、文章を綴る私を優しく見守ってくれています。物販のレジ対応をしてくださったのは、先ほど外で待つ方たちに案内をしてくれたムギさん。館内も相当にお忙しいはずなのに、レシートにメッセージを添えてくれました。こういった細やかな心遣いがシャッツキステの魅力だと、最後の最後に再認識させられたのでした。館内の様子を目に、心に焼き付けて、ムギさんに見送られ私はシャッツキステを後にしたのでした。この日の出来事たちも、確かに大事な宝物になりました。

その 素敵な私設図書館は・・・

本来であれば、11月19日~23日の日程で、シャッツで役目を終えた小物類やグッズを販売するフリーマーケットが開催される予定だったのですが、コロナの感染拡大の影響もあり、19日、20日の2日間のみの開催となってしまいました。そのため、11月14日(土)が、正真正銘私にとっての最後の来訪日となりました。私がシャッツキステを訪れた回数は、11月14日を含めても計6回。屋根裏部屋時代から通われていた常連の旅人さんに比べたら、シャッツ歴という意味では全く劣ってしまうでしょう。それでも、私がこの私設図書館を大好きで大切に思う気持ちに揺るぎはないですし、大事なことは訪れた回数ではないのだ、と胸を張って言えます。たくさんの人の好きなものが集まる不思議な私設図書館で私は、「好きなものを好きと言うこと。そしてそれを伝えること」や「思いの強さに、回数や時間の長さは必ずしも比例しないこと」を学びました。そしてこの私設図書館で私は、たくさんのかけがえのない想い出という名の宝物を得ました。シャッツキステとは、「宝箱」の意です。総メイド長であるエリスさんは、「宝箱、すなわちシャッツキステのイメージは、いつしか『大事なものをしまっておくもの』になっていたのではないか」と仰っています。私にとって、私設図書館シャッツキステは、確かに唯一無二の宝箱になりました。そして、物理的なシャッツキステが無くなった今、概念としてのシャッツキステは私たち一人一人の心の中にあると思うのです。その素敵な私設図書館は、私たちの心の中で、永久なる想い出として、そして永久なる宝箱として、輝き続けるのです。

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