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序曲(ドラクエ1)楽曲解析

ドラクエ1全曲楽曲分析シリーズ第1弾。

日本人なら誰でも知っている第二の国歌?、ドラゴンクエストの序曲の楽曲解析を行う。分析すればするほど、これを5分(正確には54年と5分)で作ったすぎやまこういち先生の力量に驚嘆の度合いが増すだろう。

楽譜にいろいろ書き込んでみたので、これらの記号と照らし合わせながら本文を読んでいただければ幸いである。

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序奏(Intro)

冒頭いきなりホルン5度で始まる。移動ドで上声がミレドレミ、下声がドソミソドと動くのがホルン5度といわれる音形だ。途中「ソ-レ」という5度に並達する「並達5度」は和声学では禁止されているが、昔のホルンは倍音列しか出せず、和声進行をホルンで行う場合「並達5度」は逃れ難いがゆえに特例で認められている音形である。ホルンで鳴らすとカッコいいし、逆に電子音で鳴らしてもホルンを連想する素朴な響きが得られるということである。ただし、その後すぐに昔のホルンじゃ鳴らせないファに行くのはご愛嬌。

ファンファーレを書かせたら日本ですぎやまこういち先生の右にでる人はいないと思うが、ここはまだ誰も知らないロト伝説(=ロールプレイングゲーム)の始まりということで敢えて素朴なファンファーレにしたと考える。

Aパート前半

ファンファーレの出だしと同じ二重付点のハネた音形(α)から「ソーソ ドーレーミーファーソードー」と駆け上がるフレーズが勇ましい。しかも最初のドレミはホルン5度を継承して、序奏との整合性を保っている。バスはメロディと反対に半音で下行線を描く。

その後、付点リズムのテンションリゾルブが2度続く(#11→3、13→5)。

FdimはメロディがChromatic Delayed Approachする過程で偶成されたコードである。すなわちソ#・シ→ラ・ドにapproachする間にシ・レが挿入されている。

Aパート後半

ここでメロディが1オクターブ低くなる。このことを知らずに歌うと最後の方で高すぎて声が出なくなるので注意されたい(笑)。Aパート前半と同形の上行メロディではあるが、III7(V of VI)のマイナー調のコードと相まってテンションが少し落ち着く箇所である。このフレーズはルートメロ→ルートメロとなっており並行8度っぽいが途中でメロディックマイナーの上行メロによる和声変換があるため、並行8度を免れている。(8→8ではなく、8→3→8)

ここから先、最後までセカンダリードミナントとその解決の繰り返しとなる。III7→ VI、II7→VでAパートが終わる。

Bパート

Bパートもハーモニー的にはセカンダリードミナントとその解決である。すなわち、III7→VI、II7→V、VI7→IIである。メロディックリズムも同型を繰り返す。このメロディ素材(2分音符+8分音符x3(「γ」とする))を「γ'」とすると、Bパートでは4度も登場する。

実はγ'の音形はAパートから何度も登場しているので、自然な流れとなっている。

最後はいわゆるツー・ファイブ・ワンでα'音形を繰り返しながらカデンツで締めくくる。なお最後の4小節のフレーズは、後のシリーズ(というかIの交響組曲)で尺を伸ばした壮大なコーダに発展させる重要な素材となっている。

和声学的特徴

和声学的な構造についても調べてみた。メロディがルートかつバスもルート(標準形)をしているのはフレーズの始まりと終わりだけ、明確な意思を持って配置しているる。それ以外でルートメロになっている箇所は全てバスが3rdないし7thがルートになっている。

逆にバスが3rdのときは上部和声に3rdが重複しないように配置してある。

このような美しい和声学的構成も吟味すると、より曲の豊かさを鑑賞することができるだろう。

メロディ的特徴

α:二重付点音符のハネた音形(ファンファーレでよく使われる)

β:4分音符x4による上行(もしくは下行)の音形。2分音符+4分音符x2の亜種β'も登場する。

γ:スタッカートのついた8分音符x3の音形。イントロでもずっと使われている。2分音符+γのγ'が楽曲の中盤から多用される。

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