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無敵の笑顔で荒らすメディア。

 さて、今日から有料noteに向けて書いていくぞ!と言ったのはいいのですが、
 まず、前回の予告記事の反応が超薄かった…やっぱりニーズないのかなぁ…と思って、
 次に厚生労働省のホームページを見たのですが、こっちも内容が薄い…今は選挙期間中ということもあり、あまり表立った動きはできないのかなぁ…と思ったりして。
 選挙の話を書いてもいいのですが、選挙の話は今まで何度か書いてきていて、多分同じことしか書かないと思います。あとだいたい時事ネタを書いた時の反応は薄いです。
 どうしようかと思っていたら、こんな記事がありました。

 最新の最高裁判例です(正確には決定だけど)。労働基準法がらみでは色々判例が出てくるのですが、だいたい昭和の判例です。かの有名な(法律をかじったことのある人ならだいたい知っていると思う。)三菱重工長崎造船所事件ですら平成12年です。令和になってからの判例はなくはないのですが、少ないです。しかしもしかしたら来年あたりこの判例も労働法のテキストに載ってたりして。それぐらい画期的な判例と思われます。

男性は2019年1月に大阪市の事務所と「専属マネジメント契約」を締結。契約書には「事務所の承諾なしに脱退できない」とする規定のほか、「違反1回で200万円」との違約金条項があった。男性が20年8月に契約解除を求めると、事務所側から違約金を求める訴訟を起こされた。

上記記事より

 芸能人が事務所やグループをやめると違約金が請求されるという話、韓国とかでは時々聞きますが、日本では、普通の会社が労働者に対してこれをやると一発でアウトです。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

労働基準法第16条

 ただ、芸能人って「労働者」とみなされていないケースの方が多いんですよね。「労働者」とみなされなかったら労働基準法も適用されないわけで。普通に考えたら事務所に所属する労働者のようにみえるのですが。

いわゆる芸能タレントは、「当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっている」「当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではない」「リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはない」「契約形態が雇用契約ではない」のいずれにも該当する場合には、労働基準法第9条の労働者には該当しない。

令和元年労働基準法03エ 

 実際こういう問題が令和元年の社労士の本試験に出題されているのですが、この根拠となったのが昭和63年に出された通達で、「芸能タレント通達」としてWikipediaに項目があるぐらい有名なやつです。

 これ、別名が「光GENJI通達」と言われているそうで、Z世代には分からないかもしれませんが、昭和63年当時、「光GENJI」というジャニーズのグループがいて、ローラースケート(今時見ないけど)を履いて踊っていました。しかも当時のジャニーズなのでやりたい放題なわけで、厚生労働省もかなわなかったと見受けられます。そのせいで、「リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはない」とかいう訳の分からないことを言い出す始末です。
 しかし、ジャニーズもあんなことになり(あまり関係ないかもしれませんが)、今回のケースでは労働者と認定されたようです。その理由が、

一審・大阪地裁は、男性にライブやレッスンを断る自由はなく、仕事場所や時間を拘束されていたと指摘。男性は独立した事業者ではなく、事務所の指揮監督を受ける「労働者」と認めた。

上記記事より

 まぁそうなりますよね。表向きには雇用契約ではないけど、事実上指揮命令下にあったら労働者といわれても仕方ないです。
 アイドルに限らず、普通の芸能人でも、今日は○○でライブがある、ロケがある、イベントがあるといわれたらそこに行くしかないし、その時間は拘束もされているわけで。個人事務所に所属して自分で仕事を取ってきている人ならともかく、(そんな人でも、自分以外の誰かを社長にしたら、その社長の下で働く労働者という地位を得られる)もっとそういう労働者の権利を与えてあげてもいいと思います。芸能人の人はだいたい個人事業主扱いされているせいで、国民健康保険と国民年金第1号被保険者らしいのですが、労働者ということになると、健康保険や厚生年金にも入れるようになるかもしれません。
 あと、大切なのは働き方改革です。アイドルとかでも体調不良で活動を休止したりグループを脱退したりというケースが最近よくあります。これは職業柄感情労働という面もあると思いますが(罵声を浴びせられたり、SNSで嫌がらせを受けたり)、人によっては忙しすぎるというのもあるのではないかと思います。前述のとおり事務所は所属タレントを労働者とは見ていないわけで、当然出退勤の時間なども管理していないと思われます。(やってくれてたらいいけど、時間になったから終わりという世界ではないし。)時間に対して成果が出るという仕事ではないとはいえ、もし全く労働時間を管理していないとなると、どれだけ働いているのかもわからない。しかも彼らは他の人には替えのきかない仕事をしているわけで。体調不良でライブが中止になると払い戻しとかが大変なわけです。それだけに健康管理、ひいては労働時間の管理は重要になってきます。
 よほどの大ベテランならともかく、10代20代の若いタレントがどれだけ自律的に動けるのかというのもあるので、そのへんは、いくら「労働者」とみなされないとしても、常識の範囲内で管理する義務が大人たちにはあると思います。ましてや今どき違約金とかもってのほかです。

 ということで、新シリーズ第1回を書いてみました。時事ネタのおかげで思いもしない方向に話が伸びていきました。やはり判例は面白いですね。労働法を中心とした判例(個人的には憲法の判例も興味があります)の紹介をやるのもいいかもしれません。でもこれをやろうとすると、毎日とはいわないけど、週に3回は更新しないとやりきれないと思います。今後検討します。


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