ドラ1、初KO勝ちで余裕の凱旋。
椎名林檎さんの5年ぶりのアルバム「放生会」が先日発売されました。
タイトルは、彼女の地元・福岡で、どんたく、山笠と並ぶ博多3大祭りと称される「放生会」からきています。(トップ画像はその模様だそうです。)私は20年来の彼女ファンで、コンサートにも何度か行ったことがあります。
このアルバムでは、自身のソロ曲とともに、7人の女性ボーカリストを迎えて共演したアルバムとなっています。その7人とは、中嶋イッキュウ(tricot/ジェニーハイ)、AI、のっち(Perfume)、宇多田ヒカル、新しい学校のリーダーズ、Daoko、もも(チャラン・ポ・ランタン)の7人です。
この7人を迎えて制作された7曲は、いずれもMVが制作されており、YouTubeで無料で見ることができます。
イッキュウさんといえば、あまり個人的にはtricotのことはよく知らないのですが、ジェニーハイのボーカルということで知っています。ギターに川谷絵音、キーボードにゴーストライター騒動で名前の出た新垣隆氏など、個性的なメンバーがそろったバンドでボーカルを務めた人という印象です。タイトルの「ちりぬるを」というのは、以前椎名さんのソロ曲で「いろはにほへと」というのがあるので、その続編という感じでしょうか。
AIさんは同じ九州出身(といっても福岡と鹿児島だけど)で、ちょっとAIさんの方が年下ですが、楽曲的にもAIさんの専門のブラックミュージックに寄せていっている感じがします。髪型もドレッドだし。AIさんもコラボが大好きな人なので、コラボ好き同志で息の合ったところが見られます。人工知能の方のAIがかなり一般的になってきましたが、生身のAIさんはとても人間臭い人です。
のっち?あのオバマ元大統領の物まねをしている芸人?(んなわけない)と思ったら本当にPerfumeののっちで草。まさかPerfumeからソロで、ヤスタカさん以外の曲を地声で歌う日が来ることになるとは…よくアミューズもOK出したよなという感じです。たしかに林檎さんとPerfumeといえば、ヤスタカさんやMIKIKO先生を通じて強いつながりがあり、東京五輪の開会式で、林檎さんの楽曲でPerfumeがパフォーマンスするはずだったという関係性とはいえ。(だからOKが出たのかも。)これは林檎さんにとっては一つの作品かもしれないけど、Perfume的には歴史的な一歩です。
この曲は、林檎さんが5年前に出したベストアルバムに収録された曲で、(MVは当時のもの)今回はそのバージョン違いが収録されています。林檎さんと宇多田さんといえば、同時期に、今は亡き東芝EMIからデビューしたということで、昔から親交があり、林檎さんが作曲したこの曲が林檎さんのアルバムに、宇多田さんが作曲して共演した「2時間だけのバカンス」という曲が宇多田さんのアルバムに収録されています。
新しい学校のリーダーズをコラボ相手に起用するとはさすが林檎さんです。今回ボーカルにはSUZUKAさんだけの参加ですが、他の3人もダンスでMVには出演しています。新しい学校のリーダーズ自体は、プロデビューしてから1軍に上がるまで8年ぐらいかかっていますが、曲では「ドラ1独走」だそうです。昨今の活躍を見ればそうなりますよね。ちなみにSUZUKAさんは、林檎さんの息子さんと同学年です。もうそんな時代なんですね。しかしがっぷり4つに組んでいる感じです。こうしてみると、意外と林檎さんはスポーツ好きなのかもしれません。のっちとはボクシングをやっていたし、サッカーの曲もやってたことあるし、東京五輪の音楽監督をやろうとしていた人ですからね。諸般の事情でなくなったけど。
Daokoさんといえば、7年前に米津玄師さんとのコラボ曲「線香花火」で一躍有名になった人で、ウィスパーボイスが特徴的で歌だけでなくラップもやります。それに合わせてこの曲もかわいらしい感じになっています。どの曲にも言えることですが、自分のベースとなるものを持ちつつも、相手の良さも引き出すことができるようになっていて、改めて林檎さんのプロデュース能力の高さを感じられます。
この度はチャラン・ポ・ランタンのももさんを起用していただいて誠にありがとうございます。なんでも、ももさんの姉で相方の小春さんのアコーディオンの師匠の方と林檎さんが知り合いだそうで、そこから出てきたということですが、確かに親和性は高いだろうなとは思っていました。しかし想像以上のものを出してくるのがさすが林檎さんという感じです。これで小春さんはミスチルのツアーに参加、ももさんは林檎さんのアルバムで共演という実績を作りました。唯一無二の個性を持っているからここまでできているのですが、世間に知られている曲が、「逃げ恥」の「じゃないほう」のテーマ曲と「ぽかぽか」のテーマ曲ぐらいというのが若干寂しいところ。
というこの豪華なコラボ作品や、ソロ作品も堪能できて、3,960円は安い!と言いたいところなのですが、今まで見てきて分かるとおり、CDだと音源だけですが、今なら映像付きで無料で楽しめてしまうという、いいんだか申し訳ないんだかという感じになっています。これは彼女に限らずどのアーティストにとっても共通の問題です。まぁアーティスト側もあまり気にしていない感じもします。そうでなかったらこんなに手をかけてMVを作ったりしません。アルバムのヒットチャートなんかグッズ代わり(もしくは特典目当て)に買われているようなアイドルのアルバムばかりだし。その分今年後半に行われるツアーで取り返す感じでしょうか。ツアーのできる世の中になってよかったですね。チケットとれるかどうかわからないし、それ以前にあまり個人的に夜遅くに出歩ける状況ではないので行くのは無理ですが。
このうちの誰かが、今年後半の林檎さんのツアーで共演したりするんでしょうか。あるとしたら東京だろうな。東京の人は良いな。と思ってしまいます。