原田マハさん「旅屋おかえり」
通勤時、吊り革を持つ私への視線が・・・
向かいに座った女子高生が不思議そうにチラチラ私の方を見てるのに気づいたのは、この作品を読みながら、こらえきれずに出てしまった涙を拭ったあとでした。
(通勤電車で涙を流しながら本を読んでいる人がいるのを見てさぞ違和感を感じたことだろうと思います。)
売れない崖っぷちアラサータレント
"おかえり"こと丘えりか。
タレントになったきっかけが書かれた最初のエピソードで作品にぐっと引き込まれました。
唯一のレギュラー旅番組打ち切り後にはじめた「人のかわりに旅をする旅屋」のエピソードは今思い出しても泣けてきます。
華道の家元の娘さんが難病で入院する病院。
「・・・大学病院の五階。特別室のあるフロアの廊下は、消毒液のにおいにまじって、かすかに花の香りが漂っていた。」
初読時に気になったこの一文が示唆するのは伏線であり、「花の香りがどこから漂ってきたか」がわかった時に心をうたれました。
伏線のはり方がうまい!
「旅屋おかえり」原田マハ
集英社文庫/2014.9.1刷