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ご自愛は、違いを認めて応援すること?〜#002「サステナビリティとご自愛」 タイニーのご自愛タイムズ〜

タイニーのご自愛タイムズはご自愛について語り合う場です。ともこ&あこや、様々なゲストと共にそれぞれの日常を紐解き、「ご自愛」について探求していきます。

テーマは「サステイナビリティ×ご自愛」

今回はゲストに東京大学大学院で助教を務めるサステイナビリティ博士の工藤尚悟(くどう・しょうご)さんをお迎えし、サステイナビリティの観点からご自愛について考えていきます。

サステイナビリティ=環境問題?

ともこ:まずしょうごさんから、簡単に自己紹介をお願いします。

しょうご:初めまして。東京大学で助教を務めております、工藤尚悟と申します。専門分野は「サステイナビリティ学」という、初めて聞く人が多いかと思うんですけども、サステイナビリティ(持続可能性)というキーワードで、社会の中で将来世代に渡って持続していきたい、続けていきたい、守っていきたいということをつかまえて、それに学術の面からアプローチするというような分野です。

ともこ:私も東京大学大学院でサステイナビリティ学教育プログラム、というところを修了していまして。私たちは、まだ日本社会ではサステイナビリティなんて言葉は全く使われていなかった10年前くらいからサステイナビリティとか、そういう社会の在り方について議論をしていた学生時代の友人、先輩後輩という関係性です。

しょうごさんの今見ている世界観から、サステイナビリティとご自愛にはどんな関連性がありそうですか?

しょうご:サステイナビリティってなんか環境のことでしょ、みたいなふわっとした理解が広まっている気がするんですけど、実はもう少し広い概念だよね、と10年前に学生の時からずっと話しているんです。

サステイナビリティの語源はラテン語の「サスティニエ(sustinere)」から来ていて、これは「下から支える」という意味なんですよ。何を支えるかというと、環境はもちろんなんだけど「我々が社会に生きていて心地よく幸福に暮らせるような条件を支えていきましょう」というコンセプトなんですよね。

だから、SDGsの17個の目標には、「貧困の解決」「教育の公平性」「ジェンダー」といった環境問題に限らないトピックが入っています。わたしたちが将来に渡って持続していきたいことは何か、どう守り、新たにつくり出すか自分たちで考える、という概念だと思うんですよ。

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サステイナビリティ×ご自愛

しょうご:サステイナビリティがご自愛がどう繋がるのかというところなんだけど。サステナビリティは「わたしたちが将来に渡って持続していきたいこと」なんだよね。だから、well-being、幸せな状態で暮らしていくために「わたしの自愛」だけじゃなくて、「わたしたちのご自愛」を考えていくことが必要だと思うんです。

ともこ:「わたし」とか「わたしたち」とか、ご自愛を考えるにあたっても、主語がすごく大事だなと思います。今のしょうごさんの話のところだと、「サステイナブルはこうあるべき」のような「べき論」を考えるだけじゃなくて、「わたし」や「わたしたち」にとっての豊かさを自分たちで考えることこそ、ご自愛だと思うんですよね。結局自分たちが何を持続させたいのか、ということだと思います。

しょうご:「これはサステイナブル」「これはサステイナブルじゃない」というやりとりって結局正義を主張し合っちゃってるから、聞いててつらいんだよね。別に両方あっていいし、両方それぞれ大切。それでいいじゃん、ていうのが根本にないと、サステイナブルかどうかの議論てつらくなっちゃうんだよね。

皆それぞれ違う種類あって、それが一緒にいられるようになったらいいなぁ、っていうコンセプトなんですよね。

「わたし」のご自愛と「わたしたち」のご自愛

ともこ:正しいか否か、善か悪かっていう対立がしんどいなぁ、と思うんです。各々が豊かさを追求して、それを各々が許し合うことがご自愛だと、私は捉えています。

しょうご:そうだね。もっと簡単に言うと、「応援すること」だと思うんですよね。

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まずは、楽しい時間の過ごし方、豊かな暮らし方は皆違う、と認める。その上で「わたしとは違うから」と突き放すんじゃなくて、認めた上で応援する関わり方なんですよね。全然違う方向を向いてるんだけど応援し合う状態「わたしたちのご自愛」なのかな、と思うんです。自分が元気じゃないと応援もできないからこそ、「わたしのご自愛」も必要不可欠なんだよね

ともこ:そうか。緩やかな繋がりが応援によって育まれるのって素敵だし、大事にしたいと思いました。タイニーが掲げる「やさしさが連鎖する経済圏をつくる」も、必ずしも全員が同じゴールに向かってスクラムを組めている必要はなくて、緩やかな繋がりというのを大切にしているんです。AかBか、と分断されているのではなく、AとBがぼんやりと繋がっている。境界線があいまいな所を一緒に見てるからこそ、応援し合って突き進める、と思っています。

しょうご:サステイナブルな社会や未来って、決して固定されたものがあるわけじゃないんだよね。例えば、20年前の日本だとジェンダーの話って全然話してなかったでしょ。LGBTQも単語すら知られてなかったと思うんです。でも今は皆すごく盛んにそういう話をしていて、自分はそういうのサポートしてますよ、っていう人たちも現れてるし。

今から20年経ったら、サステイナビリティって言った時に、全然違う物がその器の中に入ってくるわけじゃないですか。その時に、サステイナブルっていうお器に、これは入りますよこれは入りませんよ、っていう風にしちゃうと、排他的になってしまうと思うんだよね。何を入れるかよりも、何を入れるかを考えることが大事。サステイナビリティって結果の話ではなく、プロセスの話だというのをもっと伝えたいですね。

ともこ:しょうごさんと議論すると、「だから私やってるんだ」というのが後からわかってくるんですよね(笑)

最近「タイニーピースダイニング」っていうコミュニティイベントを始めたんですよね。問いを投げかけて、それぞれが考えて、それぞれを分かち合う、というのを参加者の方々と一緒にしているんです。評価とか批判とかなく、「あなた」はそう考えたのね、「わたし」はこう考えたよ、っていうことを、一人でやるだけじゃなくて共同作業でやることを、ダイニングでは実験しています。とはいえ、「まず自分で考えること」は一人だと難しいこともあるので、サポートする上でコーチング的なアプローチも取り入れていきたいんです。

「自分の持ってる願い」「自分にとっての豊かさ」といったテーマを、自分で考えるのはもちろん、他者とそれを共有したり、他者のそれを受け止めあったりしたいんですよね。

しょうご:好きなことを自由に探求しながら、自由に生きていくのがいいなと思っているかな。ひとつだけルールは、否定しないこと。相手を否定しないで応援するってことが、ご自愛だと思う。もしみんなが相手の状況に立ってご自愛を考えたら、、、なんかいい社会になるんじゃないかなぁと思ってます。

違いを尊重した上で、繋がり合う

ともこ:他者を受け止める上で、「受けとめられた」という感覚を持つこともすごい大事だと思っています。自分が受けとめてもらえた体験があると、他者を受け止めやすくなる。お互いに受け止めあえる人が増えていけば、サステイナブルな世の中に繋がると思います。

しょうご:僕の場合は、自分と違う人から見た世界を分かるためには、異質なものを併存させることが大事だと思っています。人でもアイディアでも、二つのものが同じ空間にあるんだけど、同じ性質にはならず違う性質のまま存在する、という状況があると、自分とは違う世界の見方が理解できるんじゃないかな。

南アフリカの人とやり取りをすることがあってね。南アフリカには公用語が11個あって同じ南アフリカ人なんだけど会話ができない、みたいな状況が発生したとしても別にそれは変なことじゃない、って捉えられるんだよね。それが日本だと、ちょっとアクセントの怪しいコンビニの店員さんに「ん?」て思っちゃう瞬間があるじゃない。その時の感覚って、ひとつの見方でしかないんだよね。

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ともこ:私の話で言うと、5歳くらいの時にドイツに3年間住んだことがあるんです。現地の言葉が話せない状態で小学校に行き、自分が当たり前と信じていることが通用しないし、人種差別みたいなことも経験したんですよね。こんなにも人は持ってる「当たり前」によって見えている世界が違って、違いを認められずに衝突を起こしてしまうんだ、と感じました。

でも、私がドイツ語を流暢に話せるようになったら、その子たちはすごく仲良くしてくれたんです。ただ単に言語ができるかできないかによって、こんなにも相手が変わるのかっていう経験をした時に、自分の当たり前がみんなにとっての当たり前ではないことを体感したんですよね。

それぞれの当たり前によって溝が生まれてしまう。だから、異質なものに飛び込むとか、異質な中に自分が身を置いた経験が、違いに対する許容度を高めてくれるのかもしれませんね。

しょうご:生まれ育った環境の価値観を持っていて、それがあるから違和感を感じるわけです。自分の持ってる価値観も大事。大事なんだけど、自分の価値観は「当たり前」じゃないから、他の人が持つ「当たり前」も受け止めて、許容していきたいね。

ともこ:話が止まらないから、これは連続シリーズにしたいですね。アカデミアで議論されていることって、実はすごく私たちの日常に活きるものや学べることがたくさんありますよね。もっといろんな人が触れられて、活かせるように広めていきたいと思いました。

今日はありがとうございました!

サステイナビリティと聞くと、環境問題や経済活動など大きなテーマを思い浮かべがちですが、まずは「わたし」がサステイナブルな状態であることが大切で、そのためにご自愛が必要になってくるのかも。皆さんは、ご自身がサステイナブルな生き方をするには何が必要だと思いますか?

▼こちらの内容は、タイニーのご自愛ラジオに収録されています。
通勤時間や、料理をしながらなど、スキマ時間にぜひ聴いてみてくださいね。



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