見出し画像

善意ってなんだろう

駅前に、「交通費がないからお金ください」って書いたプラカードを持って立っている人がいた。

みーんな、じろじろ見るけど、
足を止める人はいない。

近寄ろうとする小さな子供を、
母親が無理やり連れ戻す。

プラカードを持って立つのは、40代くらいの男性。
深くキャップをかぶり、俯いている。
その目線の先にあるのは、くたびれたスニーカー。
紐がボロボロにほつれている。
服も破れている。

本当に、困っているのかな。
困っているとして、お金を渡して、彼はどうなるのか。
たったの数百円を得たところで、何か変わるのか。
明日の生活はどうなるのか。
食べ物はあるのか。
いや、ただ楽をしてお金をもらおうとしているのか。
それとも、なにかのドッキリ!?

私の頭の中で、推理が始まる。
何が真実なのか。
何を信じれば良いのか。

と、その時。
一人の高齢の女性が彼の前で立ち止まった。

彼女はおもむろに財布から500円玉を取り出し、

「はい、どうぞ。」

と言って、彼に手渡した。

彼は深く頭を下げて

「ありがとうございます。」

と言った。

彼はそのまま駅へと向かっていった。

彼は本当にお金に困っていたのか、
それとも人の善意につけ込んで楽しようとしたのか。
真相は分からない。

あの高齢の女性の行為は、彼にとってどんな意味があるのだろうか。

その光景をみて、私は昔フィリピンで出会ったストリートチルドレンのことを思い出した。

8歳くらいの女の子。
ショッピングモールの入り口で、バスを待っていた私に近づいてきた。
フラフープをしたり、けんけんぱをしたり。
一生懸命、芸を見せてくれる。
私が首を振っても、彼女は離れていかない。
たから、10ペソ硬貨を渡した。

彼女は元気にしているだろうか。
駅へと去っていく男性を見ながら、そんなことを考えた。

善意って難しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?