失恋した心に、甘いパイは沁みるよね/映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を観て
そりゃ辛いよね~
どんなに願っても、大好きだったあの人に
もう二度と、愛を囁いてもらえないなんて。
時の流れは残酷だ。
いまこの瞬間の幸せを切り取って、
ずーっと感じられたらいいのに。
皆さんは失恋、したことありますか?
ある程度の年齢になると、
恋に破れた経験も一度や二度じゃないですよね。
私も、失恋じゃないけど
大好きだった人に会えなくなった経験がある。
小学生の頃、好きだった男の子がいた。
足が速くて、野球が得意で、冗談を連発する子。
その子と一緒に帰りたくて、
わざわざ通学路を遠回りしていた。
でも、私は私立の中学校に進学することになって
地元の中学に進む彼とは離れ離れに。
小学校の卒業式のあと、
仲の良い友達たちとボーリングに行った。
彼もいた。
私は女の子のなかで、最高のスコアを出した。
トイレから戻る途中、
廊下で彼と二人きりになった。
ボウリング場で騒ぐ人の声、
ボールが転がる音、
店内にかかる音楽はセカオワの『Doragon Night』
他愛ない話をした。
卒業式で泣いていたクラス1やんちゃな子の話とか、
担任の先生がくれたアルバムの話とか。
一瞬、時が止まったかのように
彼と見つめ合ったのを覚えている。
でも、何もなかった。
それから彼と、街中でニ度ほどすれ違うことはあったが
話もせず、いまどこで何をしているのかも知らない。
12歳ながらに、恋をしていたと思うし
本気で彼を愛していた。
中高は女子校だったから、
恋愛はしなかった。
隣の男子校の生徒と仲良くなったり
文化祭で他校の生徒と知り合ったりはしたけれど、
12歳のあの時のようなときめきはなくて
誰とも付き合わなかった。
時は流れて高校3年生。
早めに受験が終わって、時間を持て余していた頃。
ひょんなことから、
いまの恋人に出会った。
考えることも、好きなことも、感じることも、
全てがそっくりで、
同性だったら絶対親友になっていた人。
心から愛して、将来もずっと一緒に過ごしたいと思う人。
家族になりたいと思う人だ。
スペイン語のことわざで、
「Tú eres mi media naranja.(あなたは私の半分のオレンジだ。)」
というものがある。
もともと1つだった人間が、神様によって二つに分けられ、
私たちは自分の片割れを探し続けている、という言い伝えだ。
私の中で、恋人はまさに自分の片割れのような気がするのだ。
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の主人公は、
恋に破れ、絶望のなかにいたときに、
あるカフェのオーナーに出会い、
いつも売れ残るというブルーベリーパイを
アイスクリームにつけて食べる。
ブルーベリーと、パイの生地と、アイスクリームが
じんわりと溶け込んでゆく映像が、
まさに人間の心を表しているような気がした。
パイの生地のようにまっさらなところに、
ブルーベリーやアイスクリームのような
甘くて酸っぱいフレーバーを加えていくと、
オリジナルなパイができる。
失恋は辛い。
恋の悩みはつきない。
でも、こんなにも苦しい気持ちになるのは
本気でその人を愛していたから。
そう考えながら食べるブルーベリーパイは、
心なしかいつもより甘いかもね。
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