Tiny bubbles
2.贖いの歌
<Redemption song
by Bob Marley (1980)
Old pirates, yes, they rob I
Sold I to the merchant ships, ah
Minutes after they took I
From the bottomless pit
But my hand was made strong
By the hand of the Almighty
We forward in this generation, yeah
Triumphantly
Won't you help to sing
These songs of freedom?
'Cause all I ever have
Redemption songs
Redemption songs
Emancipate yourselves from mental slavery
None but ourselves can free our minds!
Have no fear for atomic energy
'Cause none of them can stop the time
How long shall they kill our prophets
While we stand aside and look?
Yes, i'm saying it's just a part of it
We've got to fulfill the book
Won't you help to sing
These songs of freedom?
'Cause all I ever have
Redemption songs
Redemption songs
Redemption songs・・・・
(大意)俺たちは祖国アフリカで海賊たちに捕えられ、奴隷商人に売られこんなところに連れてこられた。でも俺たちは負けない。自分たちの手で俺たちの歴史を完成させるんだ。君も歌ってくれるだろう?この自由の歌を。だって俺が歌うこの歌は俺たちを取り戻すための歌だから。贖いの歌・・>
「そうそう、こういう感じだったよな。」
久しぶりに、退職した先輩たちとの飲み会に二人で参加し、楽しそうに先輩たちと話している玲子の様子を少し離れたところから眺めながら、僕はそう思った。
その頃の玲子は、いつも人の話を一生懸命に聞き、決して否定せず、その話の中の良き点を見つけ出そうとしていた。僕らは同僚で、しょっちゅう仕事終わりでみんなで集まってワイワイやっていた。僕は玲子のひたむきで真っ直ぐな所に惹かれ、やがて付き合うようになり、そして結婚した。初めて会ってから十年ちょっと経っていた。久しぶしりの飲み会で、相変わらずの姿勢で先輩たちの話を聞いてニコニコしている玲子の様子を見て、僕は昔の感情が蘇ってくるような気がした。
今、僕たちは結婚してもうすぐ三十年、昨年就職した一人息子が家を出て一人暮らしを始め、久しぶりの二人だけの生活を余儀なくされていた。そしてこの数十年にお互いに経験した様々な事でお互いがわだかまりを抱え、結果二人の生活を何かぎこちないもにしているように僕は感じていた。
玲子には、頑なところが有り、結婚してから僕たちは、これからの暮らし方、子供をどうするかなどの大きな問題から些細な生活習慣まで、僕たちはしょっちゅう衝突し、ほとんどの場合玲子は自分の意見を曲げようとはしなかった。そして僕は心が狭く、酒の問題を抱えていて、酔っ払っては心ない言葉で、徹底的に玲子の頑なさを攻撃した。玲子は、やがて、少し言い合いになると、「もう、いいの。あなたは私のことが好きで結婚した訳じゃないって分かったから。」と言うようになった。息子が産まれてからは、二人で話す事は専ら息子の事になり、お互いを傷つけないためか、夫婦としてのどう生活していくかなど、パートナーとしての親密な会話は少なくなった。そして時折息子に関する事で衝突し、同じ事が繰り返された。
今、楽しそうに先輩たちと話している玲子を見て、これからの数十年、二人だけでの暮らしをお互いにとって実りあるものにできたらと心から思う。この三十年でお互いに受けた傷を修復し、わだかまり無く話をしながら日々過ごしていけないものだろうか。そんなことを思いながら、先輩たちと楽しそうに話す玲子の笑顔を眺めていた。