Tiny bubbles
3. スーパーマーケットで迷子
<Lost In The Supermarket
by Joe Strummer,Mick Jones,Paul Simonon and Topper Headon (1979)
I’m all lost in the supermarket
I can no longer shop happily
I came in here for that special offer
A guaranteed personality
I wasn’t born so much as I fell out
Nobody seemed to notice me
We had a hedge back home in the suburbs
Over which I never could see
I heard the people who lived on the ceiling
Scream and fight most scarily
Hearing that noise was my first ever feeling
that’s how it’s been all around me
I’m all lost in the supermarket
I can no longer shop happily
I came in here for that special offer
A guaranteed personality
・・・
(大意)スーパーマーケットで迷子になってしまった。もう楽しく買い物なんてできない。「保証された人格」っていう特売品を買いに来たっていうのに。僕は生まれたっていうより、落ちてたようなもんなんだ。誰も僕に気づかなかったし。小さい頃、2階に住んでた人たちが怖しい声で叫び言い争ってるのが聞こえた。その時の嫌な感覚がいつもついて回る。僕はスーパーマーケットで迷子。>
家族で旅行した時に、食糧を仕入れに寄ったイオンの巨大ショッピングモールで迷子になってしまった。中々買い物が終わらない家族に辟易して、トイレに行ってくると言って別のフロアーに有るトイレに行き、その後店内をぶらぶらしているうちに自分がどこにいるのか分からなくなってしまったのだ。入り口から辿って行けば、家族の居場所が分かるだろうと思って、自分がそこから入ったと思う入り口に行くとそこは違う入り口で、入り口が他のフロアーにも併せて計3つ有り、もう自分が何階に居たかも分からず方向感覚も失ってしまったような気がする。悪い事に、まさか迷子になるとは思わないので、スマホを入れたショルダーバッグを娘に預けて来てしまい、家族と連絡も付かない。あっちでも無い、こっちでも無いとうろうろ30分ほど店内をうろついた後、疲れ果て途方に暮れて、店内に置いてあったベンチに座った。
しばらくどうする事もなく俯いて座っていたが、ヒョイと首を上げると目の前に小さな男の子が立っていてニコニコして僕を見ていた。4、5歳だろうか、バイキンマンのプリント柄の長袖のTシャツに半ズボン、手には新幹線のオモチャを持っている。
「おじちゃん、どうしたの?迷子になったの?」男の子が僕に言った。
「うん、どうやらそうみたいなんだ。」僕が答えると、
「僕も何回か迷子になったことが有るよ。最初は泣いちゃったけど、もう平気なんだ。」
「へー平気なんだ、偉いね。おじちゃんは全然平気じゃないよ。どうしたら平気になれるの?」
「あのね、簡単だよ。迷子になった場所にはその場所でお仕事してる人がいるでしょ?その人を見つけて僕は迷子になりましたって言えばいいんだよ。そしたらその人がママに僕がここに居るって教えてくれるんだよ。おじちゃんもそうすればいいよ。」
「そっか。でもおじちゃんは大人だから、ちょっと恥ずかしいかな。」
「僕も最初は恥ずかしかったけど、ママに困ってる時に恥ずかしがるのが一番いけない事だって言われて、それで頑張ったらすぐにママに会えたよ。おじちゃんも恥ずかしがったらダメだよ。あ、ママが来た。じゃあ、頑張ってね!」まだ30歳になるかならないかの男の子の母親が訝しげに僕を見て、軽く会釈をして男の子の手を引いて去っていった。男の子は去り際、ニコニコしながら僕を見てガッツポーズをした。
その後、しばらくベンチで何を考えるでもなくぼんやりしていたが、意を決して僕は近くにいた店員に話しかけた。
「すいません、実は・・・」