王座戦振り返り②
第2局 金沢大学 O氏
いくらか緊張がほぐれて迎えた第2局は、相手の先手中飛車にて開幕した。
これもまた不得意な戦型である。直前まで何度も対策を変えていたことから不安もあったが、第1局に勝利したことで弾みをつけて迎え撃つ気持ちが整っていたように思う。
こちらの△8四歩保留型に対して先手も▲4八銀と工夫を見せてきた。
この工夫が厄介なのだ。
振り飛車党の工夫は芸が細かく、居飛車党が思いもよらない変化を繰り出してくるという印象がある。▲4八銀もその一つで、先に銀を上がったことでどんな違いが生じるのか、こちらにはまったくわからない。
自然に指す予定ではあったが、慎重に時間を使いながら進めていくことにした。
さて、決断の局面である。
私はいまだに▲4八銀の意図を掴みかねていた。△5七銀の筋を防いだだけなら▲7八金と上がる必要はなさそうだし、かといって離れ駒があるから美濃より脆いとも言い難い。
ここで読んでいた筋は
△6五桂▲6八角△5五銀左▲同銀△同角▲同飛△同銀▲7三角△6九飛▲5九金△8九飛成▲7九金△6四銀▲8二角成△9九竜。
これもかなりいい勝負だと思ったが、▲8一飛△5一香▲6六歩くらいで負けたらシャレにならないので、さすがに実戦でこれに踏み込む勇気がなかった。
よって本譜は自然に仕掛けた。
なんとなく安全策を踏んだつもりでいたが、▲7七桂の局面は結構面倒である。桂ぶつけの変化はたいてい、中飛車の術中である可能性が高い。
ここでもう一度腰を落として考える。
とりあえず飛車が遊ぶ展開になりそうなので、働かせつつも相手の大駒は押さえるように。
△6四歩▲4五銀△7五歩▲3四銀△5四歩と進む。
苦しい中でひねり出した手順だったが、これが相手を少し惑わせたよう。
質駒は多いが、なんとかバランスを保っているように見えた。
ここで相手も長考の末、▲6六歩と突く。
この手の善悪は未検証だが、感想戦では悪手という話になった。
たしかに△7七桂成▲同金△7六歩と手順に進めることができたので、有利の予感はしていたのだが、遊び駒の金が働いてくる展開になって結果的に勝負手のようになった。
ここから怒涛のラッシュ。
△6七銀不成▲5五金△6八銀成▲5三歩△5九成銀▲5二歩成△5五角
駒がどんどん取られるが、ここは見切らないと勝てないと思った。
かなり際どい戦いだが、この△5五角が詰めろ逃れの詰めろになっていることが幸便だった。
相手が詰みに気づかないまま終わってくれたらラクだったのだが、さすがにそんな甘い相手ではなかった。
▲2四桂△2二玉▲3八金として嫌な粘りを見せる。
自陣の手の入れ方が難しい。
△5二飛▲4六銀△6六角▲5九銀△7八飛
このあたりになってくると手が震えるもので、△7八飛と打つのもなかなか気合いがいるほどだった。
冷静になると大差だが、対局中は▲4八金打などと粘られると、敵玉が全然見えなくなるのでパニックになっていたかもしれない。
本譜は▲5七銀打△9九角成で味の良い手順が指せたため、少し安心できた。
まだまだ先は長い。
この▲8二飛も憎い手である。ちょうど良い受けがない。
△6二香▲5三歩△5一金▲8一飛成△3三馬
馬を引き付けて少し安心。
このあたりでよこしまな考えが浮かんできて、かっこよく決められないかなと思い始めた。
すなわち△2六桂▲同歩△3九銀▲同玉△2七桂以下の順である。
なんだかギャラリーも多かったので、過ってしまったのだが、昔から自分はそうやって失敗してきたということを思い返して何とか自制した。
本譜は▲9一竜に△4九銀と平凡な決め方にした。
▲6八銀上の受けに、△3八銀成▲同玉△6八飛成以下詰み。
のち投了となった。
かなり瀬戸際で勝負している模様ではあったが、明確な負け筋は作らないようにしっかり読み切れたと思うのでよかったと思う。
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