婚活日記
「俺、女のタバコだけは認められないんだよな」
そいつは、得意げに言った。
目の前にいる「女」はタバコを吸わないが、ひどく憤っているようだった。
いつから女はお前に認めてもらう必要が出てきた?
「女」の憤りに気づくこともなく、そいつは続けた。
「結婚したら、家で料理作って待ってて欲しいから、料理が上手いと株上がるよね。」
「そうなんだ、料理はうまい方がいいよね!」
大した中身のない話を延々と…と思いながらも笑顔で返した。うまく笑えている自信はなかった。
そいつに料理を作ることが仕事になるならお安い御用だが、万が一結婚したらこの中身のない会話を毎日聞くのかと思うと1人の方がマシだと女は思った。
女は早く帰りたくなった、目の前のアイスコーヒーを飲み干すとそいつはコーヒーをおかわりした。
あ、まだ続くんだ…。
帰り道、そいつは女に
「どうする?ライン交換しとく?」と言った。
女はその言い方がむかついたから断った。
「とりあえず大丈夫です!今日はありがとうございました」またも上手くは笑えていなかった。
ランチとコーヒーだけでも、奢ってくれた相手には礼を言う。これは人として当然のことだ。
しかし、また会いたいとは思わなかった。
あー今日もハズレだったな、
と思いながら女は家路に着いた。
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もう、いや、まだ?私は26だ。
しかし、いつまで私はこの生産性のない婚活を続けるんだろう。
心のどこかで、まだ理想を描いている。
心底好きになれる人、夢中になれて、その人以外何も要らないと思えるような生涯をかけた恋。
もう30も近い。
この間、恋愛をしてこなかったわけではない。むしろし過ぎたくらいしてきた。それなりにモテてもきたし、
胸を焦がれるような恋もしたし、男に騙されたこともあったし、男を捨てたことだってあった。
だからこそなのか、今になって、恋愛することがとても遠いことのように思える。
高所得に越したことはないが、こだわっているわけでもない。ただ、一緒にいて楽しく幸せに過ごせる相手が欲しかった。今はそれがとても難しい
家に帰ると、他の男にラインを返した。
この活動は継続こそ力になる。とおもっている。
こんなことなら昼から飲みに行った方が良かったと思いながら缶ビールをあけようと冷蔵庫を開ける、
今日飲んだ苦すぎるコーヒーが反芻したけど、飲まないとやってられなかった。
今目の前で向き合うべき現実は沢山ある。
仕事、恋愛、貯金、家族、人生…
抱え切れないほどの課題、しかし毎日は繰り返す。少しずつ切り離しながら、解決しながら、生きている。
まだ先の未来に出会う誰かが、今も同じ時間を生きているなら今すぐ会いにきて抱きしめてほしいと思った。
そんなことを考えながら350mlの缶ビールは空いた。
私の日々はまだ続く。