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2019年 ついに紙コミックと電子コミックの販売金額が逆転!出版月報(2月号)より

「出版月報」(2月号)で特集されている「コミック市場2019」によると、2019年に電子コミックが、紙版コミックの販売額を逆転しています。

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ただコミック市場全体の販売合計額は前年比で13%程度伸びており、コミック市場全体でみると伸長しています。その背景となるトピックをいくつか書いてみます。

1. 大手出版社のデジタルシフトの加速

集英社・講談社・小学館といった3大出版社を筆頭に、2018~2019年はデジタルシフトが加速しました。紙版コミックへの影響を懸念してデジタル対応におよび腰だった出版社も、大きく舵を切り始めました。さらに紙の本と電子コミックの配信を同時に行うサイマル配信が増えました。サイマル配信は、紙の出版と同時にプロモーション展開ができるというメリットがあります。紙の出版と電子化対応は工程が異なるのでタイミングを合わせるのが難しいですが、電子化の作業工程を短縮する体制が整ってきたといえます。

2. 配信サービス会社が提供するオリジナルコミックの躍進

主に電子書籍配信サービス会社が展開するオリジナルコミックが市場を賑わせています。このオリジナルコミックは、紙での出版をせずにデジタル配信を前提として制作されています(人気を博すと紙出版されるケースもあります)。オリジナルコミックには以下のような強みがあり、市場を席捲しはじめています。

1. 紙の出版工程がないので、配信サイクルが細かく購読性が高い
2. 初速が良ければ追加投資、悪ければ打ち切りして他に投資と無駄がない
3. トレンドに合わせた作風が柔軟に作れる
4. 出版社が絡まないのでプロモーション展開しやすい
5. 自社配信サービスの差別化につながる

3. マンガアプリの台頭による若年層の取り込み

LINEマンガ、ピッコマといったマンガアプリが大きく躍進しました。そもそも日本の電子コミック市場は、ガラケーから成長が始まり、スマホ転換してさらに加速しました。それを牽引していたのは、コミックシーモア(NTTソルマーレ)、めちゃコミック(アムタス)、Renta!(パピレス)、Booklive(ブックライブ)、ebookjapan(イーブックイニシアティブジャパン)、まんが王国(ビーグリー) といったようなWEBサービスでした。

そこに参入してきたのがアプリ型の電子コミック配信サービスで、2013年頃からcomico(NHN comico)やマンガボックス(DeNA)等がリリースされ、2017年頃からは LINEマンガ(LINE Digital Frontier)が急成長を始め、ピッコマ(カカオジャパン)、漫画Bang!(Amazia)といったアプリサービスが台頭してきています。これらのアプリ型の電子コミック配信サービスは、毎日無料などの施策で若年層を取り込んでいる傾向にあり、市場規模を拡大させたとみられます。

4. 海賊版サイト「漫画村」(2018.4 閉鎖)による市場拡大

2016年1月に開設され、出版業界に大きな問題となった海賊版サイト「漫画村」。2018年4月に閉鎖されるまでに、市場に与えたダメージは大きく、被害額は3200億円とも言われています。一方で、これまで電子コミックに触れてこなかったユーザー層が「漫画村」をきっかけにデジタルシフトし、「漫画村」閉鎖後もその傾向が続いたことで、電子コミック市場を押し上げたともいわれています。

電子版コミックが紙版コミックの販売額を逆転しましたが、紙の人気はまだまだ根強く、電子で試し読みして面白かったら紙版を購入するといった流れも多くあります。広告やプロモーションも相乗効果を生みます。2019年の紙コミックスの販売額が前年比5%で伸びているのは、そういった要因もあると思います。※2019年は「鬼滅の刃」が特にそれを牽引しました。


出版社がデジタルシフトできた背景のひとつには、紙版とデジタル版は密接にリンクし、互いが互いを支えあっているという考えがあるからかもしれません。デジタルシフトという名の通り、決して紙版に見切りをつけたわけではないでしょう。

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