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#1 『君はロックを聴かない』の「君」と「僕」は誰なのか

『君はロックを聴かない』は、私が初めて出会ったあいみょんの曲だった。

二年前、一緒にカラオケ行った子に「あいみょん知ってる?」って言われて、「名前だけ知ってるけどなんか学生が聴くやつでしょ」と答えたら「いやいや、まあとりあえず聴いてみろって」と言われてデンモクから送信されたその曲に、一瞬で心を掴まれた。


「○○みょんって、○○たんとか○○ぽよとかそういう系でしょ」とか思ってた自分を殴りたかった。その後すぐに『貴方解剖純愛歌』や『満月の夜』を、その一年後に『マリーゴールド』など、色んな曲を聴き漁った。

でも、あんなにも心を動かされたあいみょんの曲は、後にも先にも『君はロックを聴かない』が一番なんじゃないかなと思う。


「君」とは誰なのか。


この曲の解釈で一番無難なのが、「好きな子は自分とは違う趣味だけど僕の好きなロックも聴いてくれたらいいな」的なやつ、かな?

多分これには、リリース当初から色々解釈がされていて、腐るほど記事とかがあると思うけど、あえて私が一番落とし込まれた見解を書きたい。


ある日、ふとYouTubeのMVのコメント欄を見ていたら、こんなコメントを見つけた。

(もう一回探すの大変だったYO)

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これを読んだとき、最初は「?」と思ったが、そう思いながらもう一回聴いてみて「は!!!!」とした。

本当だ。私は勝手に歌詞に「君」がでてきたらまあ8割方が好きな人、残りが友情系の曲、くらいにしか思ってなかったけど、もしかしたらこの曲の「君」と「僕」は、そういう見方なのかもしれない。と。


そして、このコメントでは「君」は恋に悩む娘と書いてあるが、息子と捉えても聴けるので、男の子はそう考えてほしい。


多分何が正解とかじゃないけど、私はその解釈で聴くのが一番しっくりくるなと思った。


「僕」の青春ロック。


歌詞の最初から。
(聴いたことない人は是非聴いてみて)

少し寂しそうな君に
こんな歌を聴かせよう
手を叩く合図雑なサプライズ
僕なりの精一杯
埃まみれ ドーナツ盤には
あの日の夢が踊る
真面目に針を落とす
息を止めすぎたぜ
さあ腰を下ろしてよ
フツフツと鳴り出す青春の音
乾いたメロディーで踊ろうよ


YouTubeのコメント欄にもあったように、"ドーナツ盤"って多分レコードのことだよね。


「聴いてみろよ」と言うわけでもなく、それでも棚の奥から引っ張り出してきたレコードを、何も言わずにかける。

子どものために、と思ってるが、もちろんそれを聴いてるのか聴いてないのかわからない。

それでも自分の時代の青春ロックがレコードから流れ始める。

君はロックなんか聴かないと思いながら
少しでも僕に近づいてほしくて
ロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌であんな歌で
恋を乗り越えてきた


たぶん「ロックは趣味じゃない」と言う娘のことだから響いてないんだろうけど、

「僕」が乗り越えてきた恋は、こんな歌で、あの時のロックで、元気付けられたり忘れてきたりしたんだよ、って。


ロック「なんか」って表現してるところもまた良い。


僕の心臓のBPMは190になったぞ君は気づくのかい?なぜ今笑うんだい?嘘みたいに泳ぐ目
ダラダラと流れる青春の音乾いたメロディは止まないぜ
君はロックなんか聴かないと思いながら
あと少し僕に近づいてほしくて
ロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌で あんな歌で
恋に焦がれてきたんだ


流れてきた自分の青春時代の曲で、昔に戻ったような気持ちのお父さんが、1番では「ほら腰を下ろしてよ」と言っていたのに「乾いたメロディは止まらないぜ」と、少し若返ったような気持ちになっているのかなと思う。

乗り越えてきただけじゃなくて、恋い焦がれたり色々あったんだぞ、と。


そして、ラスト。

君がロックなんか聴かないこと知ってるけど
恋人のように寄り添ってほしくて
ロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌であんな歌で
また胸が痛いんだ
君はロックなんか聴かないと思いながら
少しでも僕に近づいてほしくて
ロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌で あんな歌で
恋を乗り越えてきた
恋を乗り越えてきた


普段全然恋愛の話なんてしないし、お父さんの昔の恋話なんてしたこともないけど、たまには聞いてやるから話せよ。って、言いたいけど言えないお父さんの声が聞こえる。

あの曲で、この曲で、乗り越えた、忘れたなんて言うけど、今あの時のメロディーに乗せて思い出す青春で胸が痛くなる。


若い頃の恋愛は大人から見れば簡単だと思うかもしれないが、当人たちは必死だ。

解決することはなくても、あの曲で気持ちが救われた、そんな一曲が誰しもあるだろう。

それはいずれ、青春の曲となり、自分が大人になった頃には忘れてしまうかもしれない。


「簡単じゃないのはわかってるけど、そう落ち込むなよ。お父さんだって昔はそうだったさ。」と言いたくても言えない、そっとレコードをかける不器用な父と子の話。


曲の解釈には色々あるし、自分が正解とも何が正解ともわかんないけど

そう考えたときに、私はこの曲がもっと好きになった。



今回の解釈をもとにして書いたショートストーリー




♬君はロックを聴かない/あいみょん








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