序 オンラインショップとそそり立つカベ
《この物語は、自分の描いた絵を販売するオンラインショップを立ち上げようとした男が、その過程でぶち当たった
“心のカベ”
を悶絶しながらどうにか乗り越えていく過程をセルフインタビューしたものである(全7話)
序の今回は、なぜオンラインショップを開設したのかを聴いた》
ーーーまず初めにオンラインショップを開設しようと思ったきっかけを教えてください
『私は2019年4月から絵を描きはじめました。キャンバスにバッと絵の具をかけていくような抽象画です。その11月には仲間たちと「作品展わをん 2+1の情景」という展覧会をひらきました。そこで、あなたをモデルにした抽象画を描きます、と募集をかけたところ、ありかだいことに7名の方が申し込んでくださいました。描いた絵はお代をいただいたので、わをん展の会期後、ご本人にお渡ししました。それから、何枚かの絵を描きました。どれもそのとき得たインスピレーションを形にしたものなので、思い入れがあります。だんだん絵は増えていきました。だんだん飾る場所もなくなってきて、どうしようかなと思っていた。けれど、どれも自分の一部のように感じて、手元に置いておこうとしていました。』
ーーーそれを今回、手放そうとしたのはなぜですか?
『自分が描いた絵の本当の役割はなんなのだろう、と考えたのが大きかったですね。僕にとって作品としての絵は、外の世界と橋渡しをしてくれるものだと気づいたんです。僕は積極的に人と関わっていくタイプではないのですが、わをん展では絵を通して、初めましての方と繋がったり、ご無沙汰していた方とまた話す機会が生まれたり、とにかくたくさんコミュニケーションするきっかけになったんです。絵を描いていても、外の世界に出さなければ起こらなかったことです。同時にお金という豊かさももたらしてくれました。リアルに生活費として助かったんですw そういうことを思い出したとき、描いた絵をいつまでも手元に置いておくのは、絵の本当の役割を果たさせてあげていないんじゃないかと思ったんです。』
ーーーこのインタビューも絵を外へ出すと決めなければ実現しなかったものですね。
『本当にそうです。また、この絵を僕以上に必要としている人がいるんじゃないかとも思いました。描いた本人として、そういった責任をきちんと果たさなきゃいけないな、と思ったんです。』
ーーーなるほど。ただ、そういった固い決意をもってしても、実際にオンラインショップを開設するのは大変だったとw
『はい、たくさんのカベがありましたw 決意と実際の行動はまた別物でしたね。』
ーーーそのカベを乗り越えられたのはなぜでしょうか?
『もう後には引けない、と感じていたからですね。ここで、やっぱ売るのやーめた、ってなったら元の木阿弥で、なにも変わらない。それはちょっと恐かったんです』
ーーー恐かったとは?
『ここでやめたとしても、なんらかの出来事が起こって、痛い目をみてw 結局、売る流れになっていくだろうなと思ったんです。痛いのはイヤですから、今回で決めなければとw これは絵が与えてくれた成長のきっかけだと思うんです。絵は描いている最中も、描いた後も僕を成長させてくれます。やっぱり成長と変化、それが楽しいんですよね』
ーーーあのとき見たカベの向こう側にいる今、どうですか?
『こちらに来て、よかったと思います。こちらにいる方が自然だったんだなと感じますね。というのは、カベを超える前は自分ではないもの、不必要な価値観とか常識とか決めつけとかで自分を縛ってしまっていたので、縄が解けた今は自由に動けています。けれど、これですべて終わりではありません。まだカベはありますので、乗り越える必要があります。ただ、そのテクニックとか心構えとかの経験値は上がっているので、今度は前ほどためらうことはないかなと思っています。目下のカベはオンラインショップを続けるカベですかねw』
次回から、オンラインショップ開設にあたってあらわれた“カベ”と対峙したときの話をお送りします。
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