オオクワガタを初めて採った時のこと
2021年の夏。あるライトトラップの動画に目が留まった。
当時私はそこまで昆虫採集にハマっておらず、採集に行ったとしてもミヤマクワガタの街灯巡りをシーズン前半にやるのみであった。その頃、私には「20歳の年までにオオクワガタを採る」という目標があったが、そもそも採集するための知識等何もなく、チャレンジもせずに時間だけがただ過ぎ去るだけであった。しかし、その動画を見て
「ワンチャン俺でも採れるんじゃね...???」
と安直に思ったのであった。立派な採集道具もないため、採集方法はミヤマクワガタ採集と同じ街灯巡りの一択のみ。なるべく新月に近い日を狙い、車中泊でチャレンジする事に決めた。
食料を買い込み、まずは泊まり込みのバイトへ行き、バイトが終わったらその足で採集へ行った。目的地に設定した場所まで片道4時間。今まで経験した事がない、長い道のりのため、ワクワク感と不安感が相まったなんとも言えない気持ちでソワソワとしていた。
車を走らせること約3時間、漸く目的地のある県に20時過ぎ頃入った。ここからは街灯巡りをしながら目的地を目指した。
何匹かクワガタは拾うものの、夏も終わりに近づいており採れるのは欠けや擦れのある小さな個体ばかり。街灯の下にひっくり返っている大きい影に一瞬ドキッとして近寄ってみるがどれもカブトムシであった。有力な情報を得て期待が高まっていた反面「やっぱ現実は甘くないか。」と心の中で思いながら街灯を見て周った。
21時を過ぎた頃、このペースだと目的地に着くのは1時過ぎになってしまうと、まだ着いていなかったことに焦りを感じた私は、虫が集まっている街灯のみを見て周った。そして大きい昆虫がひっくり返っている街灯もスルー、なぜなら全部カブトムシだったからだ。
目的地まで残り20分程の場所でまた大きい昆虫がひっくり返っているのを見つけた。今までもういいよと思う程カブトムシを見てきた私は「またカブトムシだろ。」と独り言を呟きその場を過ぎたが、何を思ったかブレーキを踏み、その場所まで戻った。車を降り、ひっくり返ってジタバタしているそいつに近づき、懐中電灯を当てなんの昆虫かを確かめたその時
「...(思考停止)。」
「えっ...?えええっ?!?!オオクワ!?オオクワ!!オオクワ!!オオクワ!!オオクワ!!オオクワ!!オオクワ!!オオクワ!!オオクワ!!オオクワ!!オオクワ!!!!!」
なんと、そこに図鑑とペットショップでしか見た事のないあの昆虫がいたのであった。ビギナーズラックにしてはかなり豪運すぎる。私はその場を何周も回り、飛び跳ねて喜んだ。そして彼女・親・友達に電話を掛け、その喜びを伝えた (今思い出すと相当恥ずかしい事をしてしまっていた) 。2本の日本刀のような反りのある大顎、一対の斜め上に向いた内歯、何度も何度もその姿を確認し、体の様々な場所を何度もつねって夢じゃない事を確認した。初めて経験する脳汁に、この黒い昆虫を持つ手はかなり震えていた。
目的地に到着し、またオオクワガタを確認する。本当に採ってしまったんだなと、採った瞬間のことを思い出し、余韻に浸って眠りについた。
数時間後、目覚ましの音に起こされまた捜索に行くが、66 mm程のミヤマクワガタを1匹採ったくらいで、度肝を抜かれる成果なくその日は終了してしまった。
その後は特にオオクワガタを追加できず、初めてのオオクワガタ採集遠征は幕を閉じた。
以上「オオクワガタを初めて採った時のこと」でした!!
Memories
fin.