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【イベントレポート】しなやかさのなかの芯の強さ。#しあわせことば
最近、糖分足りてますか?
ついつい「きゅん」としてしまうような理想の妄想のシチュエーションを語らせたら今、この方の右に出るものはいないのではないでしょうか。
あんなに甘くてほっこりしてしまう妄想はどこから出てくるのか。
とめどなく出てくる理想の展開を垂れ流しているのか…!と近ごろ糖分不足なわたしは糖分のおすそ分けをいただこうとわくわくしながら足を運んだのは、だいすきなおふたりのBOOK LAB TOKYOさんでのトークイベントでした。
【author's TALK **#14**】小さな幸せを紡ぐことば
夏生さえりさん(https://twitter.com/N908Sa)
最所あさみさん(https://twitter.com/qzqrnl)
さえりさんの甘い言葉の数々はいったいどこから出てくるのでしょうか…?
女心をつかむための企画の立て方や、心掛けていること、おすすめの恋愛小説などたっぷりお話を聞かせていただくことができたので、まとめてみました!
ネトスト力の高さが妄想のタネ
まず、妄想はあふれてきているものなのか…?というみんなが一番聞きたいことですが、
自分の願望ももちろんあるんですけど、と前置きはありつつも「恋愛に関する妄想はあふれてくるもの、というわけではないです」とさくっと否定するさえりさん。
「前職で忙しく働いていたときに想像力が死んじゃうと思ったんです。”ここにないものを考える”ことが減ってきたなあと思うようになって、140字におさめる文章のトレーニングにもなるし、と通勤時間に考えるようになったんですよね」と妄想胸キュンツイートの始まりを教えてくれました。
ツイートするタイミングのときにみんながどんなことを考えているかを考えてシチュエーションを作る。
→ 考えていることを知るために、Twitterで合うワードで検索してどれくらいの人が自分と同じ気持ちなのか調べる。(例えば雨の日だったら”雨 出たくない”とか)
→ 出てきたツイートをしている人がどんな人なのかどんなことをファボしているか見に行って傾向を探る
→ 実際につぶやいてみて、反響の多かったものをいろいろやってみる
自分もフォローしてないし、フォローもされてない人のつぶやきとかもガンガン見に行って参考にしているという、恐るべきリサーチりょ…いえ、ネトスト力…!(はそんなさえりさんの能力がいかんなく発揮されています)
Instagramは着飾ることがあるので、参考にするのは専らTwitter。
見られてると思ってない人のTwitterを見るのがすきなんです、わたしのストーキング力やばいですよ、とにやりするさえりさん。
文章を考えるというよりも、頭に浮かんだ映像を文章に落とすという作業をしてツイートしているのだそうです。
幸せほわほわ系よりも失恋どろどろ系がすき
BOOK LAB TOKYOさんでのイベントということでさえりさんのおすすめの恋愛小説も紹介していただきました。
・ティファニーで朝食を(トルーマン・カポーティ/訳:村上春樹) http://amzn.asia/e54uMyY
・思いわずらうことなく愉しく生きよ(江國香織) http://amzn.asia/akFR7ig
・予定日はジミー・ペイジ(角田光代) http://amzn.asia/hg2Ok04
・くまちゃん(角田光代) http://amzn.asia/dz5zqRg
・わたしの彼氏(青山七恵) http://amzn.asia/ivzl9ZS
・かわいそうだね?(綿矢りさ) http://amzn.asia/8NibLib
・行動することが生きることである(宇野千代) http://amzn.asia/j6qz08j
参考にしている作家さんは特にいるわけではないけれど、江國香織さんの形容詞の言い回しはすきですし、エッセイなんかもよく読みます、と並んでいる本を紹介しているうちに「あれ、失恋系が多いですね(笑)幸せなものも読みますが、あんまり自分のなかに残らないかもしれないです。結構失って終わり、みたいなどろどろしてるものがすき」とほっこりツイートを数多く生み出しているさえりさんの意外な好みに会場が若干ざわざわ。
本との出会い方は本好きのお姉さんからの紹介やBOOK OFFをふらふらしてチョイスする!ということです。
小説ではありませんが、宇野千代さんの「行動することが生きることである」は最所さんもおすすめのエッセイだそうです。(さえりさんおすすめの本はイベントのあと購入できたのですが、これがあっという間に売り切れ!)
たくさんの人に届けるまでがわたしの仕事
より多くの人に読んでもらうために大切にしていることとして「立場の違う友達を何人か思い浮かべてその人たちがどう思うかを考える」とのこと。
「立場の違う人たちが読んで違う風に受け取らないかな。責められてるように感じないかな。悪いように受けとらないかな。というのはよく意識していることです。一日記事を寝かせて見直してみたりもします。」
「最終的に多くの人に届けるまでが自分の仕事なので、どう考えてもバズらないだろうな、とか、記事のイメージがわかないもの、自分と相性が悪いと思うものは最初から仕事を断ることもあります。」
「このテーマのものは母数はどれ位なんだろう、Twitterの人たちに受けるのかどうか、とかもよく考えます。わたしが受けて相性がいいかということを優先するので、勇気はいるけれど、次の仕事につながらないだろうな、と思うものは断ります。」と駆け出しライターにはなんとも刺さるおはなし。
記事を作って届ける際も”ここ!!”っていうパワーワードを作ってそこで引きが作れるように、かつ自分の感想も一言入れられるように考えているそうです(だから、そのワードを使ってRTしてくれたりする人を見ると「そうそうそこなのよ!」と握手したくなるくらいテンション上がる)
本アカウントはノイズを消すために感想言ってくれた人をRTしたりはしてないそうです、でもエゴサは死ぬほどしているのでさえりさんファンは安心してください(?)
反応をつかみにくい紙のむずかしさ
WEB上での記事が主戦場ではありますが、本も3冊出版されているさえりさん。
・今年の春は、とびきり素敵な春にするってさっき決めた
・口説き文句は決めている
・今日は、自分を甘やかす
WEBでは、最初にどれだけ引きを作るかということが大切だし、読者の人に”自分にとって良いものか”と思ってもらえるように工夫しているということでしたが、本の場合だといまいち反応がわからないことが比べると不安を感じたということです。
・何部売れたのかはわかるけれど、自分のために買ったのか、プレゼントするために買ったのか、買うに至った導線も見えづらい
・フォロワーさんだからって買ってくれるわけではない(フォロワーさんは全部で17万人いるので、単純計算17万冊売れていてもいいのにそういうわけではない)
・WEBとちがって感想もダイレクトに届くわけではなく、ハッシュタグをつけてもらうとかお便りをもらわないとわからなかったりする
・ちょっとここ反応悪かったなと改善点がわかっても修正できるわけではない
などなど、WEB上で記事を作成することと本を出す際の違いを教えてくれました。
ちなみに「今年の春は、とびきり素敵な春にするってさっき決めた」は韓国で出版がきまったらしいです。(すごい!)
何をやっているかわからなくならないようにしている
今や、動画の監修や原案など多岐にわたって仕事をしているさえりさんですが、ひとつブレないようにしているのが「文章にまつわる仕事ならする」と言うこと。
恋愛系コンテンツを作っているからという理由でお仕事が来ることも多いけれど(恋愛アプリの広告とか)それが文章にまつわることなのかどうかで判断しているそう。
シナリオのお仕事を最近はいただくことも多いみたいで、ドラマ書きたいとのことです。(見たい!)
胸きゅんにこだわっているわけではなく、女の子がちょっとはっぴーになれたらいいな、というのが仕事の選び方だそうです。
でもどうやったらあんなに的確に女心を掴むことが出来るのか…!
最近は壁ドンなどの二次元なら許されるけど、三次元でしたらちょっと過剰過ぎない?というものが多いので、妄想も「王子さま」とか「どSな先輩」とかはあまり出さないようにして少しリアルに、より日常に寄せたものを作ることを意識しているということ。
特に電車内など必ずしも一人ではない空間で見ることも多いと思うので、そういう場所で見ても恥ずかしくないか、人にシェアしやすいものであるかを考えているそう。
・2~3人がこれ体験したことあると思う
・3~4人がいいなあ…と思う
・2~3人がこんなのないでしょ(笑)と思う
という絶妙なラインを狙っているということで、さながらきゅんを生み出す職人さんのようなストイックさを垣間見ることができました。
女性は特に「共有したい生きもの」だと思うので「わたしはコレ!」と言いたくなるコンテンツはシェアされやすいかなということ。
人をちょっとはっぴーにするものをつくりたい
”さえりさん”としてのツイートがあまりにクリーンなので妖精なのかと思っていた最所さん(と、わたしたち)
ところが意外にも「Yahoo!知恵袋」や「発言小町」を見るのがだいすきなんですよ~と軽やかに笑うさえりさん。
ああいうものをたくさん読んで自分と違う人間がいっぱいいるって知りたいのだそうです。
「そういうものをよく読むことで妄想も浮世離れし過ぎないし、少女漫画とか夢あふれるものにに憧れているわけではないからそういうところが日常に寄せられるのかなと思います。」
どういうことで人が傷ついてしまうのか知ることができるのがいい、と趣味ではあるとは話していたものの、それが仕事につながるってどこまで研究熱心なんだと感動すらしてしまいました。
共感を産むためのマイルールとしては、出来る限り強い言葉は使わないようにしているし、出来る限り自分と近そうと思ってもらいたいと考え抜いている仕事ぶりは、17万人のフォロワーがいてもいわゆる炎上になったことは一度もないというからびっくり。
いかに炎上しないで影響力をもてるのか実験中なんだといいますが、唯一挙げるとしたら『【結婚したい】年下彼氏と結婚するまでに踏みたい理想のステップ71』という記事を作ったとき2チャンネルにまで記事が広がり「やべえババアきたw」ともりあがったことかな、と。
でもそれもここまで記事が広がった!と嬉しかったそうで思わずスクショしたというからメンタルタフネスさえりさんでした。
ゆるふわのヒモはもう書けないかも
「これからはシナリオも書いていきたいです。人をちょっとはっぴーにさせるものを変わらずつくっていきたいけれど、最終的には結婚して子供産んでママブロガーになりたいんですよね。
でも、子育てしてるときにゆるふわパーマのヒモを飼う妄想は出来ないかもしれません。やっぱり年齢や立場によって作れないものもあるんだなと最近知りました。」
文章かく人という括りでライターと名乗ってますが、動画や音声などが最近流行ってるし文章つくったうえでさらにひとつ上だったりとか、いろんなものに関わっていきたいです、ということで本編は終了しました。
***
ここからは質問コーナー。
「仕事が来るようになったきっかけは?」
前職では毎月一本記事を書くことがノルマだったので、それを頑張りつつ妄想していたら独立当時8万フォロワーくらいはいたので、「独立しました、お仕事ください」宣言をし、生活していくようになった。
「モチベーションの保ち方はなんですか?」
取材が面白かったから早く伝えたい!なるのが一番美しいモチベーションだけで、働かないとお金がもらえないですし、これを書いたらあのコートを買おうとか言い聞かせて頑張っています。
「自分らしい文章の書き方はありますか?」
ブランディングという面では考え抜いて自分らしさを出しています。女の子向けなのか、はっぴーになるのか、とか。広告記事も受けすぎると自分らしさが消えてしまうので、クライアントとのせめぎあいで喧嘩もしちゃうことあります(笑)拡散までするのがわたしの仕事なので、これをやることで次の仕事に響かないように、何のためにやっているのかはよく考えています。
「ロールモデルはいますか?」
いないです。そういう人が欲しいなと思ってしまったこともあります。近い存在と言えばはあちゅうさんかなと思うんですが、わたしははあちゅうさんほど野心がもてなかったので、なんとなくこのままで進んでしまって、そういうやりかたもあるんだなと今は思えています。
わたしが最初に本を出版するときにすごく不安で、はあちゅうさんはどうでしたか?と聞いたら「早く私を見つけてって思っていた」と返答が来たんです。すごく素敵な方です。
わたしに近いジャンルの人は小さい世界のなかでマイクロインフルエンサーのようなかたちでいるのではないかなと思います。
***
あくまでも物腰は柔らかく、だけれどしっかりしたマイルールやブランディングに基づいて生きている姿は本当にかっこよく、キラキラして見えました。
自分のやりたくないものを考えてそこから行動すること、軸をもつこと。
ほしいなあと期待して行った糖分はもちろん、仕事をしていくうえでとても大切なものを学べたような気がします。
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