ShortShort News と言うX上のメディアについて
端的に言うと、非常に胡散臭い。
情報の切り取りによる印象操作を平気で行い、科学的データの検証などはまともに出来ていないように見える。
確信犯的に、
親ロシアのプロパガンダ、ロシアナラティブの情報拡散
反米意識、自由主義陣営への懸念を増幅させる情報拡散
反ワクチンなど、各種陰謀論のてんこ盛り
を行いながら、大手マスコミがスルーしがちな”真実”を発信しているかのような公平中立を装っている。
当人達にとっては真面目に取り組んでこの結果ならば、ジャーナリズムに携わる資質に疑念を生じさせるし、最初から扇動が目的ならばジャーナリズムではなくなる。
何方にせよ、関わって良い事は無い。
ShortShort News と言うメディアについて
設立したのはXアカウントでJ_Sato氏。
また、J_Sato氏の過去ポストから、You氏が記者として活動している事が分かる。
J_Sato氏もYou氏も新型コロナへの疑念をずっとポストし続けており、You氏は反ワクチンでSNS上の認知を上げた人物だ。
ワクチン陰謀論ウォッチャーが名指しで彼について語っている様子がネット検索でヒットする程度には有名だ。
ちなみに、You氏の固定コメントは活動への支援のお願いページがリンクされているのだが、そのペイパルIDは、
「.ru」
で終わっている。「.ru」は国識別コードでロシアを示す。
ペイパルIDはアカウント登録時のメールアドレスが使用される仕組みであり、ここからYou氏はペイパルIDを国識別コードがロシアのメールアドレスを使ったと言う事が分かる。
この情報だけで、「ロシアのスパイか!?」と言い出すのは論理の飛躍があり、疑いを提起するには弱すぎる情報だと私は考える。
元々は翻訳者をやってたらしいので、仕事の都合でロシアのメアドを持ってた可能性もあるかも知れない。
まぁ、分からない部分は判断を保留するのが正しい態度であり、可能性の上に可能性を継ぎ足したような推論で相手を疑い出すのは陰謀論まっしぐらとなる為、オススメ出来ない思考様式だ。
ただ、このメディアの方向性として、親ロシアで反米、反西側諸国の傾向が見て取れる状況と合わせると、疑われやすい行動を敢えて取ってるのか、疑われる事に対して無頓着な人なのか?と訝しがられても仕方ないかなと言うのが率直な所だ。
(この記事の読者が危ない橋を渡らないよう再度書き記しておく。
私は実際にYou氏について、ロシアとの関係性をそこまで疑っている訳では無い。
寧ろ、本気でエージェントが付いて何かをさせているなら、痕跡は消そうと指示もされるのが普通じゃないかと思うので、単純にロシアナラティブに感化され、共感してSNS活動するようになった
「親ロシア的傾向の強いただの日本人」
辺りが一番可能性として高そうに思ってる。
と言うか、客観的な判断材料がほとんど無いので、断定的に語ろうとする意味が無いし、「○○に違いない」的な断定的表現でネットに書き込むと、最悪訴えられかねないので、その手の決め付けやそこから派生して個人攻撃、誹謗中傷はしないよう注意喚起したい。
言論の質への疑義と個人攻撃は全くの別物だ。)
「○○ News」と名乗るメディアはその名前だけの印象から、それなりの信憑性を期待してしまいそうだが、情報の質はかなり編者の政治的スタンスで歪められている可能性を疑わせる。
「地球温暖化を理由に、水田稲作が狙われそうです。」と言う印象操作
ShortShort News と言うメディアの性質が良く表れた投稿を一つ挙げる。
2024年1月20日の投稿。
1400万回も閲覧される程、大いにバズった。
で、これに返信する形でこれも投稿。
要は、ShortShort News と言うメディアは反モンサントの立場で、農業系陰謀論にどっぷり浸かっている訳だ。
「『モンサント』と言う種子を扱う世界的企業が食を通じて世界を牛耳っているのだ」
的な陰謀論がそれなりに流行り、日本の種子法改正もその文脈でまことしやかに語る向きもあった。
だが、世界を牛耳っていたはずのモンサントは、バイエルによって買収され、企業名は消滅した。
その時点で正気に戻れなかった人達は、「モンサントをも併呑したバイエル」を新たな陰謀対象と見做し、今も無責任な言説拡散を行っているようだ。
拡散された動画は、切り取りによって印象操作されている
大バズりしたのは、その切り取り方から「米を作るなって話か!?」との誤認が拡散した事が大きい。
だが、別にビル・アンダーソン氏の発言は「米を作るな」なんて事は言っていない。
「水田での稲作では、その工程でメタンガスが発生してしまう」
と指摘し、メタン発生を減らす手法に言及したり、水資源の消費を減らす農法の提案を行っているに過ぎない。
この部分については、このnote記事が丁寧に解説している。
また、当該発言を含むこのセッションはYouTubeにも動画が上がっている。
此方から確認可能だ。
ダボス会議の公式HPからも視聴可能だが、字幕の選択機能の面でYouTubeの方が見やすいと思う。
一応、此方も貼っておく。
私もざっとビル・アンダーソン氏の発言部分を視聴したが、SciKotz氏のnote記事にある通りだと思う。
そんな問題視する所も無い話を、バズる為なのか、ダボス会議的な活動への悪感情を募らせているのか知らないが、意図的に情報を削り、閲覧者の誤認を積極的に誘発している。
ShortShort News とはそういうメディアなのだ。
別にビル・アンダーソン氏主張に全面賛同する訳じゃない
だからと言って、ビル・アンダーソン氏主張を歪め、閲覧した人にあたかも水田耕作を止めさせようとしているかの印象が残るような切り取りは正当化出来ない訳で。
農作業の効率化は食糧問題への対応、化石燃料の消費量削減とも繋がる為、常に新たな取り組みが行われてる。
その中には、ビル・アンダーソン氏が主張する直播栽培も含まれる。
育苗、移植作業が無くなる事で、農家の規模拡大も容易となる。
新しい栽培法で、メタン発生を9割も削減できると言う話も、それに伴う代償があるのかどうかと関わるものの、大きなマイナスが無いのならば広く導入される可能性もあるかも知れない。
一方で、水資源を守る文脈でなされた主張は、現実にどれだけ有効なのかは微妙なところがありそうだと直感的に思った。
基本、稲は熱帯性植物で、稲が育つ地域は多雨地方になる。
世界全体のデータでは、安全な飲み水どころか、生活用水すら事欠く地域は少なくない。
この為、世界的には限りある水資源の有効活用の観点で様々な取り組みが行われている。
それは分かるが、水田での水資源使用量を削減した所で、使わなかった陸水(河川や湖沼など、陸上の水。対義語は海水)が水資源に困窮する地域で使える水になる事はほとんど無いのではないか?
降水量の少ない地域でも稲作と言う選択肢が増えるかも知れないが、水資源が豊富じゃないなら乾燥に強い作物を選ぶのが無難だろう。
このような理由から私には稲作関連で水資源使用量削減が具体的にどのようなメリットをもたらすのか、良く分からなかった。
降水量の少ない地域で、より少量の水によって各種作物が育てられる技術開発は望ましい事は分かるのだが、この動画だけでは稲作における水資源使用量削減が環境問題にどれだけ貢献するのか、その真意が十分伝わらないように思った。
長々語ったが、私の見立てが絶対に正しい訳も無い。
私が妥当性を感じた部分についても、実際の農業研究者、従事者視点ではツッコミを入れたくなるところもあるかも知れない。
私の抱いた水資源関連の疑問についても、専門的な見地から私の方が全くの的外れと認定される可能性もあるだろう。
そう言った論理的な指摘はどっちの方向からでも行われるべきだし、その指摘への再反論、再々反論を経てより妥当性のある結論へ近づくのなら、それは社会的にも有意義で、知的好奇心も満たすものになろう。
しかし、ShortShort News 的な印象操作では、そのような方向に議論が進む事は無い。
閲覧した瞬間に疑わしさに気付けた慎重な人を除き、大半の人にとっては時間をただただ無駄にした事になる。
しかも、虚偽情報を信じ込まされているのだ。
圧倒的に社会的な損失を生じさせている。
元々、ダボス会議自体が「意識高い系の金持ちが集まる趣味の世界」的な側面もあるし、そこに直接絡む機会の無い人達が斜に構えたり、出てきた議論にツッコミを入れて消費したがる気持ちになるのも、仕方ない部分もある。
ShortShort News の投稿が1400万回も閲覧された背景に、
「いけ好かないアイツらが、また訳の分からない事を言い出したのか」
と認識されてしまった事があると思う。
「環境」と言うお題目の為なら、おかしな理屈でもゴリ押しして来そうな悪印象を持たれているのは、彼らの責任の範疇と言えるだろう。
だが、その悪印象を悪用する形で歪曲情報を拡散する行為が正当化出来るはずも無い。
まとめ
ShortShort News の発信情報は、客観性を期待出来ない。
「中の人がそう信じている」のかも知れないが、第三者的には情報の切り取りを疑い、解釈の妥当性吟味を経なければ、事実として拡散するのはデマ拡散に加担してしまう可能性が付きまとう。
多くの人は、そんな面倒な手間を掛けるはずも無い。
目に入った情報を、「事実その通りなのだろう」と期待してコメントしたり、リポストし、情報が拡散されてしまう。
虚偽情報が拡散される事の不適切さを認識する人ならば、
ShortShort News の情報は拡散しない
と決めてしまった方が良い。
ロシアナラティブについて知り、自由主義陣営の政治不信を煽る言説について知ろうとする場合に限っては、役に立つ可能性があるかも知れない。
どちらにせよ、扱いに注意が必要なアカウントである事に変わりは無い。
親ロシアプロパガンダを知る手段とする場合でも、木乃伊取りが木乃伊にならぬよう、心して掛かるべきだろう。
<了>
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