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【怪談】ノック【実話系】

これは3年前の出来事だ。
私は車で東京と山梨の県境を走っていた。
どこの街道かは、まあ、道を走るのに慣れた人ならわかるだろうからここでは秘しておく。

とにかく、だ、その山道を走っていた時に、街灯もほとんどなく、自分の車のライトだけが頼りだった。
たまにすれ違うトラックや車。
走り屋に出会わなかったのは幸運だった。

信号もない道だったため、ほぼほぼノンストップで走り続ける。
時速は曲がりくねった道だったこともあり、30~40km/hくらいだったろうか。
コン、コン、コン
その車の後部座席の窓がノックされた。
虫が当たった?
そう思ったが、明らかに3回連続でノックされた。

なにかが車の速度に合わせて移動している。
こういう時、見てはいけないのだろうが、私はバックミラーとサイドミラーを確認した。
ただ、そこには何もいない。
その事実もまた怖気立たせる。
そして次の瞬間、私はドアのロックをかけていた。
ガチャンと音がした次の瞬間。

コン、コン、コン、コン、コン、コン
6回のノック。
その直後に、
ガチャガチャガチャ
ドアを何かが開こうとしていた。
鍵をかけるのが遅れていたら、そう思うと、背筋がぞわりとした。

なにかはまだそこにいる。
そう思った私は次の瞬間、アクセルを踏んでいた。
カーブが終わり、長い直線に入る。
そして、そこを抜ければ湖沿いの町に入る。
そこまでいけばきっと安全だ。
それでも法定速度はぎりぎりだったと思う。
エンジンをふかす音が山間の闇に広がる。
そして次の瞬間、私は確かに聞いた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
と、長く、低い声が、だんだんと遠くなるのを。
たぶん、いきなり上げた速度に耐え切れなかったのだろう。
なにかは落ちたようだ。
ほっと一安心しながらも、私は速度は落とさず、前方に注意を向けながら走った。

湖近くのコンビニにつけば、深夜にも関わらず結構な人がいた。
だから、私も安心して外にでた。
(念のため、入口近く、隣に人が乗った車がいるところに止めた。)
そして、後部座席側のドアをみると、ドアノブから斜め下に向けて一本筋が残っていた。
薄い傷ではあったので、あの声の主のものかはわからないが……静かにヤツにキレたことは言うまでもないだろう。

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