紡いできたもの、紡ぐべきもの
インテリアの仕事を初めて、12年が経ちます。
就職したての頃は考えもしなかった、結婚、妊娠出産、子育ても経験しながら、周りの方の助けもあり、このような状況下でもなんとか会社は維持しつつ、もうすぐ7期目が終わろうとしています。
子育ても、乳児期に比べたら手は掛からなくなり、(0~1才の時の仕事との両立はキツかった。特に最初の半年。もうやりたくない笑)、また新たなチャレンジのタイミングなのかな、とも思ったりしています。
ただ、コミットすることが怖いというか億劫で(負けず嫌いなので、コミットしたらやりきりたいタイプ)こうしなきゃ、ああしなきゃという焦りが出てくるのがすごく嫌で、なかなか新たなチャレンジの一歩を踏み出すことが出来ていなかったのですが、一回すべてを手放す経験をしたことで、覚悟が出来たような気がします。
自分自身の想いはもちろん、仕事や、タイミングや、家族状況、諸々考えると、これからの数年年でやりたかったことをやるのがベストだな、という結論に至りました。
・
・
・
ずっとやりたかったことがあります。
それは「古民家再生」です。
※古民家再生とは、建造から時が経った民家を現在のライフスタイルなどに合わせ改築・補修すること、と一般的にはされている。
だた、古民家再生は【ハード】を「再生」するだけでは意味がなく、圧倒的な【ソフト】を持ってして行わなければいけません。そうでないと【ハード】すら維持することができないからです。
古民家再生は、学生時代からやりたいと思っていたことの1つで、これをテーマに卒業制作をし、当時、優秀賞までもらいました。
膨大な時間を掛けて模型をつくり、図面を引き、楽しかったのですが、終盤は毎日徹夜するくらい大変で「よくやったな自分」と今でも思います。笑
優秀賞をもらったことは、「周りの作品に比べたら当然でしょ」ばりに思っていましたが(ホント性格悪い)、これを作って良かったなと思えたのは、当時私が再生したいと思っていた「古民家」に住んでいた、祖父がとても喜んでくれたことでした。
漁師だった祖父は4年程前に亡くなり、一緒に暮らしていた祖母は今、施設で暮らしています。
実質「空家」になってしまっている訳ですが、親戚が管理してくれている為、行けば泊ますし、住める状態ではあります。
でも、それもいつまで続くかはわかりません。
この祖父母が暮らしていた古民家を、どうにかして維持したいというのが私の想いで、やりたいことです。
築143年(明治10年竣工)は経っているので、祖父母だけではなく、少なくとも私から4、5世代前の先祖家族が住んでいたことになり、様々な私の先祖の家族の物語があの家であったと思うと、それだけでも感慨深く、紡いできた家族の歴史をここでとぎれさせてはいけないと、より一層思います。
[おそらく竣工時の姿の写真]
何より、私自身もこの古民家への思い入れが深く、そうなったのも、親戚中が盆暮れ正月に集まり、海に行ったり、祖父が漁で獲ってきた魚を食べたり、花火をしたり、宴会をしたりといった、映画「サーマーウォーズ」で出てくる家族のような体験をしているからです。
また、自己紹介の記事で触れたのですが、前職でモデルルームを作る仕事をした経験から「良いものを長く使う」という考えが強くなったのも、古民家再生をしていきたい、と思った理由の一つです。
一方で、私自身が幼い頃から「誰がこの家を継ぐか」という話が、ライトにも、ヘビーにも話し合われていたのは、幼かったながら記憶にあります。
どこまでのことが当時話し合われていたのかは、覚えていませんが、そこで明確に決めることができなかった、そのまま来てしまったが故、今の状況があるのだと思います。
同じような状況にある家も、日本全国にたくさんあるのは、よく知られています。
よく「空家問題」と言われますが「空家問題」は今、公的機関、民間機関問わず様々なところで様々な解決策が提案され、実行されています。
その一環としても、このような「歴史のある日本古来の家の価値」を再提案していきたいと、この12年間ずっと考えていました。
どんなハードにするか、ソフトにするか等の事業計画的なものは、ずっと構想していたものを少しずつ、世に出していきたいと思っています。
・
・
・
日本には、こういった「リブランディング」されるべき、残していくべき物がたくさんあります。
古民家以外にも、例えば、味噌、醤油、清酒といった物もそうです。
さらにこれらを作る時に使われる麹菌は、「国菌」として認定され、長い間、日本の食文化に根付いてきました。
昨年、ご縁があり、長野県の味噌製造所の方のお話を聞かせていただく機会があったのですが、「味噌汁を毎日飲む家が減ってきてる」という話をされていました。
そもそも、親が味噌汁を飲む習慣がなければ、子供にもその習慣は出来ません。少しずつ、少しずつ、そういった日本人を守ってきた文化が、知らず知らずのうちに失われつつあるというリアルなお話を伺いました。
こういったものが、私たちの生活から遠ざかってしまうのは、まさに日本にしかない言葉で言うと「もったいない」の一言に尽きるのです。
・
・
・
古民家再生をしたいと思った最初の動機は「もったいない」だったのですが、私自身、子供を持って改めて「子供達の未来の為に、少しでも良い世界を残したい、つくりたい」という想いも加えられていきました。
様々なモノ、コトが急速にアップデートされていく近年、私達はより意識して「自分たちの時代から、後世に残したいもの」を考えるべきなのかもしれません。