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現在のマラソン計測事情

前回の「今まで」から続きまして、今回は「現在」における記録計測の話です。
前回は手動とかバーコードとかを活用したシステムを多く説明しましたが、現在は少し事情が変わっています。
現在はICタグを活用してた計測システムが主流になりました。種類の増えまして、様々な周波数帯の電波を使い計測しています。
いわゆる自動計測システムというのは、この電波を使った計測システムの事を指しています。

現在、よく使われている計測システムは以下の3つかと思います。

使い切りタイプ(パッシブタグ)

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最近は大規模レースで使い切りタイプの計測タグが多く使われる様になってきました。
このタイプにもさまざまな計測タグがありますが、フェリカ等で使われているHF帯を使った物と携帯等で使われるUHF帯を使ったタイプがあります。
HF帯やVHF帯などを使った計測タグがあります。使い切りタイプと回収する半使い切りタイプがあります。
UHF帯の計測タグは、アンテナとマイクロチップをフィルムに取り付けたインレイをナンバーカードや靴に装着して計測します。
使い切りタイプのメリットは以下となります。
・レース後の回収不要。
・選手へ事前郵送が可能。
このメリットを可能にしている理由は計測タグのコストです。
このタイプの計測タグは1個当たりのコストを1/100以下に落としています。
これにより、事務局へのレンタルとして提供していた計測タグを買い取りで提供できるようになりました。
紛失・未回収リスクは大規模レースになる程、大きい為、最近の大規模レースでは使い切りタイプが多く利用されています。
また計測会社にとっても大きなメリットがあります。
アクティブタグを使う計測会社の問題の一つに計測タグの在庫があります。
従来のアクティブタグだと高額な計測タグを社内に在庫として持っておく必要がありました。
レースは秋~春にかけての繁忙期に集中する為、何万~何十万個を在庫として抱える必要があるのですが、アクティブタグは管理も大変で1個当たりのコストが高い事から、計測会社の在庫リスクは結構大きくなります。おそらくそれだけの計測タグを持ったとしても、全部使う日は1年を通しても数日になるからです。
使い切りタグは製造までの期間も短い事もあり、一定の在庫以上は使うたびに製造していく事で対応できます。、在庫を抱えたとしてもアクティブタグと比べると在庫費用をかなり抑えられるので、経営リスクを軽減する事ができるのです。これはかなり大きなメリットです。
良い事ばかり書いていましたが、次はデメリットになります。
・記録の正確性
・小規模レースではコストアップ
まずは記録についてです。
マラソンの記録計測はどこで測るかご存じでしょうか?
トルソー(胴体)部分です。(ざっくりいうと肩から腰にかけての部分)
例えばフィニッシュラインで手や足を投げ出してもそれはフィニッシュと認められません。
しかし、使い切りタイプの大半は足に計測タグを装着します。
競ってフィニッシュした場合、トルソーではなく計測タグを装着した足が先に入った方が先着となってしまったり、タイムが1~10秒位ズレる場合があります。
また、トルソーで計測するタイプについても、アクティブタグと比べると受信感度は悪い為、計測マット2~5枚をフィニッシュ地点に設置します。その為、タイムがずれるという問題があります。
これはタイム計測の精度を考える場合、結構大きな問題だと思いますが、あまり認知されていないのは不思議です。大規模レースをある程度の費用内で計測する為には目をつぶらないといけない部分なのかもしれませんね。
また、コストアップについては、小規模レースでは、計測タグの買い取りの問題があり、逆にコストアップにつながる場合もあります。

再利用タイプ(アクティブタグ)

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再利用タイプとは、レース後計測タグを回収して再利用するタイプの計測タグです。
最近では再利用する計測タグはアクティブタイプという電池内蔵型ICタグが使われています。
使い切りタイプとは違い、タグの内部は基盤があり、そこに電池やアンテナ等々が配置されています。
再利用タイプのメリットは以下となります。
・高い精度のタイム計測
・エコロジー、エコノミー
アクティブタグは一つ一つに電池が内蔵されており、電波を強く発信できる為、速いスピードで通過したり、大人数で通過したりした際にも高い精度で計測する事ができます。
また、高性能のアクティブタグはトルソー(胴体)部分での計測が可能です。
その為、足に装着するタイプと比べてタイムが正確になるというのはイメージしやすいかと思います。
また、タスキで計測したり、自転車レースの計測をしたり、計測タグが高性能なお陰で様々なシーンで正確なタイムを計測する事が出来ます。
そして、このタイプは一般的には5年間くらい再利用ができる物が多いです。※その後も電池交換すれば再度5年間使える物もあります。
例えば年間30大会の計測を同じタグで行ったとして、5年間で150大会の計測を同じタグで行う事が出来ます。

続いて再利用タイプのデメリット
・紛失の場合は補償料が必要(1個当たり高コスト)
・大規模では使用が難しい場面も
主催者にはレンタルという形で計測タグを提供している為、紛失した場合は補償費用が発生します。
補償費用は計測会社によって違いはありますが、1個1,000円~5,000円くらいはかかる事が多いと思います。
また、精密機器という事もあり、選手への事前郵送は難しいです。
計測業者にとっても数万~数十万個の計測タグを自前で持つというのは結構リスクが大きいので、大規模レースにおいては費用は高めになる事が多いです。

タッチ式タグ

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いくつか種類はありますが、代表的な物に手首に計測タグを装着し、選手自身がレシーバーにタッチしていくタイプやフィニッシュ地点で選手にレシーバーを近づけて計測するタイプがります。
どちらも使い切りでも使われている周波数(HF帯)を活用して計測している場合が多いみたいです。
低コストで運用できる製品もあったり、汎用品を組み合わせて運用する事もできるので、比較的お手軽に計測を始めることができます。
どちらも計測時にICタグへアンテナを近づける必要があるため、リアルタイム性には欠ける部分はありますが、タイムの正確性よりも通過チェックや人数チェックといった事を重視するイベントであれば、低コストで計測システムを導入できる為、有効な手段になります。

導入の際の参考

書いてみたものの実際導入するとすると判断は難しい事が多いと思います。
参考までに計測の導入を考えておられる方がいらっしゃれば以下が一つの基準になるのではないかと思います。

100~1000名→アクティブタグがおすすめ
1001~2000名→アクティブタグがおすすめだが、場合によって使い切りタグ
2001~5000名→使い切りタグがおすすめだが、場合によりアクティブタグ
5001名以上→使い切りタグがおすすめ
リレーマラソン→規模に関わらず、アクティブタグがおすすめ
100名以下の非レース→アクティブタグ、タッチ式タグ

あと計測を導入する際に、一つオススメがあります。是非、計測会社の知識を活用してみてください。
計測会社のスタッフはほぼ毎週様々なレース現場に赴いて計測をしています。
良いレース悪いレース含め数多くのレース現場を経験をした人が多いので、せっかく計測を依頼するのであればその知識を使わない手はないです。
自分たちのレース内容を伝えて参考意見を聞いてみるのはオススメです。


ちなみにタイムハックではアクティブタグを中心にサービスを提供しております。
理由は小規模レースに特化して計測を行っているからです。
低価格で高品質な計測を提供できると思いますので、興味のある方は是非ご連絡ください。

その他のマラソン計測事情
1.今までのマラソン計測事情
3.未来のマラソン計測事情
4.マラソン計測事情(ソフトウェア編)

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