前回YouTubeに「トイレには行かない方がいいかもしんない」をアップしたら聞かされた話:トイレには行かない方がいいんじゃないかなぁ、というお話

 先日、禍話かぁなっきさんの話を聞いて、

「そうだよなぁ、やっぱりトイレは行かない方がいいよなぁ」って話をアップしたんですけどね、それを聞いた人から

「いやいや、大型商業施設のトイレだって、行かない方がいいですよ」って、話を持って来た人がいるんですよ。

 それで

「いやちょっと待て、なんで私んところに話を持ってくるの?かぁなっきさんのところに送ればいいじゃん」て言いましたら、

「かぁなっきさんのところは競争率激しくて採用される確率が低いでしょ?でも吉野さんだったら楽勝で採用されるでしょ?」って言うんで、てめぇこのやろう表に出ろって話なんですけど、まぁそれは置いときまして、とりあえず話を聞いたんですよ。

 吉野さんは繁華街の大型商業施設のトイレだったら人が多いし明るいし清潔だから恐ろしいことはないだろうって言ってましたけどね、

 ある日、仕事が終わらなくて、終電で帰ることになったんですよ、

 駅を出て、ショッピングセンターを通って町に出るんですけど、夜12時を過ぎてそこを通るなんて初めてで、明かりは点いてるんですが誰もいなくて。入口の案内板を見ると、深夜1時過ぎから4時半ぐらいまではドアを閉めるってあって、それまでは誰でも通れるようになっているんですね。

 電車に乗っているときからおしっこしたくなって、駅ですればよかったんですけど、家まで我慢できるかなってしなかったら、駅を出てからしたくなってきて、ショッピングセンターのトイレに行けばいっかーと思ってたんですよ、

 駅の改札口を出て通路を歩いていて、トイレに入ろうとしたら使用中止の看板があって入れないようになっているんです。

 じゃ他の階に行こうかと思ったんですが、いつも歩いてる通路って、二階なんです。一階は普通の、外の歩道とか車道の高さで、今いるのは歩く歩道なんかが設置されている二階なんです。

 そんな時間ですからお店は全部閉まっていて、一階と二階の通路は解放されているんですが、三階以上はエスカレーターも階段も使えないようになっていて、上には行けないんですね。当然一階に降りていくことになります。一、二階間のエスカレーターは動いてまして。

 一階に降りていって、トイレに行くんですけど、そこは使用中止にはなっていないんですよ。

 こういうところのトイレって、メインの通路から脇の通路に曲がって、さらにもう一回か二回曲がり角があるのって解りますかね、その曲がり角を曲がったとき、変な臭いがしてきてるんです。

 でもう一回曲がったら、臭いが酷くなっていて。

 臭(くさ)い海の臭(にお)いなんです。

 潮の香りっていうと上品で風情ある香りって感じでしょうけど、嫌いな人ってかなり嫌うもので、私は今まで気にしたことはなかったんですけど、それでもなんだこれ嫌だなって思う臭さなんです。

 でもまぁ臭いだけなら我慢しようってトイレの入口まで来たら、中から声が聞こえてくるんですよ。

「大丈夫ですかどうしましたか助けが必要ですか倒れてませんか」って声がして、中を見ると警備員さんが個室のドアをドンドン叩いて、叩き続けて、息も継がずにずーっと呼びかけてるんです。

 臭いも酷くなって、鼻が曲がりそうなんですけど、圧倒的な海の臭いなんです。

 警備員さん、こっちを見ずにひたすら扉を叩いて中の人に呼びかけていて、私は私で用を足そうとしたら、警備員さんが吐き捨てるように「だめだこりゃ」って言って、外に出て行って。そしたらトイレを出てすぐ、携帯電話だか無線機だか知りませんが、応援を呼び始めたんですよ。

 テレビで、デパートなんかでトイレを長時間使用している人の迷惑を見たことあるんで、警備員さんもこんな時間に大変だなとは思ったんですけど、それよりこの臭いなんなんだ?汚水が逆流してんのか?にしては中の人出てこないのはおかしいなと思いつつ、用を足し終えて、急いで外に出たんですよ。

 外に出て、誰もいなくて、さっきの警備員さん通路に出たのかなって思って、臭いですから、もうさっさと二回曲がって通路に出たら、応援の警備員さん十人くらいと鉢合わせですよ。

 そんなに人要るの?なんか大きなソフトケース持ってる人もいるしって。

 それで、これからどんなことが起こるのか見てみたかったんですけど、人が大勢いるときならともかく、私一人が野次馬だったら即「あっち行け!」って言われるだろうなぁと思って、諦めて家に帰ったんですよ。

 一晩明けまして、

 会社に行くんでショッピングセンター通って、いつも通るトイレの入口は、まだ使用中止の看板が立ってるんです。それで思って、一階に降りて、一階のトイレに行く通路の前を通ったら、別に使用中止の看板はないんです、使えるんですが(ふーん)と思ってそのまま電車に乗って会社に行ったんですよ、

 休み時間に同僚に

「昨日の夜、こんなことがあった」って言いましたら、みんな

「ふーん、なんだろね」って言うんですけど、一人だけ、

「そのショッピングセンターってさ、もともとは埋め立て地だよね」って言うんです。

「そうだよ、建物を出てすぐ、海だよ」

「俺はそこに行ったこともないし、なんにも知らないけどさ、俺の生まれ故郷って、海国なんだよ」

「うん」

「今は観光地として有名なんだけど、ちょっと前まで投身自殺で有名なところでさ」

「うん」

「その岬で身を投げるとさあ、潮の流れでかならず辿り着く浜があるんだけどさ、そのトイレの場所って、そういう浜の場所ってことはない?」

「おまえそういうこわいこというなよ!」

 って、まあそういうことがあったんですよ。

 だから大型商業施設のトイレだからって、行かない方がいいんじゃないかなと思って話を持って来ました。

 このやろうなんてこわいはなしをもってきやがるんだとは思いましたけどね、言ってやったんですよ。

「それさあ、なんかおかしくない?」

「え?嘘だって言うんですか?」

「いや、そうじゃなくてさ、なんか妙だなって思わなかったの?」

「え?なにがですか?」

「警備員さん、ドアをドンドンドンって叩いてたんだよね?」

「ええ、そうです」

「扉を開けようとガンガンって、しなかったの?」

「…あれ?」

「その扉の鍵、開いてたんじゃない?長くそこにいると、扉が向こうから開いて、中からなんか出てきたんじゃない?」

「やめてくださいよそういうこわいこというの」

 まあそれで

「それじゃおねがいしまーす」って、帰って行きました。

 うーん、大型商業施設でも、トイレは行かない方がいいかもしれませんね。

「海の幽霊」というお話でした。

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