禍話リライト「好きな色は?」花子さん譚

 いじめを告白された人から聞いたはなしなんですけどね。平成の頃の話だっていうんです。
 中学生の、閉じた女の子の世界で、四人が一人をいじめ始めまして。
 ターゲットになった女の子はとても怖がりで、図書館に置かれている子供向け怪談本の表紙もダメという怖がりで、たまたま向けられたその表紙で声をあげるほどなんだそうです。
 四人が何か口実を見つけてその子に「責任をとれ」みたいなことを言いだし、どうしたらいいのと返すと、使っていない校舎のトイレに花子さんが出るという話があるから、花子さんに好きな色を聞いてこいと。
 花子さんの怪談、赤と言えば血だれけにされ、青と言ったら血を抜かれるとか、黄色と言ったら異次元に連れて行かれるとかありますんで、それ関係なんでしょう。
「お前一人で行ってこい」
「いやー!一人じゃ行けないー!」
「行ってこなかったら許さないからな」「責任だ」と言われ、ターゲットにされた子も責任感の強い子なんで、そう言われて、怖いのを押して半べそかきながら出発しました。
 これが高校生だったり、誰かそばにいてくれたら状況も違ったんでしょうけど、どうしようもなくて。
 で、行ったんですけど帰ってこないんですよ。十分二十分、そんなにかかるわけもないのに帰ってこない、途中で時間を潰して引き返してきて「何色」と言えばいいのに責任感が強いからそんなズルはしないのか。
 待つ方もかったるくて、今だったらケータイでなにやってんだと聞けるのですが当時中学生は持ってなくて状況が解らない、中に入るのも面倒だ困ったなと思っていたら、見回りの先生がやってきて
「お前ら何やってんだ!さっさと帰れ!」なんて言ってくる。
 そうなるとどっかから逃げたんじゃね?とか、いても先生が帰れって言ってくれるんじゃね?と思うようになって、四人とも「はぁい」と帰ることにしました。
 帰りしな、ターゲットの下駄箱を見て、まだ学校にいるのが解っても、(知るかんなもん)て思って。
 で、首謀者のAさん、家でご飯食べてお風呂に入ってくつろいでたら、親が「あんたに電話。顧問の先生から」。
 生徒は全員なんらかの部活に入らないといけなくて、Aさん入ったのに行かなくて幽霊部員なんですが、(え?なんだろ?)と思いながら出てみると、
「あ、ごめんなさい、本当は違うんです」と弱気な声。
(誰?)全然知らない女の人の声だと思っていると、
「ごめんなさい、(ターゲット)の親なんですけど」
 え?
「そうでも言わないと代わってもらえないと思って。(ターゲット)の親です」

「あのー、うちの娘が帰ってないんですけど、知りませんか?」
「えぇ?知りませんけど。なんで私に電話してくるんですか」
「娘が書いている日記にいつもあなたの名前が出てきて、いつも遊んでもらってるみたいだから」
「(おぉ、いろいろセーフか!)いや、知りませんよ」
「でもうちの娘がいつも日記に、いや勝手に読んだら良くないことですけど、読んだらあなたの名前が書いてあって、特にあなたの名前が一番出てくるんですよ、だからよく知ってるかなと思って。まだ塾とか行ってないんで帰ってくるはずなんですが帰ってこなくて。普通に電話してもあなたに代わってもらえないだろうとごめんなさい顧問の先生の名前を言って」
「んん、いや、とにかく知りませんから」
 電話を切る。
 気持ち悪いなぁと思っていたら、また電話が鳴る。
 嫌だなぁと思ったけどまたお母さんが電話を取って、
「あれ?さっきの顧問の先生」と驚いているのだけど、Aさんにしてみれば本当の事は言えない、
「またあんたによ」と言ってくるのを
「あぁ、ごめん、忙しいからさ、あの、なんか、忙しいって言って!」。
 お母さん、仕方がないので電話口でやりとりをして、メモをとっている、
 なんだろメモとってるよ、次また電話かかってきたらどうしようと思っていると、お母さん電話を切って、別に様子も変わらない、
(あれ?お母さんに本当の事言ってないのか)と驚いていたら
「用件聞いておいたわよ」
「あぁ、そう、なんだって?」
「うん、あのねえ、よく意味が解らないんだけど、紫だって言ってるって」
「え?」
「いや、紫だって」
「ええ!」
「いや、だから、顧問の先生が、伝えといてください紫だって。で電話切られちゃった」
 え!え!え!めっちゃ怖いなと思うんですけど、親に本当の事を言えるわけもなく。
 気持ち悪い!とは思うものの、その後電話はかかってこず、怖いまま寝て、翌日学校に行ってみたら、ターゲットの子が普通に教室にいるんです、普通にいて、昨日のことに一切触れず、普通に「おはよー」とか言ってくる。
「あ、おはよー」と小声で返して様子を見ても、昨日のことが何もなかったかのようで、他の三人も
「え?あいつなんで普通なの?」と訝しんでいる。
 三人には電話がなかったらしく、Aさん三人にも言えません。
(誰にも言えない誰にも言えない)と授業も手につかず、昼休みになったらいつもならまたいじめをするのにそれどころじゃない、首謀者が何もしないから三人も何もしない、三人から「今日元気ないけどどうしたの?大丈夫?」と聞かれても「うん、まぁ、ちょっと具合悪い」くらいしか言えない。
 昼休みが終わって次の授業が移動教室で、移動して、で授業が終わって戻ってきた、そして次の授業で使うノートを机から出したら、ターゲットの子の字で
「何も聞かないってことは、聞いたってことだよね」と書かれていた。
 結局Aさん、その次の日から学校に来なくなって、そのまま卒業になった、卒業で本来受け取らなければいけない諸々を届けるように先生から言われた生徒がこれらのことを聞かされたんだそうです。

 聞かされた子がターゲットの子のその後を知っていて、普通に卒業して、実は頭が良かったので進学校の高校に行って、楽しくやってるんだそうです。
 Aさん、単に精神が病んで妄想に押しつぶされたとは思えないし、そのあと人生ぐちゃぐちゃになっているし、どこまでが本当にあったこと、いじめで、どこからがAさんの妄想なのか解らないけど、花子さんを軽はずみにネタにするのはよくないんだろうなぁってことなんですかね。

YouTube版
282 シン・禍話 第四十五夜 新キャラクター誕生?
https://youtu.be/AECM1-PANTQ?t=1719 28:40あたり


twitcasting版
シン・禍話 第四十五夜 新キャラクター誕生?
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/719830326 28:40あたり

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