手元に集中する仕事の人に迷惑をかけるのはやめましょう:神社には行かない方がいいんじゃないかなぁ、というお話/ 第一回『集まれ!怪談作家』応募作品

 神社には行かない方がいいんじゃないかと思うんですけどね、何かに集中して辺りを気にしていないときは特に行かない方がいいと思うんですよ。
 工務店で働いているAさんから聞いた話なんですけどね。
 Aさんは営業をやってまして、ある日神社から仕事の依頼が来たんですよ、神社の一角を工事して欲しいと。
 Aさんすぐ行きまして、神社の担当の人に「ここです」と言われたところを写真に撮ったり、どうしたいかを聞いて、見積もりとか日数とか確認しますと会社に戻ったんですけどね、
 後になって考えたら、そのとき境内に制服を着た女の子がいたのを見ていたんですって、目の端で。
 Aさんが神社に行ったのは平日の午前中で、学校に行かないのかな?とは頭をかすめたんですけどしょせんは他人事です、見て、思って、すぐに気にしなくなったんですけど、言われて思い出したら、女の子、椅子に座って何か読んでいたな、と。歩き回っていたんじゃないんです、境内のベンチに座って何かを読んでいたと思うのですが、それが本だったのかスマホだったのかまでは覚えてないというか、見えなかったんじゃないかな、っていうんです。
 まぁAさん、見積もりだして職人さんが行ける日を調べて、神社に何月何日から何日間の予定でいくらかかりますと連絡して、了承され工事が始まりまして、
 Aさんの仕事はそれ以外にも、朝一番に職人さんを車で現場に送って、夕方に迎えに行くのもあるんです。
 神社の工事が始まって何日か経って、帰りの車中で職人さんがこんなことをぼやきました。
「仕事中に女の人が来て、うちの娘を見ませんでしたかって写真を見せてくるんだよ、家に帰ってこないんだって」
「へぇ」
「毎日、朝から境内にいた女の子なんだよ。スマートホンをやたらに触ってたのは見たんだけど、こっちも仕事があるからずっと見ていたわけじゃなくてさ、日にちはともかく何時にいなくなったのかは全然解らないんだよ」
「へぇ」
「それまでは毎日来てるなって、俺達が来たときにはもういて、帰るときまでずーっと座ってて、いつ帰ってるのかは知らんけどさ」
「うん」
「三日目に、気がついたらいなくなってた。飯食いに行く前だから午前中なのは確かなんだけど、一人で帰ったんだと思うんだよ、誰かと会ってどっかに行ったんだったら、解ると思うんだけど自信がなくて」
「ふうん」
「どこ行っちゃったのかねえ。まさか神隠しだったりして」
 そこで、それまで黙っていたもう一人の職人が
「俺達がいるすぐそばで神隠しって起こるもんなのかね?神様に連れて行かれるときは本当に一瞬なんだろうけど」
「誰かが見ていたら起こらなかったりして」
「俺達がもっと注意していたら起こらなかったかもしれないのかね。でもそんなことがあるかもなんて思わないし、仕事があるからなあ」
「どこ行っちゃったのかねえ」

 この話、神社の仕事を受ける人たちから聞いたですので、普通の人が思うであろう
「え?女の子が立ち去るのに気がつかなかっただけなんじゃないの?」は、そうかもしれな、の一つのようです。

榊原夢さん主催の【集まれ!怪談作家】に投稿したんですが、落選しましたorz


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