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修羅道の女
修羅道の女 幽霊とおばけ
武州の侍であった和田左衛門は仕官を辞し、旅をしていた。
夜中に通り勝った荒川の岸陰ではりつけになった女を見た。
女は生きており、衛門に、川を越えたさるところの屋敷の家に貼られた札をはずして着てほしいと頼んだ。
それはすでに通り過ぎてきたところだからと断ると、今まで通った者はみなこの姿をおそれて話を聞いてもくれなかったと涙ながらに語った。
衛門は哀れに思い、頼みをきいてやることにした。すると女は衛門の背におぶさった。
衛門はそのまま屋敷の前にくると札をはがした。女は笑みを浮かべながら屋敷の中に飛び込んでいった。屋敷の中で悲鳴が聞こえ、騒ぎが起こったののがわかった。
女は生首をくわえて、跳び去っていった。
衛門はまたもとの道に戻ると、磔にされた女はこれまでの経緯を話し始めた。
主との密通を疑われ、罪をかぶせられ殺されたこと。
この礼に力の及ぶ限り助けたいとはなした。
しかし衛門は自分が招いた罪状に恐れ、自分はいいので、その志を自分の旧主のために使ってくれと頼んだ。
女は消え失せた。最初から何もかかっていなかったように磔にされた戸板だけが残っていた。
それから衛門は仏道にはいり、祖寛法師と呼ばれるようになった。
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