TikTokでバズるショートフィルムのつくり方 #1 【脚本の書き方】「視聴者の人さし指をとめろ!」
『カメラを止めるな!』でお馴染みの上田慎一郎監督が、TikTokの縦型短編映画やドラマといったショートフィルム製作の秘訣を伝授!
『バズるショートフィルムのつくり方』と題したTikTok LIVE 配信中、TikTokフィルムクリエイター土井康平さんと、ゼロから1つのショートフィルムの完成を目指しました。
TikTokショートフィルムにおける、脚本づくりや、撮影現場、編集作業といった裏側から、おもわず真似したくなるテクニックを全3回の連載でお届け。
第1回は「バズる脚本の書き方」について。上田慎一郎監督から語られたアドバイスは「視聴者の人さし指を止めろ!」です。
可能性しかないTikTokのショートフィルム
みなさんはTikTokで縦型短編映画やドラマといったショートフィルムを観たことはありますか?
短い時間でも観た人に深い印象を残し、大切なものに気づかせてくれたり、ちょっと前向きにしてくれる。そうしたショートフィルムは、たくさんのユーザーに親しまれています。
TikTokは「面白い」と感じたコンテンツにポジティブな反応が集まることで、フォロワーの数に関わらず、多くのユーザーに動画が視聴されるレコメンドシステムを持つ、コンテンツファーストのプラットフォームです。
言葉の壁を越えて、世界中で作品を観てもらえるチャンスがあります。
2021年より、TikTokは東宝株式会社とタッグを組み、新たなクリエイターを発掘し、共創することで映画業界を盛り上げることを目的とした映画祭『TikTok TOHO Film Festival』を2年連続で開催しています。
2022年には第75回カンヌ国際映画祭にて、全世界を対象に「#TikTokShortFilm コンペティション」が開催され、世界44の国と地域から日本人クリエイター本木真武太さん(@lang_pictures)『Kitte kitte iino?(木って切っていいの?)』が、見事グランプリを受賞しました。
誰でも参加できるこうしたイベントを通して、TikTokクリエイターは新たな創作につなげています。
映画監督デビューのきっかけとしても、TikTokのショートフィルムには大きな可能性が広がっています。
目指せ!TikTokで映画監督
TikTokのショートフィルム製作は、すごくシンプルです。
シナリオとなる脚本を考え、スマートフォンで撮影と編集を行い、TikTokにアップするだけ。専門的な知識や特別な機材は必要ありません。
しかし「何から始めたらよいか分からない」と感じてしまう方も多いかもしれません。
「おすすめ」フィードに掲載される短い時間で、視聴者を物語へ引き込むには、構成力や効果的なショットの選択など、独自のアイデアが必要になります。
そこでTikTokでは縦型短編映画やドラマを投稿するクリエイターを支援し、新たな表現手法を模索するための取り組みとして、2022年11月より、ハッシュタグチャレンジ「#ショートフィルム」を開催しました。
アンバサダーを務めたのは2018年に映画『カメラを止めるな!』で旋風を巻き起こした上田慎一郎監督です。
「#ショートフィルム」では、2022年11月1日から2023年1月31日にかけて、1ヶ月ごとに区切りながら連続で実施して、優秀投稿者の一部を「上田監督賞」として選出。栄えある第一期「上田監督賞」に俳優でTikTokフィルムクリエイター土井康平(どいこうへい)(@kouhei0319)さんが選ばれました。
今回、そんな土井さんと上田慎一郎監督とのコラボレーションが実現。
ナビゲーターとして映画紹介人であるジャガモンド斉藤さん、さらに俳優サポーターとしてステキなゲスト(第2回より登場)を、お迎えして、ゼロから1つのショートフィルムをつくり上げるTikTok LIVE『バズるショートフィルムのつくり方』が行われました。
TikTokショートフィルムにおける、脚本づくりや、撮影現場、編集作業といった裏側から、おもわず真似したくなるテクニックを全3回の連載でお届け。
第1回は「バズる脚本の書き方」についてです。
ゼロからショートフィルムづくりに挑戦!
上田慎一郎監督(以下、上田監督) こんにちは!映画監督の上田慎一郎です!ハッシュタグチャレンジ「#ショートフィルム」のアンバサダーを務めさせていただきました。よろしくお願いします!
土井康平さん(以下、どいちゃん) はじめまして、土井康平です。俳優で「どいちゃん」と呼ばれています。「#ショートフィルム」第1期「上田監督賞」に選んでいただき、涙が出るほど嬉しいです!よろしくお願いします!
ジャガモンド斉藤(以下、斉藤)ナビゲーターを務めます、映画紹介人のジャガモンド斉藤です。よろしくお願いします!
また俳優サポーターとして、後ほどステキなゲストにもお越しいただきます!
「バズる脚本の書き方」
上田慎一郎監督と土井康平 特別対談
斉藤 本日は『バズるショートフィルムのつくり方』と題して、生配信中にお二人に対談をしてもらいます。さらに1本のショートフィルム作品を撮っていただきます!
最初のテーマは「バズる脚本の書き方」について。上田監督いかがでしょうか?
上田監督 「人さし指を止めろ!」です!
斉藤 カメラを止めるな!ならぬ!?
上田監督 言わんといて、それ(笑)偶然かかっちゃった!
とにかく「おすすめ」フィードに映像が流れてくる。いかにスワイプされないか、最初、2~3秒が命みたいな所がありますよね。おもわず人さし指を止めてしまうよう、物語の始まりで心を掴むことが大事なんじゃないでしょうか。
斉藤 映画でいうファーストカットですね。どいちゃんも意識してますか?
どいちゃん 仰る通りですね。いかにスワイプされないか考えています。「おすすめ」フィードに載るには視聴時間(どれだけ長くその動画が観られたか?)も大切です。ファーストカット、いやセカンドカットまで印象に残るシーンをつくれるか。
上田監督 具体的には「物語の始まりに大きな “はてな?”をつくる」と、作品を印象づけることが出来ると思います。
物語の始まりに、“はてな?”をつくる
上田監督 僕がTikTokに公開した縦型短編映画『説明台詞オブ・ザ・デッド』では、「ある朝、父がおかしくなった」というナレーションから始まります。
上田監督 それだけで「どうおかしくなったんだ?」と、数秒は人さし指を止めてもらえるかなって。どいちゃんはダイジェストから始まることがありますね。
どいちゃん そうですね。物語全体の印象的な場面を切り取り、冒頭に入れています。
上田監督 視聴完了率(最後まで動画が観られたか)も「おすすめ」フィードに載るには大切です。なので「もう終わったの?」ぐらい唐突な終わり方がいいだろうなと。そのままループして観てもらえるかもしれません。エンドクレジットをゆっくり出してたら、そこでスワイプされてしまうんで。
斉藤 あと少しでもスワイプされてしまうと視聴完了にならないということですね。「バズる脚本の書き方」どいちゃんは、いかがでしょう?
どいちゃん 「共感か批評をしてもらえる!」です。長年、ショートドラマを投稿してきましたが、最近、より深く内容を観てくれる視聴者が増えた印象です。
どいちゃん 共感や批評をしてもらうことで「いいね」や「コメント」につながり、動画が伸びやすくなります。元々、人間模様を描いたドラマが得意。というかそういうのしか書けない性格なので、共感や批評を狙いに行くのは向いている方だと思います。
上田監督 共感は「いいね」、批評は「コメント」に現れますよね。観てるひとにアクションを起こしてもらえる物語づくりを意識しているんですね。
TikTokでは視聴者がコメントしている最中も映像が流れている。なので視聴時間につながるのだということを学びました。コメントをもらえるかは大切ですね。
斉藤 なるほど!いままで印象的だったコメントはありますか?
どいちゃん スマホをいじるシーンで、画面に映ってたのが有名なパズルゲームや野球ゲームだったんです。それについてのコメントが、まあまあ来て(笑)そんな細かい所まで観てるの?と驚きました。あえてツッコんでもらえるものを映像に入れてみるのもコツだと思います。
上田監督 あるある!「ティファニーのネックレスかわいい」というコメントから、役者さんのネックレス、ティファニーなんやって知ったり(笑)
斉藤 まるでリビングで家族団らんしてるかのような雰囲気ですね。
上田監督 TikTokのコメントは、チャットほどではないけど、ライブ感や、ラフさが在ります。すぐリアクションをもらえるので、クリエイターとしても「気づき」になり、次の作品に生かせるのでおもしろいですね。
【実践】バズる脚本の書き方(30分)
斉藤 それでは生配信中に1本のショートフィルム作品を撮っていただきます!
製作時間は90分間(脚本づくり:30分、撮影:30分、編集:30分)、まずは脚本を書いていただきたいと思います。
上田監督 これは緊張します!視聴者の皆さんからアイデアも頂き、みんなでつくれたら嬉しいです。
どいちゃん ちなみに僕ら打ち合わせとかマジでしていないので。
上田監督 ほんとうに即興です(笑)今日しか創れない作品をつくりましょう!
【手順①】アイデアを書き出す
上田監督 自由すぎると頭が働かないことありませんか?撮影できそうなアイデアを書き出してみると良いかも知れません。どいちゃんは「友情」とか「恋愛」とか、撮ってみたいテーマは在りますか?
どいちゃん 「純愛もの」やりたいですね。
上田監督 書いていきましょう!
上田監督 「純愛もの」には関係性がありますね。同級生、幼馴染、カップル・・・どこがピンときましたか?
どいちゃん 「仕事仲間」とか「女優さんとマネージャー」ですかね。
上田監督 「シチュエーション」「関係性」「コンセプト(ジャンル)」に分けて、書き出してみましょう!
【手順②】アイデアをつなげる
上田監督 それぞれつなげてみると物語のインスピレーションが湧いてくることがあります。「アイデアを書き出して、つなげる」これは劇場映画の制作でも行ってきました。
上田監督 ぼくはLOVE(恋愛)でなにか作ってみたいという気持ちです。どうかな?
どいちゃん 1分で出来ま・・・頑張るしかないか!
上田監督 ハハハ、たしかに1分間だと、構成の組み立て方としては「起承転結」じゃなく、「承」ではじまり「転」で終わるぐらい(「承」→「転」)のイメージになりそうですね。
【手順③】ストーリーをつくる
上田監督 なんとなく浮かんだストーリーを提案してもいいですか?「友達同士で告白レッスンを行う」というのはどうでしょう。
どいちゃん いいですね!おもしろそう。
斉藤 監督、コメントで「ホラーはどうか?」という声もあがっています。
上田監督 ホラーは「何が起こるんだ?」と“はてな?”が生まれるので、視聴者を長く引っ張れますよね。
どいちゃん ドラマでもホラーは分かりやすくて、つくりやすいです。告白までは同じですがオチで「女の子は幽霊」。「男が、亡くなってしまった元恋人に告白している」“LOVE(恋愛)× ホラー”はどうかな。
上田監督 おもしろいね。ぼくは「心霊スポットに来たビジネスカップルTikTokクリエイターの悲劇」というホラーを思いつきました。
上田監督 仲が悪いビジネスカップルのTikTokクリエイターが心霊スポットで撮影していると、撮影スタッフがやってきた。2人は挨拶するがスタッフは目もくれない。視聴者はそこで2人が消えていることに気づくという話です。
【手順④】セリフをつける
斉藤 『告白のレッスン』について、上田監督、物語を説明してもらえますか。
上田監督 告白のレッスンは———、
上田監督 いいですね。自分で話しながら、撮りたいって触発される感じがありました。
斉藤 手応えを感じているのが伝わってきますね。
どいちゃん 僕がやりたいと思っていた「純愛もの」にも近いですし!
上田監督 よし「告白レッスン」でいきましょう!
【手順⑤】セリフを完成させる
上田監督 ファーストカットは、女の子の「好きです!付き合ってください」に。次のターンで、思いもよらない言葉が来て「なんだこれ?告白じゃないんだ?」って視聴者を誘い込めるようにしたいです。
どいちゃん 「それじゃ伝わらないよ」といったニュアンスの言葉はどうですか?
上田監督 3~4語目で「関係性」がわかるような言葉を入れたい。
斉藤 “はてな?”から、だんだん情報が現れてくる。監督、筆がのってきました!
上田監督 バズってくれ!(笑)のってきたら無意識で「書かされてる」状態になります。
斉藤・どいちゃん おおおーー!!!
どいちゃん ぼくは女の子の好きなひとにも気づかず、鈍感なやつですね。
上田監督 照れていた女の子。どいちゃんと話してラストは真剣になる。
どいちゃん こりゃ、素晴らしい!
斉藤 いいですね!
撮影現場で生まれるアイデアも活かそう!
上田監督 脚本には「セリフ」と「ト書き」という書き方があって。ト書は、情景や人物の動き、しぐさなどを書き込みます。
例えば、ラストシーンで、
と書けば「笑顔をつくりニコッと微笑む」まで、役者への演出が細かくイメージできます。
上田監督 けれど、そこまでト書きで書かないようにしています。
ト書きにしばられて、撮影現場で生まれている新しいアイデアや、役者の持味が発揮できなくなることがあるからです。
現場に足を運んでみたら、もしかしたら笑わないほうが良いものが撮れることがあるかもしれません。
脚本で役者さんの魅力を上手く引き出して、現場で120点を出せるのが理想ですよね。
現場で生まれている雰囲気から、脚本には書かれていないアイデアを見つけるのも作品づくりの醍醐味だと思います。
次回「バズる撮り方」について
次回、「TikTokでバズるショートフィルムのつくり方【第2回】」では、「バズる撮り方」について教えていただきます。
そして脚本をもとに、上田監督がショートフィルム「告白のレッスン」撮影を開始します!