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〜不定期連載・取材後記〜「2023March取材後記:トーキン・アバウト・ルヴァンカップ」

2023年Jリーグが開幕してから、はや1か月が経過しようとしています。

ジェフユナイテッド千葉との「ちばぎんカップ」から「明治安田生命J1リーグ」に入った柏レイソルのここまでの成績は下記の通りとなっています。

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2023年2月12日:「ちばぎん杯」vs千葉(1-2●)
2023年2月18日:2023J1リーグ MD1vsG大阪(2-2△)
2023年2月26日:2023J1リーグ MD2vs東京(1-1△)
2023年3月4日:2023J1リーグ MD3vs福岡(0-1●)

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第3節のアビスパ福岡戦を終えた時点で、「2分1敗・勝点2」という未勝利の状況から3月シリーズを戦っていくこととなりました。「流れ」をリセットする結果が待たれるところです。

新たな個性が集う2023シーズンの柏レイソル

ただ、先週までとの違いは、このタイミングで「JリーグYBCルヴァンカップ・グループステージ」が開幕すること。

グループDに属する柏レイソルは3月8日の鹿島アントラーズとの初戦を皮切りに、アビスパ福岡、アルビレックス新潟とのグループステージ(ホーム&アウェイ)のスケジュールが待っています。

近年の傾向として、ネルシーニョ監督は「ルヴァン杯は重要なラボでもある」と語るなど、タイトル獲得と並行しながら、リーグ戦で出場機会の少なかった主力選手の起用や若手選手の抜擢・発掘、あるいは「リーグ出場組」と「ルヴァン杯出場組」の融合を図る貴重な機会として活用してきました。

鹿島との初戦を前に今季のルヴァン杯のコンセプトを確定することは今のところできませんが、今週は例年の傾向をベースに取材を進めてみました。

今回のアングルは「若手選手の抜擢・発掘」です。

(2023年2月28日・柏レイソル公開練習日にて収録・再編集)
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まず、マイクを向けさせてもらったのは2年目のFW真家英嵩選手。

昨秋からのコンディションを維持しながらの3月

真家選手は福岡戦とルヴァン杯を前にした今回の取材の時点では開幕以降2試合連続メンバー外となっていましたが、先の福岡戦では58分から今季初出場。細谷真大選手とタテ関係の2トップを組み奮闘しました。

マイクを向けさせてもらった時点では「ルヴァンを見据えて…」というアングルでの取材となっていたのですが、「メンバー外」の自身についてこのように話してくれました。

「今の気持ち的には『悔しさのようなものを感じながら』なのですが、ルーキーだった昨季に比べると、良い具合に他人のことが気にならなくなってきたというか、自分にしっかりとベクトルを向けていられています。感情の整理はついているので、あとは練習の中でゴールを決め続けることでしか、ゴール前でしか、自分の価値というものを示せないので、与えられた練習や練習試合に集中して取り組む中で『ゴールを決めて価値を示す』という毎日。自分がすべきことはより明確になっています」

この日の練習の中でも迫力のある動き出しからゴール前へ現れてゴールネットを揺らすことも多かった真家選手。このあたりのポジショニングやゴールセンスは相変わらず飛び抜けた印象があるのですが、その中でも目を見張るのは、現在のチームでは長身の部類に入る187センチという上背。これは現在のJリーグ出場組にはないスペック。ただ、上背があるだけの選手ではない真家選手ですから、戦術的オプションとして楽しみな存在でもあります。

真家選手も自身のサイズの活かし方、そのイメージが頭の中あるそうです。

「ガンバ大阪戦とFC東京戦を見ていて、FWに対して比較的ラフなボールが入っている印象があって、そのボールの行方によっては相手に連続した攻撃機会を与えてしまっているようにも思っていて。自分の場合なら、クリアボールをキープをすることやファールを誘うことでチームの力になれるんじゃないかって思いましたね。ハイボールを収めることは自分の特長の1つでもあるので、与えられた機会の中でアピールをしていきたいと思っています」

今季レイソルが用いている「4ー1ー2ー3」とも「4-3-3」とも表現されるシステムは真家選手が育ったレイソルアカデミーの中で最も長くプレーしてきたシステムに近いシステムでもあります。真家選手は「ちばぎんカップ」を終えたタイミングでも、「ボールの回り方は多少違うかもしれませんが、このシステム上でFWがすべきことは分かっていますから」と静かなる自信を見せていました。

「練習で対峙していてイヤですよ」と古賀選手

その後のG大阪戦と東京戦をスタンドから眺めた真家選手はこの取材日の段階で、「まだ今季のチームで試合に出られてはいないですが」という前提で、ここまでの新システムでの感触について聞きました。

「今季のシステムは昨季と違う楽しさがあると思いますし、以前よりもビルドアップに関わる機会に変化を感じています。中盤の立ち位置もFWに近いし、両サイドでリズムを作ることが多いので、少し変な言い方になってしまいますけど、『FWにボールが入ってきづらい』感じがある。だから、よりゴール前でのポジショニングや駆け引きが重要になるかもですし、自分の良さも出せるかなって」

奇しくも福岡戦では「真家選手投入」というオプションは試合展開を鑑みた戦術変更の意味を含むものだったと思われますし、ボールキープやポストプレーなど中盤の手助けやボールを引き出すで効果的な働きを見せました。また、昨季から習得に取り組むプレッシングでも流れを変えました。ただ、果たせなかったのは「ゴール」と「勝利」ー。

昨季のルヴァン杯初戦の京都サンガ戦では初スタメン初ゴールという結果を残した真家選手ですから、自身がチームにもたらす最大の戦術的効果が何なのか、示すべき結果とは何なのかをはっきりと咀嚼していて、それらをはっきりと口にしてくれました。

「リーグでもルヴァンでも、自分が出場できたのなら、ゴールを決めることを考えていますよ。それでしか現状の序列を塗り替えることはできないので。ゴールで価値を示したいです。ずっとそこはこだわり続けてきたことでもあるし、その気持ちは変わらずに持ち続けていますね」

プロデビュー戦は2022年ルヴァン杯GL京都戦

もしも、真家選手が鹿島との初戦でプレーするのならば、自身が捉える目の前の景色だけでなくチームの状況を変えるべくプレーをしてくれることでしょう。

昨季、「ゴールという結果」で価値を高めていった存在として挙げられるのはMF升掛友護選手が挙げられるでしょう。その数、「4」。

ルヴァン杯のたびに見かけた「升掛友護」という「いい名前」ー。

その名前はルヴァン杯の控えメンバーの欄からスタメン表の中へ移動して、やがてルヴァン杯のゴールランキングの上部でも見かけるようになり、スポーツ紙各紙のストレートニュースやJリーグのメンバー表、年代別日本代表の選手リストでも見かけるようになりました。

見ている人たちを魅了する升掛選手のアタック

そんなデビュー戦やデビューイヤーから1シーズンを過ぎたこの日、取材エリアに現れた升掛選手を呼び止めると目を引いたのは上半身の仕上がりの良さ。

「ずっとウェイトトレーニングに力を入れていたので、その効果もあって、上半身は良くなってきたかもしれませんね。これからはまた脚を強くしていきたいんですけどね」

そう話しながら胸と脚をパンパンと叩いた升掛選手にも今季の自身の現状について聞きました。すると、両手両腕を背中で組み直した升掛選手はハキハキと応えてくれました。

「今季はポジション内のライバルも増えていて、死にものぐるいでやらなければ、試合のメンバーに食い込んでいけない。毎日の練習がすごく大切になっているし、全力で取り組まないと後輩たちにも抜かれてしまう。今は同じポジションの後輩である山本桜大が試合に起用されていますけど、ずっと一緒にやってきている仲間ですし、ネガティヴな感情はないですし、桜大は昇格してきて勢いもある。昨季は自分もそうでしたからね。周りの先輩たちに支えてもらいながら良い結果を出せたので、今は自分が支える番なんだなと。ただ、自分はそこに立ち止まるつもりもないですし、ルヴァンではまたチームのためにプレーして、ゴールを決めて、再び自分の立場を変えていくきっかけにしたいです」

仕掛けのエリアを心得たドリブルは炸裂するか?

そして、「新システムと升掛友護」についても聞きました。

升掛選手にとっても3年ぶりに臨むこのシステム。3年前、人工芝グラウンドで見せていた、左からピッチを滑っていくかのようなダイナミックなスラロームで行く手を阻む守備者を置き去りにするドリブルを見るたび、「この24番の選手(升掛選手)はプロになるべき『タレント』だ」と思わされたものです。同様のシステムを採用していた年代別代表では主に右ウイングを任されていたので、左ウイングでのプレーは長らく見られていません。

やや回想が長引きましたが、つまり、「4ー3ー3の左ウイングは升掛選手のベストポジションではないか?」と問いました。升掛選手は即答してくれました。

「うん、僕もそう思います(笑)!…でも、そうなったらなったで考えることもあるもので、純粋なウイングをしばらくやっていかったこともあり、まだ自分らしく勢い良くプレーできていないなと感じています。昨季はFW。2トップの1人で監督から求められることを表現することに集中していたことが良い方向に運んでくれた。ただ、今季のシステムだと、左サイドからのドリブルのタイミングやアイデアがある分、判断的にまだ自分の欲が出てしまっている気がしているので、しっかりと戦術にアジャストしていきたいです」

柏U-18・24番時代の升掛選手。前髪を上げてました

今季の「リーグ出場組」では小屋松知哉選手が務めているこのポジション。広くサイドに張り出してからチャンスを創出するシーン、仙頭啓矢選手との巧みなコンビネーションからスペースを奪っていくプレーが印象的です。升掛選手はそんな小屋松選手のクオリティに敬意を払いながら、この「ベストポジション」について話してくれました。

「左ウイングは開幕から小屋松さんが務めていますよね。小屋松さんの特長は『ゲームメイク』の力だと自分は見ながら思っていて、そこが純粋なウイングの選手との『違い』だと思います。しかも、1対1も強くて、速さもある。高い経験値を持っていてなんでもできる。そんな凄さがある小屋松さんに比べて、自分が違いを出せるとしたら、『前への推進力』になると思うんですよね。少し泥臭くても前へグイッとねじ込んでいくスタイルが自分の特長だと思うので、今後、試合に出られたら、チャンスをこじ開けていくような働きで違いを発揮したいですね」

見た目はかわいいがプレーはエグい升掛選手

激しい競争があるポジションの中での升掛選手の浮上が楽しみになる取材となりました。

この日の練習の中でネルシーニョ監督から強い口調でプレーエリアやポジショニングについて細かく指示を受けていたのは流通経済大学から加入したMF熊澤和希選手。

ルヴァン杯でのプロデビューが迫る(?)熊澤選手

指導の詳細についてはここでは割愛いたしますが、熊澤選手は自身に求められる役割をこう話してくれました。

「攻撃と守備の両面で高いインテンシティ(強度)を求められるポジションだと感じていますし、監督からポジショニングに関する要求があるので、難しさもあります。まずは状況に応じて良い判断ができたらいいですね。中盤の攻撃的な仕事は流大時代にもやってきた。得意かと言えば…どうなのか分かりませんけど(笑)、ゴール前でチャンスに絡む仕事というのは経験をしてきました。だから、自分の中にイメージはあります。今季の中盤の並びは攻撃的で昨季までは無かったポジションだと言ってもいい、やり甲斐があるポジションですね」

熊澤選手も開幕からベンチ外が続いている選手の1人。

我々、報道陣が取材できる限りの公開練習で感じていた熊澤選手のスペックは、「しなやかな身体使い」と「レンジ豊かなパスの種類」、「背筋が綺麗に伸びたルックアップ」。私がそのプレースタイルをオランダ代表MFのフレンキー・デ・ヨング選手になぞらえて、「リュウケイ・デ・ヨング」と表現すると、熊澤選手は「…まぁ、そんなとこです」と微笑んでくれました。

熊澤選手は始動から現在の中で自身が置かれた状況をこう振り返ってくれました。

「キャンプから開幕へ向けて、主力組の戦術練習や準備が行われている中で、自分はなぜその中に入れていないのかや何が足りていないかを知った上でそれらを補う準備をしっかりと続けてきましたし、コンビネーションの部分も準備をしてきました」

その感触や言葉から察するに、プロ1年目の現在はプロの世界で戦っていく上での準備段階といった現状や現在地が想像されるのですが、この日の練習風景を見る限りでは、「来るべきプロデビュー戦に向けて、熊澤選手の抱負を!」と問いかけたくなるものがありました。

良い意味でのギャップを示しそうな予感が漂う選手

すると、熊澤選手は「今日イチ」とも言っていいボリュームの声量でこのように話してくれました。

「まずはルヴァン杯でもリーグでも試合に出ることがまず第一としてあります。そこで結果を残すことが今の自分にとってとても大切なことになるので、どのポジションで起用をされたとしても、ゴールに関わることで上へ上がりたい。自分は『普通にプレーしていては誰の目にも止まらない』と思っているし、『結果に関わる』ということを頭に置いてプレーをしていきたいです」

その声量に強い意志と覚悟、自信を感じました。そして、言葉を続けた熊澤選手はこのようにプロデビューへ向けた考えを教えてくれました。強まった声量をキープして。

「Jリーグの試合中も、スタンドからチーム全体のバランスを見ながら、自分のポジション以外のバランスも見ていました。自分は攻撃に関わるアイデアやゴールへ繋がるスルーパスを出していきたい。できる限りピッチの様々な場所に顔を出して、ボールに関わることを得意にしている攻撃的な選手。そういった特長や色というものをチームや周囲にアピールすることから始めたいですね」

いずれチームメイトたちの中から「クマって普段はそんなキャラじゃありませんよ」といった情報が集まる予感がするほど、遠慮がちに話しをしてくれた熊澤選手ですが、きっとピッチではギャップを放ってくれることでしょう。

中盤のメンバーでも目を引くサイズ感も魅了の1つ

今回取り上げさせてもらった3選手以外にも機会を得る選手が必ずいるはず。彼らの奮闘や残す結果を確認することが楽しみですし、あのカップの下にはチャンスに飢えた新しい選手や立場を変えたい選手たちの野望、勝利への渇望が集まっているのだと改めて再確認しましたし、週末の第4節・名古屋グランパス戦出場へのパスを手にする選手が現れるかもしれません。

三協フロンテア柏スタジアムでの久しぶりの勝利に期待しながら、この投稿を終えます。

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