〜不定期連載・取材後記〜「20220618:シーハシ・ケイヤ」
痛快な躍進を続けている柏レイソル。しっかり統率された良い守備から緩急自在の攻撃を展開して開幕から快進撃を見せながら上位を脅かし続けています。
そのレイソルの守備陣と攻撃陣が並ぶ隙間の狭いエリアでプレーする、守備的なミッドフィルダー(MF)/ボランチで活躍しているのは椎橋慧也選手。先の神戸戦では鮮やかなミドルシュートを決めるなど、今やチームに欠かせぬ存在となっています。
その少し前、柏レイソルのオンライン取材日の場で椎橋選手に「レイソルのボランチとして意識しているポイント」を伺いました。
ひとえに「ボランチ」といっても様々なタイプに分類されて久しく、チームによっては1人、または2人。状況によっては3人を並べる場合も。また、ボランチの仕事を見れば、そのチームが標榜するスタイルの本質が理解できると言っていいほど重要なポジション。
では、椎橋選手が柏レイソルで担っている「ボランチ」とはいったいどのようなポジションなのか?解説をしてもらいたいと考えたからです。
「状況によって要求は変わってくるのですが、タテに速い展開となる戦い方をしている中で意識しているのは、『セカンドボールを拾うこと』です。それができれば、相手陣地で戦う時間が増えていくわけで。まずは『セカンドボールの回収』が1つ。あとは『サイドチェンジ』。逆への展開も大切な仕事。自分がターンをして、単独でサイドチェンジできる場合と他の選手にボールを引き取ってもらえるポジショニングを常に意識しています」(椎橋選手)
このコメントの素晴らしさは、まさに私たちが見つめている椎橋選手の働きそのものであること。レイソルの中盤、特にボランチを務める為の必須事項が詰まっているように思いました。
相手陣内でのセカンドボールを収めて、連続した攻撃を下支え。前方の展開が窮屈になれば、また新たな展開を作るために周囲と繋がってボールを配る。レイソルの武器である細谷真大選手の守備を背後から操縦するエンジニアであり、守勢時には体を張るファイターの一面も。
ある試合では鼻を利かせ、「最大のピンチ」が生まれる寸前に素早く体を投げ打って相手選手の侵入を阻止。そのプレーに関しては少しばかりの喧騒、そして、警告と引き換えに勝点3をグッと引き寄せました。
ここで重要なのは、これらのプレーや事象が椎橋選手のプレーエリアで披露されている。適切なポジショニングで相手選手を捕らえている点。「献身的」ではあるが、3人のCB前方の位置取りと中盤との距離感、全体のバランスを崩さない。このあたりがファーストチョイスであり続ける理由ではないかと考えます。
では、リーグ戦再開初戦であり、リーグの折り返し地点でもあった神戸戦を快勝で終え、プレスカンファレンスへ登壇した椎橋選手は、「後ろ、中盤、前線でやることを整理できているし、一人ひとりが自信を持ってやれているのが結果に出ている」と振り返りました。また、「意図して相手にボールを持たせている時間もある」と語りました。
そこで気になったのは、先制こそ許したものの、自身のゴールで追いつき、マテウス・サヴィオのPKと武藤雄樹のレイソル初ゴールでリードの展開。攻撃的なタレントに勝る神戸の圧力に晒された試合終盤。「持たせている」以上のスリルと共に、自陣に押し込まれた展開。結果的には追加点を与えず耐え切ったレイソルでしたが、あの時間帯についての「気づき」について聞きました。
「最後の時間帯については、僕らも意図していたものではなかったが、ああいう時間帯というは試合の中で絶対にある。3バックを中心に声掛けながら守れたのは自信にはなっている。ただ、誰がファーストディフェンダーとして行くのか、どこ締めるのかはもっとやっていかないといけない。そこは改善点となりました」
そう話し、快勝の中で炙り出されたチームの更なる課題にさらりと言及。
また、「同期の選手でもあるので今日は勝たせてあげたかった。特に気持ちが上がったりもせずに平常心でやれていた。彼も相当な準備をしてきたと思う」とJリーグ初スタメンとなったGK松本健太選手への花向けも忘れずに独特の風格を漂わせたプレスカンファレンスを締めました。
ダイナミックなDFラインの少し前で絶妙な仕事を積み重ねる頼もしく用意周到なボランチ・椎橋選手。彼が如何に優れているか、また、鵜木郁弥哉選手や升掛友護選手ら若手たちがこぞって慕う理由も併せて分かった気がしました。
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