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明治安田生命J1リーグ 第20節 FC東京vs大分トリニータの試合より、FC東京、ボランチ、安倍柊斗選手のポジショニング、プレー選択を学ぶ
僕の地元でもある東京都日野市出身のプロサッカー選手、安倍柊斗。小学生時代は杉野百草SSに所属し、中学はFC東京U-15むさし、高校ではFC東京U-18へと着実にステップアップしていった。しかし、ユース(1)からプロになることは出来ず、明治大学に進学した後、2019年、FC東京に入団することになる。
明治安田生命J1リーグ、FC東京の直近の5試合(7月23日時点、18節~22節)より、安倍柊斗のスタッツ(2)を整理してみる。(参考:JーSTATS)5試合中4試合にフル(90分間)出場。唯一、70分間のプレーとなった大分トリニータ戦は数値を約1.28倍して、5試合平均を出した。
走行距離平均は11.64km(90分間)。スプリント平均は19.8回(90分間)。走行距離はFC東京内で5試合中、3試合が1位、スプリント回数も上位なことから、チーム内で小気味よく走ることが一つの要素として求められていると考えられる。実際、僕が見た大分トリニータとの試合も小気味よく走ることでチームに貢献している印象だった。その一部を今日は紹介しようと思う。
前半34分のプレー。相手のバックパスに対して、2度追い(3)をする、積極性が勉強になった。このプレーにより、FWなども連動し、守備のスイッチが入る現象(4)が生まれた。また、最終ラインの底上げもでき、ライン間(5)が高い位置でコンパクトになった。なお、相手からしたら、安倍は自分の持ち場を離れて、プレス(6)に来ているため、予想外のプレーだったと予想される。
前半43分のプレー。攻撃から守備に切り替わった時の速さと体の入れ方が勉強になった。右サイドハーフから左サイドハーフへダイナミックなサイドチェンジが展開されると、トラップ際を相手に取られてしまう。しかし、それも想定して次のポジションを取っていた安倍は、すかさず、プレスをかけ、ボールを取り返して見せた。僕はこのプレーを見て、疑問に思ったことがある。なぜ、安倍は矢印とは逆の方向に切り替えされている(7)のに体を入れることが出来たのか。と。おそらく、攻守が切り替わった瞬間はトップスピードでプレスしたが、相手との距離が近くなるとスピードを緩め、どちらにも行ける状態をつくったからだと考えた。
後半49分のプレー。スペースを使う動き(ダイアゴナルラン)が勉強になった。相手右サイドハーフが左サイドバックに大きな矢印でプレスをし、はめようとしている(8)状態。はめるためには後ろも連動しないといけないので、必然的に相手右サイドバックは、左サイドハーフにくいつく。そこでできたスペースを安倍は、ダイアゴナルランで活用する。これにより、高い位置で起点ができ、チャンスをつくりやすくなるし、はめられないので、カウンター(9)も防ぐことが出来た。
後半53分のプレー。相手のギャップ(10)にポジショニング(11)し、相手をくいつかせることでスペースをつくり、その後、また違ったスペースに走るという一連のプレーが勉強になった。左サイドバックにボールが入った時、角度のあるポジション(12)、また、最終ラインと中盤のライン間にポジショニングすることで、相手右サイドバックをくいつかせ、スペースをつくり、左サイドハーフがボールを受ける。そして、安倍はインナーラップ(13)することにより、ポケット(14)を取ることにチャレンジした。FC東京はワントップなので、このような現象(ボランチがインナーラップでポケットを取る)が起きる。僕ら尚志の場合は2トップが大半なので、SH、FWがこの役割を担うことが多い。
今回のレポートを通して、安倍選手の凄さを実感すると同時に、「自分はどのような選手になっていけばいいんだろう」と考えた。考えた結論、好き嫌いせず、どんなプレーも出来るような、オールマイティーな選手になりたい。高いレベルで。しかし、時間は有限。高校生活だってもう折り返し地点を過ぎている。優先順位をつけて、努力したい。(部分練習では、シームレス、状況把握、ゲームではポジショニング、ドリブル、ボール奪取の回数にこだわる。自主練では、ミドルシュート、フリーキック、1対1、ヘディングなどに取り組み、出来ることを増やす。)
備考
(1)高校生年代。ここではFC東京U-18を指す。
(2)チームや個人のプレーの成績を数値としてまとめたもの。
(3)違う相手に2回連続で寄せること。
(4)自分たちが守備の局面において、ボールホルダーに寄せる選手に続いて、周りの選手も相手をマークしていくこと。また、チーム全体でボールを取りに行くこと。
(5)ディフェンスライン、中盤のライン、フォワードのライン。
(6)ボールホルダーに寄せること。
(7)矢印とはプレスの方向のこと。図2において、右から左への矢印に対して相手が逆を取ってきが、切り替えして、体を入れることに成功している。普通、矢印と逆を取られたら対応できない。
(8) (4)と類似。ボールホルダーが出しどころがなく困ってしまう状態。
(9)反撃。ボールを奪ってから、素早く攻めること。
(10)相手と相手の間。
(11)ポジションを取ること。
(12)ピッチを縦に分けたとき、ボールホルダーとは違ったレーンのポジション。
(13)ボールホルダーの内側のレーンを走り、ボールホルダーを追い越すこと。
(14)図4上に記載。このスペースを取ると守備がしずらくなり(相手が)得点の確率が上がると言われている。