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グアテマラのコーヒー農園、コーヒー博物館訪問
グアテマラやパナマ、ホンジュラスなどの中米は、環太平洋火山の上にある国です(日本もです)。
これらの国では火山性の水はけのよい土地と、適度な標高のもとで、良質なコーヒーの栽培がおこなわれています。
今回はその中でもグアテマラの農園について見ていきたいと思います(約5000文字)。
「グアテマラ」という名前はマヤ・トルテカ語で「木々の土地」を意味しています。
名前の通り緑豊かなグアテマラには、コーヒー産地がいくつもあります。その中でも、アンティグア訪問を記事にします。
「アンティグアの街」
アンティグアは、町自体が世界遺産に認定されています。
グアテマラ自体はあまり治安の良い国ではありませんが、アンティグアは治安もよく、交通の便も良い街です。
現地ではスペイン語が話されているため、言葉の壁はありますが、スペイン語の語学留学のために長期滞在する日本人もいるようで、中南米の街の中では、情報を集めやすい街です。
何よりコーヒーの知名度が高いため、生産者も観光客を招くために、博物館などの施設を用意していたり、農園の訪問ツアーを行っていたりします。
中米のコーヒーの産地で現地の方にお話を聞いてみたいと思ったときに、候補に入れやすい地域だと思います。
「スターバックスの提供しているコーヒー」
スターバックスでは、グアテマラアンティグアを通常のお豆として提供しています。また期間限定の商品としてカシシエロや、アティトランをリリースしています。
グアテマラアンティグアの特長は「COCOA&SUBTLE SPICE」、コクと酸味のバランスがよく、チョコやナッツとの相性が良いコーヒーですよね。
そしてカシシエロの特長は「BRIGHT WITH A SMOOTH COCOA FINISH」、なめらかな口当たりとほのかに感じるシトラスの風味が、デザートを際立たせるコーヒー。
そしてアティトランは「ORANGE BLOSSOM DEEPEND WITH NOTES OF SWEET CARAMEL」、オレンジブロッサムのような明るく上品な香りと、さわやかな酸味が特徴のコーヒーです。
「コーヒー業界の中でのグアテマラ」
写真は、アンティグアの街から歩いて訪問できるAZOTEA農園に併設されている博物館の展示です。
コーヒーの産地についての説明を、してくれています。
グアテマラには1750年、イエズス会宣教師によってコーヒーが伝えられました。
グアテマラは年間に350万バッグ(21万t)のコーヒーを生産しています。国内での栽培の中心はブルボン種で、AZOTEA農園にはイエローブルボンも植わっていました。
コーヒーの生産地として世界的な知名度があるのはアンティグアですが、それ以外にも山岳地域にいくつも産地を有しています。上の写真は代表的な産地を上げたものです。
左上から順にフエフエテナンゴ(Huehuetenango)地区、サン・マルコス(San Marcos)地区、アティトラン(Atitlan)地区、フライハーネス(Fraijanes)地区、ニュー・オリエンテ(New Oriente)地区、コバン(Coban)地区等の有名な産地があります。
スターバックスだと、前述したようにアティトランの名前は、最近見かけました。
ちなみに日本で手に入りやすいグアテマラのコーヒーは、アンティグア地域の農園指定のものが多く、比較的丁寧にピッキングを経ているものが多い印象です。
基本的には水洗式で精選されますが、一部の農家では乾燥式にトライしているところも見かけます。オリエンテ地区のナチュラルは日本でも手に入ると思います。
グアテマラ全体の風味特長というものは強くなく、国内の産地によってココアやトフィーのような甘い香りや、かんきつ~花のような香りまで様々な特徴を有する産地です。
今回記事にしているアゾテア農園のコーヒーをカッピングした際にはグリーンアップルのような香りがあり、酸の質が良好なフレッシュなコーヒーでした。
SCAA方式でいうと83点前後でした。
グアテマラの一般的なコーヒーの品質等級は海抜によって区分されており、SHB:1350ⅿ以上(STRICT HARD BEAN)、HB:1200~1350ⅿ(HARD BEAN)のように等級が分けられています。
標高が高いほど豆の品質は高いため、SHBが等級の高い豆ということになります。
「アンティグアのコーヒー」
コーヒー生産は、土地や人件費が安い地域で行われることが多いです。
そうなると基本的には、アクセスの悪いところにあるのが常です。しかし、アンティグアに関しては、街が世界遺産に登録されたこともあり、観光地として交通の便が整備されています。
ちなみにアンティグアは、海抜1300m~1600m、前述の等級区分でいえばほとんどがSHBにあたります。
海抜にも気象条件にも恵まれています。ここで生産されたコーヒーは一般的にチョコレートやナッツ、スパイスのような香りが特徴といわれています。
アンティグアの町から訪問可能な一般人の訪問を受け入れてもらえる農園は二つあり、AZOTEA農園、そしてFILADELFIA農園になります。
どちらも標高は1500m程に位置しており、観光農園としての機能も持った農園でした。
「AZOTEA農園」
こちらの農園は、アンティグアの中心地から数キロのところにあり、中にはコーヒーに関する博物館も併設されています。
博物館の奥にはパティオがあり、現在収穫真っただ中のコーヒーを乾燥させていました。
博物館ではコーヒーの産業に関する展示や栽培、加工に関する資料をまとめており、ぐるっと回るだけでもグアテマラのコーヒー産業の全体像が見える施設になっています。
また施設内はコーヒーに関する展示だけでなく、グアテマラの伝統的な祭り、衣装、音楽に関する展示があり文化に触れることもできます。
「コーヒー博物館」
博物館の中には一本の木からとれるチェリーの量、生豆の量、そしてそこから作られるコーヒーの量が展示してあります。
参考まで、こちらの農園では1本の木から2.9㎏のチェリー⇒0.67㎏のパーチメントコーヒー⇒0.56㎏のグリーンコーヒー⇒0.45㎏の焙煎豆⇒20杯のコーヒー
になるということが記載されていました。私は一日に4杯程度のコーヒーを嗜むので1週間でコーヒーの木2本分の豆を消費。
一年間では100本分のコーヒーを消費しているということに。
ちなみにこの量は農園の広さでいうと、30m×30mくらいのコーヒー農園に相当します。大体、田んぼで言うと一反分ですね(逆に分かりにくいですかね。。)
ちなみに農園によっても栽培間隔は異なりますが、整備されている農園で1ha(100m四方)当たり1000本くらい植わっています。
身近な数字に直して考えると産地の皆さんの協力があってこそ美味しいコーヒーが飲めるんだと再確認します。
皆さんはコーヒーの木、何本分を消費してますか?
「AZOTEA農園と加工施設」
AZOTEA農園は精選の設備やパティオは見学できるのですが、コーヒーの木が植わっている農園の中に分け入って見学をするようなスタイルではありませんでした。
こちらの農園にはブルボンやティピカ等、様々な品種を植えているとの事です。
またそれらの品種は単一で販売するわけではなくロットごとに品質確認をして、ブレンドにより均質化した後に、販売しているのだそうです。
品質確認の際は実際に、豆をサンプルロースターで焙煎し、カッピングで評価したうえで割合を決定することもあるそうです。
「加工施設(水洗式)」
AZOTEA農園では基本的に水洗式で精選しています。水洗式の精選に関しては以下の記事で特長をまとめています。
https://note.com/tik190/n/na447141d12bf
訪問時は収穫期だったため、発酵槽が稼働しているところも見ることができました。
「アゾテア農園での水洗式精選」
改めてアゾテア農園の施設を見ていきたいと思います。
アゾテア農園では自社のコーヒーだけでなく近隣の農家からもチェリーを購入し、異物を除去したのちに迅速にパルパーという装置に掛けます。
パルパーはコーヒーの表皮を取り除きミシュレージが表出した状態にします。
パルパーで表皮を除かれたコーヒーチェリーはこの後発酵槽へと移動されます。
発酵槽に入ってすぐのチェリーはミシュレージがついた状態の為、ぬめぬめとした状態です。
発酵の工程ではペクチン質分解酵素が活躍し、パーチメント上からミシュレージ除いていきます。
この処理に必要な時間は外気温などによってもかわり、こちらの農園では大体16~20時間程度発酵させた後次の工程に移していきます。
発酵が終わっているかどうかは棒を指したときにできる跡が消えずに残るかどうかで判断、後が残るのであれば粘液層が分解されている証拠です。
発酵を終えた豆は、水を利用して輸送用の籠に移され、パティオに広げられます。こちらの農園では3~5日程度乾かした後に、パーチメントコーヒーの状態で麻袋に保管してエージングし、出荷を待ちます。
「カッピング」
AZOTEA農園ではグリーンビーンを分けていただくことができました。
ピーベリーの割合が4割程度、割れ豆が2割程度の割合で混入していたのでまだ選別の前だったのではないかと思われます。
カップを取ってみると、ドライトマト、ラズベリー、リコリス等フルーツのような香りを中心に、華やかで果実味を想起させる香りでした。
香りの強度がかなり強く、SCAA方式で採点して83点程度。
不揃いな豆だったのでさして期待していなかったのですが、お湯を入れた後もとても甘やかなアップルなどのフルーツの香りや紅茶のがして、コーヒーにとって鮮度がいかに大切かを思い知らされました。
香りの段階ではフルーツの香りが強かったので酸味の強度が強すぎるのでは?と予想していましたが、非常にきれいな酸が感じられボディー感は控えめでした。
AZOTEA農園の豆は日本でも手に入りそうなのでできれば今後の焙煎のラインナップに入れたいところです。
「まとめ」
今回はAZOTEA農園の訪問について触れる中で、
1.グアテマラのコーヒー業界概略
2.グアテマラでのコーヒー栽培概略
3.水洗式での精選方法と環境を守るための配慮
に関して文章にしました。一口にグアテマラといっても、様々な栽培地域があることがわかると、楽しみの幅も一層広がるのではないかと思います。
またAZOTEA農園では、水洗式での加工が中心ということでしたが、同じグアテマラの中でも乾燥式で加工している農園もあります。加工方法によってどのような風味の違いが出るのかを確認してみるのも面白いかもしれません。
訪問時に丁寧に対応してくれたAZOTEA農園、日本にもお豆を出荷しています。
現地に思い馳せながらコーヒーとともに豊かな時間をお過ごしください。