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netflixドラマ「ウェンズデー」が好きな人には「死のエデュケーション」シリーズを読んで欲しいって言ってんの!!!!

こんにちは!
最近になって読書スピードで他人にマウントを取る読書マウント界隈の存在を知って戦慄している男こと遅筆マンです!!

いや、読書スピードで他人にマウントとるってなに?
フードファイターの読書版?

個人的には「えぇ〜……なんかそういうの、えぇ〜……いえ楽しみ方は個人の自由なんでいいケド……」みたいなテンションの俺ですが、そんな俺をして「おいおいおい結末気になり過ぎて一気読みするしかねえ〜〜〜〜!!」とフードファイターよろしく速読を強いられてしまった本がございます。頼む、紹介させてくれ

というわけで、本日紹介したいのは「死のエデュケーション」シリーズ三部作でございます〜
個人的には、ネトフリドラマ『ウェンズデー』が好きな人におすすめしたい一作(理由は後述)

死のエデュケーション・闇の魔法学校 著/ ナオミ・ノヴィク 訳/井上里

闇の魔法学校 表紙

舞台は、虚空の闇に浮かぶ魔法使い養成学校。生徒たちは、生き延びるために日々魔物たちと戦い、互いに争いあう。学園サバイバル・ファンタジー。

舞台は、虚空の闇に浮かぶ巨大な魔法使い養成学校、スコロマンス魔法学院。入学した生徒は4年後に卒業の門をくぐる日まで、現実世界に戻ることはできない。ここには、教師がいない。その代わり、魔物たちが跋扈し、ときおり襲いかかってくる。カフェテリアに集う生徒たちのあいだに、友情はない。あるのは、サバイバルのみ。生徒たちは、生き延びるために日々魔物たちと戦い、生徒同士も争いあう。主人公の少女ガラドリエルは、みずからに秘められた黒い魔法を恐れながらも、生き延びるために知恵をめぐらし、仲間との交流を通して、活路を見出していく。学園サバイバル・ファンタジー、シリーズ第1部。

公式あらすじより

このシリーズをもっともキャッチーな一言で説明するなら、『残虐版ハリー・ポッター』といったところでしょうか。
個人的には、この物語の面白さはこんな短絡的な一文では収まらないほど多面的で複雑ですが、たとえば『これってどんな本?』と聞いてきた友達にパッと説明するときに便利な表現としてはこんな感じになるかと。

舞台は魔法学園・スコロマンス。
これは、ハリー・ポッターでいうところのホグワーツ的な存在ですが、そこで行われる営みはあまりにも血生臭い

この学園では日常的に危険な魔物が出現し、たびたび生徒達は命を落とす。
ホグワーツのように、彼らを教え導き、守ってくれる教師をはじめとした大人の存在はない……どころではなく、この学園は魔物によって命を落とした生徒さえも栄養として喰らい、エネルギー源としている恐ろしい<生きた学校>なのです。

スコロマンスには、児童には優しく教育しましょう、的なここ最近のコンプラバリバリ教育など一ミリもありません。

そこにあるのは、平成時代の悪しきゼロトレランス方式さえも生ぬるい、サバイバル学園生活(卒業までに生徒の何割かが死ぬ)なのです。マジでPTAはなにしとる?

さておき、このあまりにも過酷な魔法学校、という設定が抜群に面白い!!

そもそも、どうしてそんな危険な学校に通ってまで魔法使いにならねばならないのか? そもそも、どうしてそんな危険な学校が存在するのか?
世界観をはじめとした複雑な設定が初読の際に飲み込みづらいという評価を本作はくだされがちですが、それは本書で描かれる世界がいかに新しく斬新か、ということの裏返しでもあるでしょう。

マジでこんな学校見たことないしマジで通いたくない。第一志望の学校に落ちて滑り止めでここにしか通えない、ってなったら俺は親に頭下げて一年浪人させてもらう。

死のエデュケーションシリーズは、至高のファンタジーにして至高のラブロマンス

この小説で一番好きなところは、キャラクター造形の面白さです。
面白い小説は物語が面白いか、キャラが面白いかの二択であることが多いですが、これは面白い物語に、面白いキャラクターが乗ってる好例。ツインターボシステム。そんなの面白いに決まってる。

主人公は、この学園で生活する少女・ガラドリエル。
設定上、物語の鍵を握る人物であるが故にあまり詳しく言及できないので、まずはこの小説の書き出しだけ抜粋します。

オリオンが二度目にわたしを助けたとき、こいつには死んでもらわなきゃ、と思った。こんなやつのこと、これまではなんとも思ってなかったけど、わたしにも限界がある。

闇の魔法学校冒頭より

物語開始して速攻で殺意。
一行目から人に死んで欲しいって話から始まる物語isなに?
しかも、この文面から察せられるように、あなた二度もそのオリオンとやらに助けられてんだよね? 

冒頭から読者に好かれよう、みたいなあざとさゼロ。もうちょい媚びることできない? かの脚本家・ブレイク・スナイダーも「主人公を好きになってもらうために、まずは主人公が猫を助けるシーンを冒頭に入れろ」みたいな話してたじゃん。猫助けるどころか人に死んで欲しがってますよ彼女。

さておき、冒頭から強烈なパンチを飛ばしてくる皮肉屋でひねくれ者な主人公・ガラドリエル。
彼女のキャラクターはあまりにも強烈で、「こいつ嫌い!」ってなる読者も多そ〜……と思う一方で、「こいつおもしれ〜!」って大好きになる読者もたくさんおられることでしょう。

あまり多くは語れませんが、この物語はそんな彼女のラブストーリーであり、成長譚でもあります。
彼女の辛く厳しい旅路の結末には、涙が禁じえませんでした。

あとこの主人公、ネトフリドラマの「ウェンズデー」が好きな人にブッ刺さりそうだなと思うので、そちらがお好きな人はぜひ。

ちなみに、俺はドラマ『ウェンズデー』が大好きです。シーズン2も楽しみ

死のエデュケーションシリーズは、翻訳に恵まれた幸福なシリーズ

これは極個人的な意見ですが、海外小説を買うのは常に分の悪い賭けだと感じています。

そもそも、その本が面白いかどうかわからないまま小説を買う読書家はすなわちギャンブラー。
高いときは数千円出して、更には数時間もの時間をかけて一冊の本を読む……面白いかもわからんのに。まさしく賭博師の生業です。

そして、海外小説を読む時はここに「翻訳は良いのか?」という更なる不確定要素さえ加わります。
学生の時分はあまり気になりませんでしたが、翻訳の良し悪しでその本の読み口は大きく変わるもの。
そして、よほどの古典名作でもない限り一つの作品に翻訳はひとつです。
せっかく面白い原作でも、翻訳が微妙なせいでつまらなく感じる本、というのは実は暗数として相当数存在する、と個人的には思います。

そういう意味で、本作は最上級の翻訳家に出会えた幸福なシリーズといえるでしょう。
主人公であるガラドリエルの一人称で常に進行する本作ですが、彼女の語りが声になって聞こえてくるようなリズム感のある文章は、訳者の肥沃な文章力に裏打ちされたものだと強く感じました。
テキストマニアを自称する自分としては、上質な文章を摂取できて幸せの極みでございます。この手の一人称饒舌体マネしたくなる。好き。

まとめ

ここ最近、ファンタジー小説にハマって読み漁ったシリーズのなかで、ぶっちぎりで上質な物語だったように思います。
どころか自分の人生で読んだなかでも、トップ10には余裕で入るくらいには大好きなシリーズになりました。

著者のナオミ・ノヴィクさん、並びに役者の井上里さんには最大の感謝を。
大人になってもこんなに童心に帰って楽しめる本に出会えるって最高です。

というわけで、今回はここらへんで!ではでは!

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