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ショコラティンと呼ぶ? それともパン・オ・ショコラ? 譲れない選択!

世界化(モンディアリザシオン)が進行している世の中においても消すことのできないフランス北部と南部のさまざまな激しい対立は、美味しいヴィエノワズリーの呼び名にも見られます。クロワッサン生地でチョコを包んだ焼き菓子を北部では「パン・オ・ショコラ」と呼び、南西部では「ショコラティン」と呼ぶ。

これはまさに今、フランスでよく見聞きする話題で、テレビCMの会話にも出てくるわ、フランス版TOP CHEFでもお馴染みの2つ星シェフが「これはショコラティンだ」と動画を配信するくらいの盛り上がりよう。

フランス人の大多数がパン・オ・ショコラ派でショコラティンは少数派

もしあなたがボルドーで「パン・オ・ショコラ」と注文したら、お店の人は仕方なしに嫌な顔もせず注文を聞くでしょう。これがパリだったら、あなたが「ショコラティン」と注文したら、店員に田舎者だと陰で嘲笑されるリスクがあります。または意味がわからぬと何もサービスしてもらえないかもしれません。

この面倒な問題はどこから始まったのでしょうか? それはおそらく東ヨーロッパからです。歴史家たちは19世紀初めにオーストリアのオーギュスト・ザングがヴィエノワズリーをパリに伝えたと言います。彼が作る美味しいヴィエノワズリーの中でもクロワッサン生地の中にチョコを詰めた「schokoladencroissant」は格別で、この名を簡略化し「ショコラティン(chocolatine)」と呼ばれるようになりました。

つまりこれはパンでは決してありませんが、いつの間にか「ショコラティン」と言う言葉は押しのけられ、子どもが学校から戻る午後4時に食べたパンにチョコバーを挟んだものの呼び名に取って代わられてしまいました。

「ショコラティン」の方が言いやすく、言葉の由来としても正しいにも拘らず、一体全体どうしてフランスの多くの地区で「パン・オ・ショコラ」と呼ばれるようになってしまったのでしょうか。

私の考えではパン屋がこれを作って売ったので「パン」と命名しただけだと思います。けれどもこの呼び名を巡っての対立がこれだけ大きくなったのは、この問題の奥底にあるフランス南西部に住む人々の北部への、とりわけパリジャンへのコンプレックスがあるからではないでしょうか。歴史を見ても北部は南部に、パリはジロンド県に勝利を収めました。パリジャンは自分たちの価値観が唯一正しいものだと言わんばかりに「Avé l’asseng」(南部人には訛りがある)と言う。

そう、これにノン!と言う南西部の気概が「ショコラティン」なのです。