ギ、ギャルゲーなんて、す、好きじゃないんだから
色々なゲームがある中でも、大学生になってから手を出し始めたジャンルがある。それは他でもない、ギャルゲーである。
ギャルゲーとは言うまでもなく、自分の分身かそうではない主人公が女性キャラと恋愛をするのを楽しむことに主眼を置いたゲームで、「こんなものに手を出したのか」と嘲笑した読者もいるかもしれないが、その方が自然である。人に「ドラクエが好きだ」とか「ロックマンが好きだ」とは言えるが、「ギャルゲーが好きだ」とはなかなか言いづらいのが正直なところだ(ツイッターではギャルゲーを含めたゲーム好きの方が多くいるので、僕も普通にギャルゲーの話をしてしまっているのだが)。だって、普通に考えて現実にいない二次元のキャラとの恋愛を楽しむとか、変だし馬鹿みたいだろう。「橋本環奈が好きだ」と言ってもそんなに馬鹿にしてくる人はいないが、例えば「胡蝶しのぶが好きだ」と言うと「は?」と思われることの方が多いと思う。
そしてここまでで、僕はギャルゲーが「好き」であるという前提で書いているような印象を与えてしまっていると思うが、そもそも僕はギャルゲーが「好き」と言えるほどなのかも怪しい。なぜなら、確かに僕はギャルゲーを持っているが、特定のシチュエーションでしかやらない上、基本的にはギャルゲーはむしろそこまで楽しめるものではないと思っているからだ。先程言ったように生身の人間じゃない二次元キャラとの恋愛って正直訳が分からないし、おままごとをしている気分で、楽しいジャンルだとは思わない。
ところが、ここで弁明すべき事実について話さなければならない。それは、先ほどあれだけギャルゲーを楽しくないと言ったにもかかわらず、今に至るまで8~9枚ほどギャルゲーを購入しているという事実である。総務省統計局による調査によれば、僕が初めてギャルゲーを買ったのは今から3年前であるが、今からたった数か月前にも新たにギャルゲーを購入しているという記録がある。
これはなぜか、今から説明させて欲しい。
まず、僕はギャルゲーを「特定のシチュエーションでしか」やらず、「基本的には」楽しくないと言った。これについてはぐらかさずはっきり言うと、僕はギャルゲーを「特定のシチュエーションにおいて大いに楽しんでいる」。その「特定のシチュエーション」とは他でもない。酔っぱらっている時である。
酒を飲むと、細かいことをいちいち気にしなくなる。常識的に考えることがしづらくなり、馬鹿になる。そうすると、ギャルゲーの変なところや馬鹿げたところ、訳の分からないところに対して「変だ」「訳が分からない」「馬鹿げている」という冷めた目で見なくなる。15を過ぎた妹が「お兄ちゃん、大好き♡」と言おうが、苦笑してしまうぐらい美人な幼馴染が主人公の家に朝起こしに来るようなことがあろうが、「馬鹿じゃねえの」と思わなくなる。
そうなるともう、キャラクターが可愛すぎるということだけが残ることになる。ただただ、めちゃくちゃ楽しいだけである。「『大好き♡』だってよ!!可愛い~~!!」「起こしに来てくれんのかよ!!可愛い~~!!」となるだけである。
僕はシスタープリンセスというゲームをシラフでやったことがない。その理由はさっき言ったことと同じだ。まずシスプリの設定は、普通に考えれば笑止千万である。12人の妹がいるというだけでも滑稽なのに、みんな兄に対して恋愛感情(もしくはそれに近いもの)を抱いているのである。滑稽だと思えないはずがない。
シスプリの12人の妹の一人に、春歌という子がいる。シスプリをやる時は可憐、白雪、四葉、鈴凛、春歌、亞里亞のうちのどれかと相場が決まっているが、春歌をやることが多い。春歌は「兄君さまをお守りするために」弓道や薙刀、合気道、茶道、舞を習うという、12人の妹の中でもずば抜けて滑稽な部類に入る。しかし、酒を飲むと、これをあまり滑稽と思わなくなる。もっと正確に言うと、滑稽なのは確かなのだが、その滑稽なところがただ可愛いという風にしか捉えられなくなる。「合気道なんかやって、一体何から守ろうとしてんだ?」ではなく、「頑張ってるんだ!!可愛い~~!!」と思う他なくなる。
そういう風に考えると、ギャルゲーは設定が馬鹿げていれば馬鹿げているほど楽しいという法則を導き出すことができる。飲めば、その馬鹿さ加減が可愛さへと変換されるからである。
だから僕はブックオフでギャルゲーを見る時、できるだけ滑稽な設定のものを探す。感動の物語だとか切ない物語とか、そういうギャルゲーはあまり買わない。「男なのに手違いで女子校に入学しちゃった」とか、「妹が12人できちゃった」とか、訳の分からない滑稽なものを見る。
常識的な感覚でやれば全然面白くないギャルゲーだが、余計なことを考えずに馬鹿になってやれば、比類なき楽しいゲームなのだ。ウイスキーとコーラを1:2で混ぜたものが入ったグラスを手にしながらやったときにぶっ飛べるものはどのギャルゲーなのか、これからも探し続けるのであった。